カジノのどこが悪いのか?「横須賀カジノクルーズ」提唱者が問う―小林伸行 市議 (2016/12/8 横須賀市議会議員 小林伸行)
「カジノ法案」が国会で提案され、にわかにカジノの是非が議論されるようになりました。既に衆議院で可決された状況の中、マスコミ等でもなかなか語られない論点について、小林伸行 横須賀市議にご寄稿いただきました。
◇ ◇
カジノは、現在の日本では認められていない。刑法で賭博が禁じられているからだ。しかし、これまで、東京、沖縄、熱海、佐世保、横浜などなど日本各地でカジノ構想が浮かんできた。多くは、構造改革特区制度を利用した「カジノ特区」としての認定を目指すものだった。ただし、国に全て却下されてきた。佐世保のハウステンボスが「外国船上カジノ」という苦肉の策を講じて撤退した例もある。
ところがここへきて、国会では「カジノ法案」が議員立法で提案され、にわかにカジノに注目が集まっている。明日12月6日にも衆議院で可決見込みであり(編集部注:同法案は6日、衆議院で可決された)、参議院での審議を待つ状況だが、新聞等の論調を見ても隔靴掻痒の議論ばかりで、本質的な部分に切り込む議論に乏しいと感じる。そこで、私の選挙区である横須賀市でカジノの導入を提案してきた人間として、カジノ賛成の立場から一石を投じたい。なお、「カジノ」と言うのは日本とドイツぐらいであるため、以下、国際的に一般的な「カシノ」と呼びたい。
ピンボケなカシノ批判なら聞き飽きた。
さて、敢えて挑戦的なタイトルにしたが、現在の日本の状況においてカシノ合法化の何が悪いのか、本当にわからない。カシノ、いいじゃないの?
予め断っておくが、「カジノ法案」の国会審議のプロセスについて、ここでは問わない。国会は、地方議会から見ると与野党ともに大変お粗末な議会運営をしているので、語るに値しないからだ。一方で、政策としてのカシノ合法化は、筋がいいと考えている。
まず、カシノ批判をする言説としては次のようなものがある。いわく……
- カシノは、ギャンブル依存症を助長する
- 貧困者を、さらに苦しめる
- 風紀・治安が乱れる
- 日本や都市のイメージを損なう
……実にピントがボケている。既に「世界最大のギャンブル大国」とも言える現代ニッポンのこの有様を無視して、何をか言わんやである。
ギャンブル大国ニッポンの現状を冷徹に見つめよ。
カシノ反対論者は足元を見よ。年間のべ1070万人が通う23兆円(*1)の巨大産業・パチンコが既にあるではないか。刑法上は違法ではないが、誰もが認めるれっきとしたギャンブルである。この他に、5兆円産業の公営ギャンブルもある。これをカシノ批判になぞらえれば……
*1 公益財団法人日本生産性本部『レジャー白書2015』調べ
- ギャンブル依存症を大量生産している
- 生活保護から中流階級まで既に苦しめている。上流階級はパチンコなどやらない
- 放置自転車や煙草ポイ捨てなど風紀を乱す者もおり、車中幼児死・育児介護のネグレクト死など刑法犯を増やしている
- 駅前の一等地に立地することも多く、外国人旅行客は唖然としているし、景観面で疑問の声も多い
……というわけで、カシノを合法化したところで、これ以上悪くなることはないだろう。
このあたりの現状認識は、『パチンコがなくなる日』 や、その続編の『パチンコが本当になくなる日』をご覧いただければ納得頂けると思う。
カシノを批判する方々は、先に現状を批判しなければ説得力に欠けるだろう。
じゃあ、なぜカシノなのか。
ところで、上記の言い分だけでは「パチンコや公営ギャンブルにカシノが加わったところで大勢に影響ない」という論旨だけで、積極的に推進する理由にはならない。では、筆者は何をもって「カシノ合法化は筋がいい」と言っているのか。
- 本場のカシノは、むしろ中~高所得層向けのエンタテインメントである
- 日本のギャンブルはおしなべて控除率(胴元に取られるカネの割合)が高い。パチンコが10%前後、公営ギャンブルが20~30%、宝くじに至っては50%程だが、カジノは数%で、博徒に良心的
- 最近のパチンコは、なかなか出ないが当たると爆発的に出るようになってきており、射幸心をあおると指摘されているが、カシノは違う
- パチンコや公営ギャンブルは日常的にできるが、カシノは特別な場所に行かなければいけない非日常なので、常習性が低い
- 上記の性質上、比較的良質なギャンブルであるカシノを公営ギャンブルとして促進することで、高所得層に消費させる再分配効果がある
- 外国人観光客による外貨も取り込める。マカオが、国際観光客数でこそ上位ではないが国際観光収入では10位にランクインするのには理由がある(*2)
- 同時にパチンコを段階的に規制することにより、低所得者は日常的にギャンブルができなくなって実経済につぎ込めるお金が増え、経済活性化につながる
*2 国連世界観光機関“Tourism Highlights 2016”
韓国に学び、パチンコからカシノに舵を切れ
韓国は、国を挙げてパチンコを廃止した。一方で、カシノは整備された。
私は、私費で韓国視察した際にSeven Luck Casinoも視察し、遊んでみた。恐る恐る入ったが、何ということはない。以前、パチンコを試したものの、うるさくて煙草臭くて5分もいられなかった私だが、同店は特に高級店でもないのだろうがキレイで静かだった。また、数か国語を操る従業員や高度なスキルを持ったディーラーなど、付加価値の高い雇用が生まれていた。
しかも、パチンコは外国資本の会社も少なくないと聞く。勤勉な国民が外貨を獲得してせっかく蓄えた国富を、海外流出させることにつながる。であれば、国産カシノを導入し、パチンコを規制することには、理も利もあるはずだ。こうした点から、私は保守も革新も超えて理解が得られる筋のいい政策だと考えている。
なお、このような考え方の下、私は3年前から「横須賀カジノクルーズ」の導入を提唱してきた。ソウル、メキシコシティ、ニューヨークを凌ぐ世界最大の都市圏である大東京圏3200万人の飽くなき娯楽への欲望を都心から1時間の横須賀まで運ぼうという構想だ。
小林のぶゆきBlog「横須賀カジノクルーズ?!の可能性を探る」
現実的には横浜のほうがホテルなど条件は整っているとは思うが、横浜では反対論も根強い。「カジノ法案」が成立したあかつきには、ぜひ横須賀の港にクルーズ船を浮かべてカシノを楽しんで頂きたいと個人的には考えている。
- 著者プロフィール
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小林伸行(こばやし のぶゆき)
神奈川県横須賀市議会議員
2011年4月より横須賀市議会議員。地域情報誌と環境コンサルティングに携わるが、地域の疲弊と日本の将来を憂い、政治を志す。政策秘書試験合格後、国会議員公設秘書として修行し、マニフェスト大賞でも5年連続で受賞するなど政策派として活躍。
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