女性議員の夫へ突撃インタビュー!女性を理解すると夫婦・家庭・職場がスムーズになる!?―横山由香理 品川区議 (2018/8/2 WOMAN-SHIFT)
今年の5月16日、「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律案」が可決され、今後の選挙で各政党は候補者の男女比率を「できる限り均等」とするよう求められます。法律の後押しはありがたいですが、私たちはさらなる意識変革を加速させる必要があると思っています。女性議員が増えることは女性のためだけではなく男性にとっても、そして多様性を持った社会を政治に反映させるためにも重要だという認識が広がり、働きやすい環境が整うことが必須だと日々感じているからです。
今回インタビューさせていただいたのは、品川区議会議員の横山由香理さんの夫、横山亮一さん(旧姓:毛塚)です。議会の男女比率を「できる限り均等」にという法の趣旨に対して現状は、品川区議会に所属する自民党議員9名(自民党籍)の内女性議員はたった1人、横山由香理さんだけです(2018年7月19日時点)。
横山由香理さんは、2014年の品川区議会議員補欠選挙で自民党の公募に応募し、公認・出馬・当選されました。出馬する前は普通の会社員、一児の母だった妻が「議員になる」「議員になった」とき、夫はどう反応し、どう対応すると良いのでしょうか?経験者に率直なところをうかがいました。
インタビューを通して「議員だから」というのは特別なことではなく、共働き家庭として一つの形なのだなと考えさせられました。亮一さんが心がけてきた配偶者を理解し行動すること、それは夫婦・家庭・職場での関わりがスムーズになる秘訣かもしれません。それでは、具体的な対応については読み進めていただければと思います。
たまたま妻が選んだ仕事が「議員」だっただけ。
Q:由香理さんが2014年の品川区議会議員補欠選挙で、自民党の公募に応募するということを聞いて、その時どう思いましたか?
A:議員になることは反対とか特にせず。娘もイケイケドンドンという感じで賛成していました。
もともと、夫婦の年齢差が背景となって考えていたことがあります。私と妻とは年齢差が13歳あるんですよ。単純に男女の平均寿命で自分が死んだら、妻はその後の人生が20年近くあるけど、その時ちゃんと独りでやっていけるようにと結婚した当初から思っていました。だから、仕事はしていて欲しいなというのはあって、たまたま仕事が議員という仕事だっただけ。もちろん、心配はしましたけど、それまでもいろいろな話しの中で議員という話しが出ていなかったわけではないので、区議の公募に応募すると言われて、それまでの話しが線で繋がったという感じです。
妻は、品川区議会自民党は女性が1人もいないことに違和感を持っていたり、社会の中で女性の生きにくさであったりについては問題意識を持っていたみたいです。自分が議会の多様性を担うという気持ちがあったと思います。あと、たまたまですけれども、児童虐待に対して本人が課題意識を持つタイミングがあって、それを解決するための選択肢に議員があったのではないかと思います。
家事については、何もできなかったけど、少しづつ教えてもらって。
Q:議員になることに賛成であり、かつ心配もしていたということで、サポートについてはいかがですか?選挙期間中と日頃の生活でのサポートは?
A:初めて出馬した補欠選挙の時は会社から3日間休みをもらって手伝いました。普通にサラリーマンなので結構3日休むって、大変なことです。仕事を他の人へお願いするなど調整はそれなりに大変でしたが、会社自体は理解があって、そういうことも認めてくれています。選挙期間中は集中してもらいたかったので家事・育児を全面的に自分がやりました。あとは、自分がデザイン関係の仕事をしているのでアドバイスなど。
ちなみに家事については、結婚した当初、自分は何もできなかったんですよ。料理も全然できなくて、最初の頃、ホットケーキを焼こうと思って、油をフライパンに引いて焼こうと思って焼いたら、食べたら味が変とか言われてみたら、油じゃなくてみりんで焼いていた、、、。そのくらい何もできなかったんですけれども、お互い仕事をしているし、仕事をしていて欲しいと思っていたので、家の事はできる事はやっていこうという気持ちはあったので、ちょっとずつ教えてもらったりしてできるようにはなっていきました。ただクオリティーについては言わないでねという気持ちです。
育児に関しても、娘の保育園の送りをやっていたので、議員になったからといってもあまり変わりはないですかね。ちょっとボリューム的にはやることが増えましたけれども。限られた時間でどれだけ家事ができるかみたいなところで考えてやっています。
男社会で女性が男性と同じように働いてもうまくいかないと思う、と妻に話したこと。
Q:一度、由香理さんが体調を崩されて、バリバリ働けない期間がありましたが、そこではどのようなお話しされていたのですか?
