【オムツと保育園5】一歩前進!?オムツ持ち帰りは次のステージへ (2018/3/14 多摩市議会議員 遠藤ちひろ)
多摩市議会予算委員会は5日間。議員一人当たりの28分の持ち時間内で、地方消費税収の見込み(歳入)から庁舎建て替え計画や若者支援策(総務費)、生活保護予算(民生費)、教育費なら英語教育推進などあらゆるジャンルで質問可能。
事前通告なしの質疑もアリですが、財源や根拠法令に基づく議論をすることも多いので、ある程度は本番前に所管職員と議論を重ねておくことが普通ですね(今お騒がせの森友学園系など不正追及質問は、通告せずにガチンコ対決になります)。
保護者負担ゼロのオムツ処理―豊島区へのヒアリング
オムツ問題を取り上げるならば3日目。民生費の質疑時間だな、キラリ!
政治山に投稿した時は2日でウン十万アクセス、500件の批判コメント(主に)がついただけに議場でも炎上するかもしれませんが、覚悟を決めて所管課に通告します。
本番まで時間がないなか、慌ただしく保育園に再度ヒアリングをかけ、議事録で過去のオムツ論争をチェックしていたところ、「全国若手市議会議員 若手議員の会東京」の友人区議を通じて、全保育園でのオムツ処理を決断した豊島区役所で、担当者に話を聞けることになりました。保護者負担をゼロにした理由や、回収までオムツを保管しておく場所をどうしたのかなど聞きたいことが山盛りです。
ヒアリングでは、
- 豊島区は使用済みオムツを全額税金で処理するのが特徴。都内子育てナンバーワンを目指す強い意志で、保育政策課をあげて予算を確保したとのこと。
- 他に税の使い道があるだろうとか、持ち帰りでもよい保護者への配慮をどうするかなど庁内外でも激論があったそうだが、オムツ論争に終止符を打つべく決断しましたと課長が熱く語ってくれました。
収穫多し! 多摩に帰ってから最終的な質疑構成と想定問答を確認し、いよいよ質疑に臨みました。では実況中継形式でご覧ください。
3月13日予算委員会、いよいよ質問
(委員長)民生費について他に質疑はありませんか?
【ちひろ】はい、委員長。
(委員長)15番、遠藤ちひろ委員。
【ちひろ】公立保育園管理運営経費について伺います…(中略)市内でも使用済みオムツは持ち帰りが主流ですがオムツ持ち帰りを行なってきた理由は?
<担当課長>お子さんが使ったオムツを持ち帰ってもらい健康状態を見てもらうこと。あわせて保育園に汚れたオムツを保管しておく場所がなかったという2点からです(議場、ざわめく)。
【ちひろ】オムツを持ち帰って中身をチェックする家庭などほとんどありません。健康チェックというのは建前で、オムツの保管場所と処理する予算の問題ではないですか?
<担当課長>大型保育園になると1日にでるオムツが大型ゴミ袋4~5袋にもなり、保管する場所がないというのも大きな要因です。
【ちひろ】豊島区や渋谷区では、動物病院や介護施設で使っている消臭剤や大型保管バケツを用意して一時保管しています。両区とも多摩より人口密度が高い自治体であり、園内にスペースがないというのは理由になりません。
<担当課長>豊島区さんでは保育園でのオムツ処理を税でまかなうそうですが、自宅で子どもを育てている家庭への不公平感などの問題があると認識しています。
【ちひろ】処分費用全額を税負担するのが難しいのはわかります。布おむつで保育するという方針の園もあるだろうし、自宅に持ち帰って無料で処分したいという家庭もあるでしょう。しかし保育園利用が一般化している現代、希望すれば使用済みオムツと一緒に夕飯の買い物をしなくてもよいような社会を実現したい。保護者や保育園の意見を聞いた上で、一部有料での園処理か、従来通りの持ち帰りかを選択できるような仕組みが良いのではないでしょうか。
[市長]私の子育て時代は布おむつでしたが、オムツ持ち帰り以外にもたくさん問題はありました。検温してから子どもを預けるとか、大変なことが多かったことを覚えています。今は保護者ニーズも変わりつつあるので、まずはしっかり把握したいと思います。
千里の道も一歩から、カギは当事者の声
一部改編しましたが、「まずは保護者ニーズの把握を検討する」という答弁を得ることができました。一歩話が進んだかなというところです。
驚いたのは私の質疑の後、別の党の議員が追加質問をしたこと。その方はご自身の経験を引いて、「持ち帰るオムツの重さからわかることも多い。着替えやら持ち帰りは毎日あるので、大してオムツは気にならなくなった。いまの保護者から、オムツ持ち帰りについての声も挙がっていないと思うがどうか」というもの。
保育園で処分してほしいという、保護者の要望が挙がっていないのは事実です。慣習であるため疑問に思わなくなっていくこと。また、直接保育園には言いにくいという背景があると聞いてましたが、それをもとに「要望があるのかわからない」というならば、私自身もアンケートをとってリアルな保護者のニーズを明らかにしようと決意。この日を機に、オムツ回収問題はステージは第2ラウンドに入っていくことになりました。
千里の道も一歩から。子育てはいろいろな価値観が混じるので正解はありませんが、変わりゆく社会ニーズに応えられる保育園行政の大切さを、改めて感じた質疑になりました。私自身も実験の重要性、多様な価値観を政策反映させる難しさを思い知らされましたが、これまでそうだったというだけで思考停止せず「おかしいと思う感覚」を大事に残り1年の任期に挑みたいと思います。
末筆になりますが調査やヒアリングに協力してくれたパパママ、行政や保育園関係者、豊島区関係者の皆さん、ありがとうございました。
(完/全5話)
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著者プロフィール多摩市議会議員 遠藤ちひろ(えんどう ちひろ) 1976年茨城県生まれ。早稲田大学在学中に人材開発ベンチャーを起業。同社代表取締役を務めたのち、2010年に多摩市長選挙に出馬。惜敗するも翌年多摩市議会議員選挙に歴代レコードでトップ当選する。現在2期目。著書に「市議会議員に転職しました。ビジネスマンが地方政治を変える(共著、小学館)」ほか、大学などで講演多数。
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