女性議員のパートナーに聞く―佐々木きえ河南町議 (2020/12/25 WOMAN-SHIFT)
今回は、大阪府河南町議会議員の佐々木きえさんのパートナーにお話をうかがいました。佐々木きえさんは、2012(平成24)年に32歳という若さで立候補して初当選、現在も女性議員として活躍されています(文中では佐々木議員のパートナーを「佐々木さん」、佐々木議員ご本人を「きえさん」としています)。
Q.きえさんが議員に立候補すると聞いたとき、どのように思われましたか。
A.まず、立候補したいと聞いた時は「なぜ」と思いました。議員という存在は少なくとも普段の自分の生活に近い存在ではないので。でも、決めたからにはやり切る人なので、それなりに考えたんだろうと納得しました。立候補の理由を細かく聞いたところで、納得できるかもしれないしできないかもしれないし、ただ否定することだけはしたくなかったので、やると決めたからにはやればいいんじゃないのと言った記憶はあります。
Q.きえさんを応援しようと思っていらっしゃったのですね。
A.結婚も子どもができるのも早かったので、彼女は自分のしたい仕事ができなかった状態が長く続いていたのです。ちょうど子どもたちの手が少し離れ出した時でもあり、「挑戦してみたい」と彼女が言ったので、そこは当然ながら応援しようと思いました。否定や反論はしなかったと思います。
ただ、唯一気になったのは、当時小学生だった子どもたちのことです。友だちを家に連れてきていたりしたので、それなりに妻の顔を知っているわけです。選挙活動をして街宣すれば、当然「XXのお母さんだ!」というふうになってしまうので、子どもたちがナーバスにならないか、というところだけは気にしていましたね。
Q.親族からの反応は?
A.妻側の親族は、「向いてるんじゃないの?やれば?」という反応が多かったです。私の両親は、「本人がやりたいと言っているならいいんじゃないの?」と言ったように記憶しています。父方の先祖に議員がいたらしいので、特に違和感がなかったのかもしれません。
唯一子どもたちがちょっと嫌がってましたかね、初めは(笑)。母親の顔がポスターとしていろんな場所に貼られるわけですから、小学生には恥ずかしかったみたいです。最初は嫌がっていましたけど、慣れれば逆に喜んでいたのかなと思います。
Q.お父様が、妻が外に出ることを余り良しとしない方だというお話がありましたが、お嫁さんであるきえさんに対して、議員に立候補することを反対しなかったのですか?
A.特に反対されなかったです。結婚後10年間、彼女を見てきてるので、やると言うからにはやる人だと父も分かっているのでしょう。
Q.現在、佐々木さんご自身はどのようなお仕事をされていらっしゃるのですか?
A.ソフトウエアのエンジニアです。
Q.きえさんが議員になる前からされているのですか?
A.はい、社会人になった時からです。
Q.結婚する当初、一緒に暮らすうえで、共働きを考えていましたか。それとも養う側に回ることを考えていましたか。
A.どちらでもいいと思っていました(笑)。自分の中で、こういう仕事をしてこれぐらいの収入を得たい、というのはずっとあったので、それに彼女が乗っかるんだったら乗っかればいいし、彼女がしたいことがあればしたいことをすればいいと思ってました。
急に私が病気になって倒れたりしたら収入が止まってしまうので、そうはならないようにお互いに自立した形で、というのが結婚後の目標です。でも時折、仕事を嫌になって辞めて、何か別のことを探す間にフリーになるのは良いと思っています。あまり干渉しないです、お互い(笑)。
Q.きえさんは21歳で出産されていますよね。そのとき、きえさんは働かれていたのですか。
A.働こうとしていましたが、出産でいったん諦めました。
Q.きえさんが議員になったときに、ご自身のお仕事に影響などはありましたか?
A.妻が議員になったことで、私の仕事への影響はほぼないと思います。妻が議員になる前から今の仕事はしてましたし、家事も分担してやっていたので余り変わらないです。あえて言うなら、議員という仕事柄、リスケ不可の用事が多いので、「この日に絶対行かなきゃいけないから、仕事の都合をつけてくれ」というのは増えましたかね。私の会社はその辺りが柔軟なので、その都度調整しています。
Q.どんな時に「都合をつけて」と言われますか?
