米カジノ44億円無効 企業の消費者への責任 (2016/11/10 企業法務ナビ)
はじめに
2016年11月3日のCNNの報道によりますと、アメリカのとあるカジノで約44億円を当選したと喜びに震えた女性が、実際は機械の不具合であり結果は無効であると知らされ、悲しみに震える事件がありました。日本でもカジノ関連の法案が検討されており、注目を集めているところです。ところで、日本にはカジノはありませんが、施設設置者が施設の不具合のため施設利用者に損害を負わせ、賠償が必要になった事件がありました。今回は企業などの施設の設置者が、施設の利用者に対して負う責任についてみていきます。
事件の概要
平成18年にとある保育園で、保育園の屋上に駐車場が設置されており、その駐車場から車が落下し園児が死亡するという事件がありました。この事件では民法709条の不法行為責任が保育園側に認められ、およそ2000万円の損害賠償を命ずる判決が確定しました。
この裁判では、駐車場の設置を担当した保育園側の担当者が、屋上に駐車場設置したことがそもそも危険であること、外壁の強度が車の誤作動による落下防止に耐えられなないことが指摘され、これに気付きながら何らの措置も行わなかった保育園側の不法行為責任が認められました。
不法行為とは
不法行為とは人が他人の権利ないし利益を違法に侵害した場合に、損害の公平な分担を求め、侵害者に損害の賠償責任を負わせる制度です。もっとも、損害が生じた際に常に賠償が必要とされると、損害を発生させないよう行動が委縮してしまいます。そこで、行動が委縮することによる経済の停滞が起きないよう、不法行為においては過失責任の原則がとられています。
過失責任の原則とは、損害が発生した場合に、故意又は過失がある場合にのみ賠償の責任を負う制度です。ここでの故意とは、事実の認識のことで、過失とは注意義務違反のことを言います。この注意義務違反は、結果を予見できたであろう場合に結果防止措置をとり得たにもかかわらずこれを怠った人に認められ、賠償責任の根拠となります。
その他の事例
施設の管理者が賠償の責任を負うこととなった事例は他にもあります。例えば、ある銀行では、出入り口に設置されていた足拭きマットで女性が滑って転倒し、約2800万円の賠償請求が女性から銀行に対して行われました。この裁判では、店内の足拭きマットが滑りやすい状態で設置されていたことが認められ、銀行側の注意義務違反による約100万円の賠償責任が認められました。
最後に
今回紹介したように、施設の運営についてはどのような人々が施設を利用するかに関連し、何気ない出来事が法的責任の根拠になる場合があることを示唆している考えられます。社内に複数のチェック機能を備えたり、利用者への注意書きを行ったりするなどの対策によりこのようなリスクが低減するかもしれません。因みに、米カジノの機械の不具合は、事前に機械の故障の際に関する注意書きが書かれていたそうで、その注意書きにより決着したように思われます。
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