A:妻が体調を崩した背景には、とにかく休めなかった、休まなかったというのがあると思うんです。彼女の仕事への姿勢は、何でもかんでも真正面に取り組む。それで過労で倒れてしまった。その時には辞めてもいいんじゃないかなと思ったけど、本人は続ける意思があったので、じゃあ次は倒れないようにしてやれるようにしようということでいろんな話をしました。
「男社会の中で女の人が男と同じように働いてもうまくいかないよ」って話をしたんですよ。例えば、「車の運転は女の人より男の人がうまいという話しがあるけど、それってなんでだと思う?車作ったのは男だよ。道路作ったのも男だよ。だから男がやりやすいようにできているんだよ。女の人が、車作って道路を作ってというのをしていたら男の人は絶対運転下手だよって」。
そしたら少し納得した感じになって、それで何か自分のやり方っていうかペースとかをだんだん模索するようになったかな。そういう話の中で倒れないようにやろうよというそういう話は結構いっぱいしましたね。倒れないようにやりつつも、結果を出すようなやり方というのを本人が考えてやるようになりましたね。
妻が仕事をしていることで、女性社会を学ぶすごくいい機会をもらったと思う。
Q:由香理さんが一生懸命に政治家としての活動をやられていて良かったと思う事と逆に嫌だなと思うことはありますか?
A:うーん。嫌なのは時間が合わないことですね。働く時間がすごく長いのか、結構家族が揃うことが少ない。逆に良かったなと思うのは、自分が家のことをやる量というのが増えたので、そこから得られるものは私すごく大きいですね。
例えば、娘はチアのクラブチームに入っていて、チアの送り迎え、準備とか、保護者としてやることがあって親のサポートが結構大事なんです。チームメンバーは100人近くいるんですけれども、その中で男親がメインでサポートしているのはうちだけです。まぁ、そうするとさっきの車の話じゃないですけれども、女性の作った道路で運転しようとするとまぁなんかとってもこうね、、、、小さくなっちゃうというか、萎縮するというか。
じゃあその中でどういうふうにやっていったらうまく物事進めていけるのかなとか、考えながらやっていくと、女性社会というのがわかるようになってきましたね。あーこういうことなんだとか。男性社会と女性社会の違いというか、どういうふうにアジャストしていくのかがわかるようになってきましたね。まぁ、まだまだ修行中ですけれども。
Q:具体的な事例で、女性社会にアジャストしたなと実感されたことはありますか?
A:男だと仕事を分担してやることが結構あるんですけれども、女性社会だと一緒にやることが大事なのかなと。その辺を理解していると、話はスムーズに流れますね。
自分の職場にも女性社員がいますが、管理職が男性でうまくいくチームといかないチームというのが出たりするんですよね。女性社員とのコミュニケーションの取り方で、一方的になっちゃう人もいてそれだと女性は萎縮して動けなくなったりする。逆に遠慮しているとやっぱりそれはそれで、甘くなってしまう。そうすると成長しない。
うまくやっている人は結構すぐわかるんですよ。うまくやっている人、うまくいってない人もそれ見て学んだりすると、だんだん全体的に良くなっていたりする。それと自分がチアのお母さんたちと一緒にやっているのが結構つながるんです。
Q:由香理さんが男性社会で1人っていうのと、亮一さんが女性社会で1人だっていうのと環境が似ている気がしますね。
A:自分は女性社会を学ぶすごくいい機会になったなと思います。女性と仕事をするときに一方的に遠慮しちゃうか一方的に言っちゃうかどっちかになってしまうと思うのですが、それじゃ多分うまくいかないんですよ。
あとは家のことを結構やるので、保護者会とかチアのもそうですけれども家族に頼られることが多いので、そういうのはいいと思いますね。よく昭和のお父さんとかって、何か亭主元気で留守がいいみたいなのがあるじゃないですか?自分は子どもにあれ知らない?とか、それそこにあるよーとか、家のこととか聞かれるんですよ。何か提出しなきゃいけないんだけどとか、そういう相談されたりする。そんな中で家族に頼られるというか、家族の中で己の役割ができるというのはいいことだと思います。そういうのはいいなと思っています。
夫婦はそれぞれ違うことを意識して、理解していくことが大事。
Q:最後に、女性議員の夫や今後の夫になるかもしれない男性に向けてメッセージをお願いします。
A:妻が議員だからこう!ということじゃなくて、夫婦を取り巻く環境はそれぞれだから、それぞれ落ち着きどころを考えていかなくちゃならない。お互い違う人格、違う背景を持っているということを意識すること。違うということを前提にしないと、違うことで腹が立ったりする。とにかくたくさん話して、違いを理解していくことですね。
【インタビューを読んだ由香理さんから一言!】
夫へのインタビュー、ありがとうございました。我が家では会話だけではなく、喧嘩も多く、いつも円満という訳ではありませんが、子育てや家庭を維持するための同志(パートナー)として、お互いが工夫・努力を続けています。「このようなやり方もあります!」など、様々な事例(良い例だけではなく失敗例も含めて)を、ぜひ私たちにシェアいただけますと幸いです。
<編集後記>
「女性議員の夫にインタビュー」というこの企画は、日頃私たち女性議員がこの職に就いているからこその悩みがあるという背景や出馬する時に家族の理解がネックになるという現状を少しでも打破できればと考えたものです。しかし、今回のインタビューを聞いて、議員だからということではなく、また共働きだからという枠を超えて、果ては夫婦だからという枠すらも超えて、他者を理解して歩み寄るという人間関係の姿勢について教えていただいたように思います。
編集:WOMAN SHIFT事務局 たぞえ麻友(目黒区議)
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