安倍首相、消費税率引き上げの再延期を表明―会見全文  |  政治・選挙プラットフォーム【政治山】

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安倍首相、消費税率引き上げの再延期を表明―会見全文 (2016/6/1 政治山)

 安倍晋三首相は1日夕、首相官邸で記者会見し、2017年4月に予定していた消費税率10%への引き上げを、2019年10月まで2年半延期すると表明しました。

 さらに首相は、消費増税の延期の是非について「参院選を通して国民の信を問いたい」とし、「目指すのは連立与党で改選議席の過半数の獲得」と述べました。

 また首相は、参院選の日程を6月22日告示、7月10日投票と発表し、正式には6月2日の閣議で決定する見通しです。

 会見の内容は以下の通り。

安倍晋三首相

◇        ◇

 本日、通常国会が閉会いたしました。この国会で成立した法律や予算によって介護休業給付の拡充、介護や保育の受け皿整備、不妊治療への100%助成、ひとり親家庭への児童扶養手当の増額など、一億総活躍社会の実現に向け、新たな取り組みが次々とスタートいたします。少子高齢化社会の流れに歯止めをかけ、誰もが生きがいを感じられる社会をつくる、一億総活躍の未来を切り拓くため大きな一歩を踏み出す、未来へと挑戦する国会になったと考えています。

 他方、足下では新興国や途上国の経済が落ち込んでおり、世界経済が大きなリスクに直面している、こうした認識を、先般、伊勢志摩サミットに集まった世界のリーダーたちと共有しました。先般の熊本地震では、熊本や大分の観光業や農業、製造業など、九州の広い範囲にわたって経済や暮らしが打撃を受けています。

 これらが日本経済にとって新たな下振れリスクとなっている、最悪の場合、再びデフレの長いトンネルへと逆戻りするリスクがあります。今こそ、アベノミクスを最大に吹かし、こうしたリスクを振り払う、一気呵成に抜け出すためには、脱出速度を最大限に上げなければなりません。アベノミクスをもっと加速するのか、それとも後戻りするのか、これが来る参議院選挙の最大の争点であります。

 伊勢志摩で取りまとめた合意を議長国として、率先して実行に移す決意であります。

 アベノミクス、三本の矢をもう一度力いっぱい放つため、総合的かつ大胆な経済対策を、この秋、講じる考えです。最も重要なことは構造改革を断行し、将来の成長を生み出す、民間投資を喚起することであります。TPPの早期発効を目指します。さらには、日EU EPAなど、良いものが良いと評価される自由で公正な経済圏を世界に拡大することで、新しい投資機会を作り出します。

 現下のゼロ金利環境を最大限に活かし、未来を見据えた民間投資を大胆に喚起します。新たな低利・貸付制度によって21世紀型のインフラを整備します。リニア中央新幹線の計画前倒し、整備新幹線の建設加速によって、全国を一つの経済圏に統合する地方創生回廊をできるだけ早く作り上げます。保育所や介護施設の整備など、未来の一億総活躍社会を見据えた投資を力強く進めます。

 最大のチャレンジは多様な働き方を可能とする労働制度改革です。長時間労働の慣行を断ち切る、雇用形態に関わらない均等待遇を確保する、そして同一労働同一賃金を実現します。非正規という言葉を日本国内から一掃するその決意で全体の所得の底上げを図り、内需をしっかりと拡大していきます。

 こうした諸改革で、いまなお地震が続く熊本地震の被災者の皆さんの不安な気持ちに寄り添いながら、被災地のニーズをしっかりと踏まえつつ本格的な復興対策を実施いたします。

 G7で協力し、世界的な需要を強化するため、将来の成長に資する分野で大胆に投資を進める。人口知能、ロボット、世界に先駆けた技術革新を日本からおこす、しっかりと内需を支える経済対策を行う考えであります。

 その上で、来年4月に予定される消費税率の10%への引き上げについてお話しいたします。

 1年半前の総選挙で、私は来年4月からの消費税率引き上げに向けて必要な経済状況を作り上げるとお約束しました。そしてアベノミクスを強力に推し進めてまいりました。

 現在、有効求人倍率は24年ぶりの高い水準となっています。それも都会だけの現象ではありません。就業地別でみれば、北海道から沖縄まで47の都道府県すべて1倍を超えました。これは、史上初めての出来事であります。1人の就職者に対して1つ以上の仕事があるという状況を作り出すことができたんです。

