参院選争点(1)消費税10%、再延期で国民の信を得られるか (2016/6/13 政治山)
安倍首相は6月1日、来年4月に予定していた消費税率10%への引き上げについて、世界経済の不透明感から「リスクには備えなければならない」として、2年半の延期(2019年10月実施)を表明しました。衆参同日選は行わず、「参院選で信を問う」として、今回の選挙を消費増税延期とアベノミクスの是非を問う戦いと位置付けました。
前回の延期では衆院解散で「信を問う」
2014年11月。当初は15年10月を予定していた10%への引き上げが迫る中で、安倍首相は17年4月への延期を決めました。その際、「再び延期することはない」と強調するとともに、「国民経済にとって重い決断をする以上、速やかに国民に信を問うべきだ」と述べ、衆院解散を発表しました。
翌月の衆院選で勝利し、15年3月の通常国会で増税延期の法案が可決しました。景気の状態を見てから増税を判断する「景気条項」を撤廃し再延期の可能性を排除。引き上げは17年4月に確定したはずでした。
増税確定のはずが…年初からの株価急落で軌道修正
ところが今年に入り年初から株価が急落。1月の参院本会議で、安倍首相は「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り確実に(増税を)実施する」として、延期への含みを持たせました。
株価はその後もじりじりと下落。1月から3月末にかけて、国内三市場への投資部門別売買状況を見ると、海外投資家は全ての週で売り越し、総額5兆円以上の外資が引き上げられました。NYダウの株価水準が年初から3月末にかけてほとんど変わらなかったのに対し、日経平均株価は円高の影響もあり2000円以上も値下がりしました。
安倍首相は3月以降、ノーベル経済学賞の受賞者であるポール・クルーグマン教授やジョセフ・スティグリッツ教授を招き「増税すべきでない」との助言を受ける形で、再延期に向けた地ならしをしました。
サミットでリーマン・ショックの状況に言及
5月26・27日に行われた伊勢志摩サミットで、首相は「世界経済はリーマン前の危機的状況に似ている」と発言。各国首脳から「危機とは言えない」と反論された旨の報道がなされました。延期に向けた布石と解釈されましたが、経済専門家などから疑問が呈されると、発言の趣旨を「世界経済はリーマン以来の落ち込みにあるというものだった」と軌道修正しました。
今回は参院選での与党の61議席獲得で「信を問う」
6月1日の会見で、安倍首相はリーマン級の事態が発生していないことを認めると同時に、熊本地震についても「大震災級だとして再延期の理由にするつもりもない」と述べました。
また、前回の増税延期で衆院を解散したことを意識して「新しい判断について、参院選で国民の信を問いたい」とし、連立与党で改選議席(121議席)の過半数獲得を目標に設定。「国民の皆様の力が必要であります」と協力を呼びかけました。
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