A.まず思い浮かぶのは、議会と子どもたちの授業参観や面談がバッティングした時でしょうか。後はたまに夜ですかね。
Q.きえさんは会合などには出席されていますか?
A.市民派議員の会合など、積極的に参加している印象です。時節柄、夜の懇親会などはほぼないですが、あっても早めに切り上げて帰ってきているようです。
Q.家事を分担して行っているとおっしゃっていましたが、きえさんが議員になって、家事の分担や子どもと関わる時間はどのようにしていますか。また、その分担の割合などは決めていますか。
A.特に決めていません。私は相応の通勤時間がかかりますが、妻は車ですぐなので、家事の分担や子どもたちとの時間は彼女の方が多いと思います。そこは私が甘えてしまっている部分ですね。
Q.いま家事の分担はどういった割合になっていますか。
A.コロナの影響で4~6月末は完全に、7月以降も週の半分はテレワークを行っています。テレワークの日は通勤時間がかからないので、ほぼ私がやります。朝昼晩、炊事も洗濯も掃除も全部やります。学生時代、一人暮らしだったこともあり不得手ではないので。私が出社する時は、朝食は私で、後は全部妻ですね。
Q.コロナになって、きえさんも悪いことばかりではないような。
A.家事という観点ではそうですかね。通勤時間を家事に充てられるので。コロナ前から基本週末は私がやることにしているので、テレワークになってからは半々よりも私の方が多いのかな、6:4くらいかも(笑)。
Q.夫婦円満の秘訣はありますか。例えば、けんかしたときどのように仲直りしていますか。
A.けんかは結構しましたかね。行き着く先は、仲たがいか、どちらかが折れて元通りの関係に戻すかしかないわけですから、そこからは自問自答です。関係を修復したいのか、ここで終わらせるのか。結局は数日頭を冷やすと修復したいと思い、こちらから謝る形で仲直りしてきたように思います。彼女からは「こっちが折れてきた」と言われそうですが。。。
Q.議員の夫になって良かったことはありますか。
A.議員の夫になってという観点では特にないように思いますが、妻が議員になってという観点なら、俗っぽくなりますが世帯収入が増えたことでしょうか。私の会社は男女差別なく適正な処遇が保障されていますが、なかなか一般的には女性が男性と同等の収入を得るということは難しいと思っています。議員の仕事は男女差別なく評価され、彼女の適性としても合っていると感じています。
後はもちろん、彼女自身が充実しているように見えることですかね。議員になった後の方が活き活きしているように思います。
Q.活動といえば、きえさんはもうすぐ選挙ですよね。
A.そうですね、飛び回っています。毎回そうですが、精神的負荷が相当あるように思われます。それが家族にも伝染し、みんな普段よりもピリピリしているように感じます。選挙に向けて、選挙カーの手配などいろいろと準備が必要となるので、その辺りの調整は私が行っています。選挙期間中は運転もカラスもやります。
Q.きえさんが議員になったことで、気を付けるようになったことはありますか。
A.少しずつですが、近隣との接点を持つように心がけています。これまであまり参加してこなかった自治会や町内会などに積極的に行き、自分にできることを極力するように心がけています。
Q.周りの目とか気になったりしませんでしたか。
A.もちろん気になります。例えば、外出時の服装であったり、イライラしたような運転は極力しないであったり、細かいところが気になります。他にも、人と会えばこちらから挨拶するなど、そういうところは妻が議員になる以前と変わったところですかね。
Q.お子さんも気にしていたりしますか。
A.子どもたちは気にしてないんじゃないですかね(笑)。もしかしたら私と同じような考えかもしれませんが。
Q.議員の夫になって何か不満や悩みなどマイナスな面はありますか。
A.意外とないですかね。マイナスな感情は一切ないです。議員の配偶者として見られるという意識は持ってますが、それをマイナスとは思っていません。極端な話、仮に妻が国会議員になるなら、それでも良いと思っています。そうなると私は仕事を辞めるかもしれませんが(笑)。もちろん妻が専業主婦になっても構わないと思っています。
Q.女性の立候補自体に夫から反対されるという話をよく聞きますが。
A.妻には家にいてほしいという人たちにとっては受け入れられないでしょうね。仕事柄、自分より目立つし発言力も増すでしょうし、そうなられるのが嫌だという男性がいるのも理解できます。ただこれからの世の中、そんなことを言っていたら回っていかなくなると思っているので、互いの長所を活かし短所を補い、バランスのとれた関係を築いていく必要があると考えています。
Q.お話をお伺いしていて、佐々木さんご自身はリベラルというか、古い性別・役割分業に囚われない考えの方だなと思うのですが、何かきっかけなどがあったのですか?