 リーマンショック以来減少の一途をたどっていた正規雇用は昨年、8年ぶりに増加に転じ、26万人増えました。この春の高校生の就職率は、24年ぶりの高さであります。大学生の就職率は過去最高となりました。

 中小企業の倒産も、政権交代前から3割減少しています。ここまで倒産が減ったのは25年ぶりのことであります。

 所得アップについても連合の調査によれば、中小企業も含めて一昨年、昨年に続き、今年の春も3年連続で、今世紀に入って最も高い水準の賃上げを実現することができました。今世紀に入って最も高い水準であります、それを実現することができたんです。

 そして、パートの皆さんの賃金も過去最高を記録しています。一部の大企業で働いている方の給料が上がっただけでは決してありません。パートで働いている皆さんの時給も過去最高となっているんです。どうか、ここも見ていただきたいと思います。

 雇用をつくり、そして所得を増やす。まだまだ道半ばでありますが、アベノミクスは順調にその結果を出しています。

しかし世界経済はこの1年あまりの間に想像を超えるスピードで変化し、不透明感を増しています。

 最大の懸念は、中国など新興国経済に陰りが見えることです。リーマンショックの時に匹敵するレベルで、原油などの商品価格が下落し、さらに投資が落ち込んだことで新興国や途上国の経済が大きく傷ついています。これは世界経済が成長のエンジンを失いかねないということであり、世界的な需要の低迷、成長の減速が懸念されます。世界の経済の専門家がいま警鐘を鳴らしているのは、まさにこの点であります。

 これまで7回にわたって国際金融経済分析会合を開催し、ノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツ教授やクルーグマン教授をはじめ、米国や欧州、アジアの経済の専門家から直接意見をうかがってまいりました。その専門家の多くが世界的な需要の低迷によって、今年そして来年とさらなる景気悪化を見込んでいます。

 こうした世界経済が直面するリスクについて、G7のリーダーたちと伊勢志摩サミットで率直に話し合いました。その結果、新たに危機に陥ることを回避するため、適宜にすべての政策対応を行うことで合意し、首脳宣言に明記されました。

 私たちが現在直面しているリスクはリーマンショックのような金融不安とはまったく異なります。しかし私たちはあの経験から学ばなければなりません。

 2009年日本経済はマイナス成長となりましたが、その前年の2008年時点ではIMFも4%近いプラス成長を予測するなど、そのリスクは十分には認識されていませんでした。直前まで、認識することが難しい。プラス4%の成長予測が一気にマイナス成長になってしまう、これがリスクが現実のものとなったときの危機の恐ろしさです。

 私は世界経済の将来を、決して悲観しているわけではありません。しかし、リスクには備えなければならない。今そこにあるリスクを正しく認識し、危機に陥ることを回避するため、しっかりと手を打つべきだと考えます。今般のG7による合意、共通のリスク認識の下に日本として構造改革の加速や財政出動など、あらゆる政策を総動員してまいります。

 そうした中で、内需を腰折れさせかねない消費税率の引き上げは延期すべきであろう、そう判断しました。

 いつまで延期するかについてお話しいたします。

 中国などにおいては、過剰設備や不良債権の問題など、構造的課題への対応の遅れが指摘されており、新興国経済の回復には時間がかかる可能性があります。そうした中で、世界的な需要の低迷が長期化することも懸念されることから、できる限り長く延期すべきとも考えました。

 しかし私は財政再建の旗を降ろしません。我が国への国際的な信認を確保しなければならない。そして社会保障を次世代に引き渡していく責任を果たす、安倍内閣のこうした立場は揺るぎないものであります。

 2020年度の財政健全化目標はしっかりと堅持します。そのためギリギリのタイミングである2019年10月には消費税率を10%へ引き上げることとし、30カ月延期することとします。その際に軽減税率を導入いたします。

 3年間のアベノミクスによって、国・地方合わせて税収は21兆円増えました。その2年半の延期によってその間に、アベノミクスをもう一段加速するそのことでさらなる税収アップを確保し、2020年度のプライマリーバランスの黒字化を目指す考えであります。

 1年半前、衆議院を解散するにあたって、まさにこの場所で私は消費税率10%への引き上げについて、再び延期することはないとはっきりと断言いたしました。リーマンショック級や大震災級の事態が発生しない限り、予定通り、来年4月から10%に引き上げると繰り返しお約束してまいりました。

 世界経済は今や大きなリスクに直面しています。しかし率直に申し上げて、現時点でリーマンショック級の事態は発生していない、それが事実であります。熊本地震を大震災級だとして再延期の理由にするつもりも、もちろんありません。そうした政治利用は、ひたすら復興に向かって頑張っておられる被災地の皆さんに大変失礼なことであります。

 ですから今回、再延期するという私の判断はこれまでのお約束とは異なる新しい判断であります。公約違反ではないかとのご批判があることも、真摯に受け止めています。

 国民生活に大きな影響を与える税制において、これまでお約束してきたことと異なる判断を行うのであれば、まさに税制こそ民主主義であります。であるからこそ国民の皆さんの審判を仰いでから実行すべきであります。信なくば立たず、国民の信頼と協力なくして政治は成り立ちません。

 新しい判断について、国政選挙であるこの参議院選挙を通して国民の信を問いたいと思います。国民の信を問う以上、目指すのは連立与党で改選議席の過半数の獲得であります。これは改選前の現有議席を上回る高い目標でもあります。さらに野党は政策の違いを棚上げしてまで、選挙目当てで候補の一本化を進めています。大変厳しい選挙戦となる、それは覚悟の上であります。しかし、この選挙でしっかりと自民党、公明党、与党で過半数という国民の信任を得た上で、関連法案を秋の臨時国会に提出し、アベノミクスを一層加速させていく、その決意であります。

 9年前、私は総理大臣として、あの夏の参院選で大敗を喫し、その後、総理の職を辞することとなりました。あの時の挫折は、今も私の胸に深く刻み込まれています。困難な政策であればあるほど国民的な理解を得て、国民とともに前に進むほかに道はない、これがあの時の反省であります。その反省の上に、この3年あまり国政にまい進してまいりました。

 4年前の総選挙、3年前の参議院選挙、1年半前の総選挙、国民の皆さまから大きな力をいただいて、アベノミクスを加速することができました。その結果、世の中の雰囲気は確かに大きく変わったことは事実であります。まだまだ道半ばでありますが、雇用は確実に増え、所得も確実に上がっています。この道を力強く前に進んでいこうではありませんか。4年前のあの低迷した時代に、後戻りさせてはなりません。

 世界経済がリスクに直面する今、ロケットが大気圏から脱出する時のように、アベノミクスのエンジンを最大限に吹かさなければなりません。デフレからの脱出速度をさらに上げていかなければなりません。そのためには、もう一度国民の皆さまの力が必要であります。

 国民の皆さまのご理解とご支持をお願いいたします。

◇        ◇

【質疑応答】

――消費税についてお伺いします。消費税について、総理は引き上げを先送りした前回2014年11月の記者会見で、10%に確実に引き上げると明言されました。その発言を実現できなかった政治的責任をどうお考えでしょうか。また、増税の次の時期について、19年10月に延期されましたけれども、ご自身の自民党総裁としての任期は18年9月までで、その任期を超える設定となっています。野党などからは無責任ではないかという指摘もありますけれども、19年10月の引き上げをどのように担保されるんでしょうか。さらに社会保障などの安定財源の不足が懸念されていますけれども、それをどう確保していくのか、具体的なスケジュールも含めてお考えがあればお聞かせください。

<安倍首相>
 冒頭申し上げましたように、中国など新興国の経済が落ち込んでいます。その中で世界経済において需要の低迷、また成長の減速が懸念されているわけであります。こうした世界経済のリスクについて、今回、伊勢志摩の地において、日本が議長国として行ったサミットにおいて、この世界経済の状況、リスクについて認識を共有したわけであります。

 そうした中において、新たな危機に陥ることを回避するため、適宜にすべての政策対応を行うことで合意をし、それが首脳宣言に明記されたわけであります。

 G7と協力して日本としても構造改革の加速や財政出動など、あらゆる政策を総動員していかなければなりません。それがまさに今回、議長国として首脳宣言を作成する、いわばリーダーシップをとった国の責任でもあろうと思います。まさにこういうリスクのある中において、需要が低迷する、成長が減速する、そのリスクの中でやるべきことをすべてやっていかなければならない。こういう中において、私たちが進めてきたいわば「三本の矢の政策」を、G7でこの三本の矢の政策を進めていく、この認識を共有したわけであります。この認識を共有する中において、この議論を主導した議長国日本としての責任があるだろうと思います。