A.私側の家系は昔からの古い考えでして、その中で母が気丈に上手く立ち回っていたのを見てきたので、恐らくその反面教師なのだと思います。他に考えられるのは大学時代でしょうか。私はある国立大学に通っていたのですが、そういうところに来ている女性って自分のやりたいことが明確な人が多く、そういう方たちと触れ合うことで男尊女卑的な考えがなくなったのかもしれません。
Q.議員として働くきえさんをどのように感じていますか。
A.恥ずかしいですが、あえて言葉にすると、「誇らしい」ですよ。自分のためではなく、人のため町のために駆け回り、高くはない収入で頑張っているわけですから。そこには志しかないと思っており、志を持っていろんな方々の一助になっているのであれば、配偶者として誇らしいです。
Q.きえさんが議員として活躍し続けてほしいと思いますか。
A.私自身の思いはそうです。ですが、本人が嫌になれば、絶対に仕事に影響が出てそれまでのようなパフォーマンスを出せなくなるはずです。そうなってから、周りから「どこかおかしくなったよね」と言われるのは、彼女自身不幸だと思うので、全力でパフォーマンスを発揮できないのであれば辞めた方がいいと思っています。中途半端な気持ちで議員として働いて収入を得るのは違うと思うんです。少しでも嫌になったら辞めればいいというのは前から言ってます。誰にとっても良くないと思うので。
幸い、今のところまだまだやる気でいるようなので全面的に応援しています。70歳になってもやるというのであれば、やればいいと思っています。
Q.辛そうだったら考えるという形ですか?
A.そうですね、ストレスがひどくて続けるのが辛いということなら、考えればいいと思います。実際、近しい状態のときもありましたが、ちゃんと乗り越えてきています。根は強い人なので、これからも何とかやっていくのではないでしょうか。本人が「やり切った、これ以上はやる気が出ない」と言う時が終わりのサインなのかなと思って見ています。
Q.きえさんが働きやすい環境はどのようなものとお考えですか。
A.内部的には家事や子どもたちのケアにとらわれない環境でしょうか、難しいですが。家事については、議会が近づいてきたら、私の担当割合を増やすよう心がけています。夜帰宅後に洗濯を全部終わらせたり、可能なら翌日の夕食も作っておいたりなど。
子どもたちのケアという部分では正直あまり力になれていないと感じています。私はそういったことがあまり得手ではなく妻の方が上手なので、どうしても物理的な家事の方に走ってしまいがちですが、妻はむしろ子どもたちのケアをしてほしいと思っているようです。そのあたりを今より改善できれば、妻もより働きやすくなるのかなと思います。
一方、外部環境としては一般企業と同様でありきたりですが、ジェンダーレスでハラスメントのないものだと考えます。
Q.最後に、女性議員を妻に持つ男性に向けて、これから立候補しようと考えている女性のパートナーに向けて、メッセージをお願いします。
A.「否定せず、全力で応援してほしい」ということに尽きます。否定される方には「妻は所有物でない。個人として尊重し、やりたいことをやる権利がある」という考えに少しでも共感いただければと思います。それが皆が生きやすい世の中に繋がっていくと思っているので。
【編集後記】
「女性は家事育児、男性は仕事」という男女の社会的役割はいまだ存在しています。しかし、佐々木議員のパートナーの方は、そういった概念に囚われず、家事や育児、妻の選挙活動にも協力して生活されていました。それは、妻の意思を個人として尊重し、対等な関係を持つことを大切にしている、パートナーの方の意識があるからこそなのだなと感じました。女性議員を含めたすべての働く女性の意思を前向きに受け止めてくれる家族の在り方を見ることができたように思います。
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