 その中で、先ほども申し上げましたが、政治的な責任、かつて言っていたことと違うではないか、確かにリーマンショック級の出来事は起こっていませんし、大震災も起こっていないのは事実であります。ですから新しい判断をした以上、国民の声を聞かなければならないわけであります。代表なくして課税なし、税こそ民主主義、この考え方は私の考え方として一貫しています。国民生活に大きな影響を与える税制において、新しい判断を行うのであれば、ご指摘のようなご批判も含めて、その判断は前の判断と違うではないかというご批判も受け止めて、そして国民の皆さまの審判を受け止めた上で、秋の臨時国会にそのための法案を出したいと考えています。

 まさに民主主義とは何か。それは選挙を通じて国民の声を聞くことであります。この政治の責任、国民の声を聞くことによって、我々はしっかりとこの選挙に勝ち抜いていく中において、責任を果たしていきたいと考えています。国政選挙であるこの参議院選挙を通じて、国民の信を問いたいと考えた次第であります。

 そしてこの選挙でしっかりと過半数という国民の信任を得た上で、19年10月からの引き上げを明記した関連法案を秋の臨時国会で成立させたいと考えています。加えて、総合的かつ大胆な経済対策を講じて、アベノミクスを一層加速させていく決意であります。

 先般の伊勢志摩サミットの合意に基づいて、G7諸国と力を合わせて世界経済が直面するリスクに立ち向かうことによって、19年10月から引き上げが可能な環境を整えるべく力を尽くしてまいります。

 そして、総裁任期を超えるのではないかというご指摘がございました。

 今回は、経済の再生のためには、アベノミクスを進めていく上において負荷をかけずに、まさにそのエンジンを最大限に回転させ、まさにアベノミクスを最大限に吹かしていくことが必要です。そして脱出速度を得てデフレから脱却をしていく。まさにこのリスクに直面するG7で経済の牽引役を果たしていくという責任もそこで果たしていきたいと考えています。

 そのためには、先ほども申し上げましたように、できる限り伸ばすということも考えたわけでありますが、同時に財政再建というこの旗を降ろすつもりはありません。その中で、最適のタイミングが19年の10月であるという判断に至ったわけであります。

 むしろ自民党の総裁任期で判断してはならないと考えたわけであります。それは国民生活にとって大きな影響がある経済です。これを間違えれば、また20年間続いたデフレに戻る、どんなに頑張ったって仕事がないという状況に戻ってしまうんです。どんなに頑張ったって給料が上がらないという状況に戻ってしまう。それを単に、私の任期がこうだからこの中で収める、そういう判断は私はしませんでした。経済的にそれが正しいという時期を選んだわけであります。総裁任期によって判断を歪めてはならない。当然そういうご批判はあるだろうと思いました。

 しかし、例えば2020年のGDP黒字化目標というのも私の任期を超えている目標ではありますが、この目標にもしっかり叶う判断をしたところであります。この実現に向けた道筋を私の任期中にしっかりとつけていく、それが私の果たしていく責任であると考えたところであります。

 そして社会保障については、給付と負担のバランスを考えれば、10%への引き上げをする以上、その間、引き上げた場合と同じことをすべて行うことはできないということはご理解をいただきたいと思います。

 民進党のように赤字国債を発行して、その給付をすべて賄う、社会保障費をすべて賄うということは、私は無責任だと思います。赤字国債を財源に、社会保障の充実を行うような無責任なことは私たちは行いません。自民党と公明党の連立与党はそういうことは絶対にしないということを明確に申し上げておきたいと思います。

 しかし安倍政権の下で、子育て世帯を支援していくこの決意は揺らぎません。保育の受け皿50万人分の確保、来年度までの達成に向け、約束通り実施いたします。また、介護離職ゼロに向けた介護の受け皿50万人分の整備もスケジュール通り確実に進めていきます。さらに保育士、介護職員等の処遇改善など、一億総活躍プランに関する施策については、アベノミクスの果実の活用も含め財源を確保して優先して実施していく考えてあります。

 この3年半のアベノミクスによって、国・地方あわせて税収は21兆円増加しました。私がこの経済政策を進めたとき、税収がそれで増えていくと言った人は少ないと思います。私は必ず税収が増えていくとそう主張しましたが、随分それは批判にさらされました。そういう批判がありましたが、我々はこのアベノミクスを進めた結果、国・地方合わせて税収が21兆円増えたわけであります。

 ですから、この一事を見ても、私たちの政策が失敗したとは言えないと思います。民進党が失敗したというのであれば、共産党と一緒になって、替わりの政策を示していただきたいと思う次第であります。それはまさに逆戻りにつながっていく。

 しっかりとこの道を進んでいくことで私たちは、税収をさらに増やしていきたい。アベノミクスを一段と加速することによって税収を一段と増やしていきたいと考えているんです。そしてその果実も使って、可能な限り社会保障を充実させてまいります。いずれにせよ優先順位をつけながら、今後の予算編成の中で最大限努力していく考えであります。

――参院選の日程についてはどうお考えでしょうか?そして、消費税を再延期する決断にあたり、衆参同日選挙で国民の審判を仰ぐ考えはなかったのでしょうか?今回、衆議院の解散は見送ったものの、与野党内では安倍総理の対応に注目が集まっています。2018年の12月に任期満了を迎えるのをにらんで、次の衆議院選のタイミングをどういうふうに考えていらっしゃるのか、お考えをお聞かせください。

<安倍首相>
 まず参議院の投票日は7月10日といたします。公示日については沖縄の慰霊の日に配慮して6月22日といたします。これを明日、閣議決定いたします。そして、この参議院選挙の最大の争点は、まさにアベノミクスを力強く前に進めていくのか、あるいは後戻りするのか、これを決める選挙なんだろうと考えます。その中で国民の信を問う選挙でありますから、改選議席の過半数を自民党・公明党、与党で獲得すべく全力で選挙戦を戦っていく決意であります。

 そして同日選挙についてでありますが、先ほど国民の信を問いたいと申し上げましたが、今週に入って野党から内閣不信任案が提出されるということに至りました。その中において、内閣不信任案でありますから内閣は総辞職せよということなんだろうと。それは当然、岡田代表は、どういうわけかおっしゃらなかったんですが、解散を求めるという意味もあったのかなあと思いますから、その時に衆議院を解散することについて、私の頭の中を解散についてよぎったことは否定いたしません。

 しかし、熊本地震の被災地では、いまだ多くの方々が避難生活を強いられている中において、参議院選挙を行うだけにおいても、その準備でも大変なご苦労をお掛けしているという状況であります。こうしたことを考慮いたしまして、同じく国政選挙である参議院選挙において国民の信を問いたいと、このように判断したところであります。

 その中においては、参議院の全体の過半数であれば、前回勝利した分があります。大きなプラスがありますが、それは入れずに、信を問うというのであれば今回の改選議席の過半数、これは厳しい戦いになりますが、それを目標として定め、勝ち抜き、信任を得たいと決意したところであります。

 そして私の任期は18年12月ではなくて9月まででありまして、この任期の間に選挙をやるかどうか、今の段階では解散の「か」の字もないということであります。

――参院選の目標議席について伺いたいのですが、総理はいま目指すのは与党で改選議席という目標をおっしゃられましたけれども、以前は改憲勢力で3分の2を目指す考えも示されていたと思います。改めて今回の参院選で3分の2を目指すのかどうか、またこの3分の2を獲得した場合は、任期中に憲法改正の発議を目指すのかどうかお考えをお聞かせください。

<安倍首相>
 憲法の改正というのは、衆議院、参議院それぞれで3分の2、それはそう簡単なことではないということは従来から申し上げておりますし、例えば自民党・公明党、与党で3分の2をそれぞれ取ることは、私は不可能であると申し上げてきました。まさにそれは、憲法審査会において議論を進める中において、例えば逐条的な議論を進めていく中において、それだったら賛成しましょう、あるいはここをこう修文すれば議員が増えていくということになって、初めてその可能性が見えてくるわけであります。

 この選挙においても、我々は憲法改正草案を示していますが、これをやりますから3分の2になるために賛成する人誰ですかと募っているわけではありません。ですからそれはそう簡単なことではありませんし、いわば決意として申し上げているわけでありまして、選挙の勝負というのは常に、これは与党で過半数ではないでしょうか。そうでなければ、ではどちらが勝ったんだということになります。

 野党において、まったく政権から遠い状況でも勝ったのかということになってしまいますから、これは常識として、これは世界の選挙の常識だと思いますが、選挙で過半を取った勢力が、例えば衆議院においては選挙で過半を取った勢力が政権を担います。ですからそこが分岐点であるのは当然のことであります。それ以下であった政党が勝ったということ事態がおかしいのではないでしょうか。つまり、まさに勝負の起点はどこかと言われれば、過半数であろうと、このように思います。

 ですから私が再々いま申し上げておりますように、普通であれば参議院全体の過半数としては前回勝っておりますから、参議院というのは6年間という長いスパンでどちらか過半数を取るかということになりますから、既に私たちは前回60を超える議席をいただいておりますから、これを足し込んだもので過半数をということになるんだろうと思います。

 ですから、今度こういう形で消費税について、前回申し上げたことと違う新しいことを申し上げている中で信を問うということを申し上げていなければ、私は参議院全体での自民党・公明党で過半数を維持する、これを目標としていました。しかし今回はそうではなくて、まさにこの国政選挙で信を問いたいと申し上げておりますから、過半数を改選議席の中で取るという厳しい目標を掲げたわけであります。

――伊勢志摩サミットでは、中間層が経済的な利益を得られるような財政出動や投資を行うべきだという認識で共有されたわけなんですけれども、個人消費の伸びに力強さがないことに対して、中間層が細っているですとか、あるいは格差が拡大しているという批判がありますけれども、そういった指摘に対して総理はどのように受け止めてているか。また消費増税の延期と併せて、中間層を分厚くするための経済対策を講じる考えはおありでしょう?

<安倍首相>
 サミットにおいても中間層の重要性について議論がありました。私からも中間層は重要である、中間層を重視していかなければ、いわば社会の安定性を確保していくためにも中間層が必要であるという趣旨のことを申し上げたわけであります。その考え方の下に、私たちも今まで政策を進めてまいりました。

 三本の矢によって、もはやデフレではないという状況を作り出すことができました。その中で、例えば非正規で働く方々の正社員化や、最低賃金を3年連続で上げたことによって、先ほどパートの時給が最高になったと申し上げましたが、これは3年間連続で、15円、16円、18円と高い水準で最低賃金を引き上げた結果、パートの時給が過去最高となった。今後も、中間層が将来に期待を持てるようにするために、財政支出や民間投資が重要であるといった指摘がありました。まさにその通りだと。そのために、我々は一億総活躍社会の実現を目標に掲げて、教育費の負担軽減や子育て、介護と仕事を両立できる環境整備に力を尽くしているわけです。

 こうした我が国の取り組みを踏まえて、私から各国首脳に対して、人材育成や教育といった分野への官民のさらなる投資にコミットすることを訴えました。成長を社会のすべての層の利益となることの確保や人材育成、教育等の経済成長に資する分野への、さらなる投資が合意されたわけであります。

 今後、G7の合意も踏まえまして、このG7の合意は先ほども申し上げましたように中間層が大切である、そのために一億総活躍社会を進めている、その中のまさにエッセンスについて、これをG7の合意として書き込んでいくべきだということが合意されて、いま申し上げたことが入り込んだわけでありますが、その合意も踏まえて同一労働同一賃金の実現による非正規雇用のさらなる処遇改善や保育士・介護士の処遇改善、保育・介護の受け皿の整備や奨学金制度のさらなる拡充など、一億総活躍社会実現に向けた施策を進めていきたい。

 一億総活躍社会というのはみんなが活躍できる社会であります。であるからこそ、その結果は間違いなく、それを進めていけば、中間層はより厚くなり、そしていわば欧米で起こっているああした一部の人たちに富が集中する、一部の人にしか機会がないという社会ではなくて、みんなにチャンスがある社会を作っていく、みんなに機会がある社会をつくっていく、みんながそれぞれ才能を活かしていくことができる社会を作っていくということが、我々が進めている一億総活躍社会であり、まさに今回の伊勢志摩サミットで指摘された議論は、我々が進めてきた議論、やるべき政策と方向性の一致するものであったと、このように思っています。

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