[用語解説]総選挙、公示、告示
参院選も実は「総選挙」だった? (2016/3/28 政治山)
4月24日投開票の2つの衆院補欠選と、7月10日投開票が有力視されている参院選。それぞれの選挙戦がスタートする立候補届け出の受付日は公示日?それとも告示日?
同じ国政選挙でも補欠選挙は「告示」に
こんな質問をされて即答できる人は少ないのではないでしょうか。国政選挙は一律「公示」です!――と言いきることができれば憶えやすいのですが、国政選挙でも補欠選挙の場合は「告示」になるので、前者が告示日で、後者が公示日となります。
憲法7条に謳う「総選挙」は参院選も含む
衆議院の総選挙と参議院の通常選挙は、天皇の国事行為として行われるため「公示」と呼ばれ、そのほかの選挙は選挙管理委員会が行うため「告示」と呼ばれます。憲法第7条には「天皇の国事行為」が明記されており、その一つに「国会議員の総選挙の施行を公示すること」とあります。つまり、公示とは「国会議員の総選挙」についてのみ使われることになります。
ん?おかしいですね。総選挙は通常、衆議院議員選挙のことを指すはず……ところが、参議院議員選挙も公示と言います。
実は、憲法第7条に謳う「総選挙」は、全国で行われる国政選挙のことを指すので、半数改選である参院通常選挙も「公示」になります。
私たちが普段、衆院選を指す意味で使っている「総選挙」は、公職選挙法でいう衆院総選挙のことであり、憲法で使われている「総選挙」とは範疇が異なることになります。
憲法や法律にも浸透している「あいまい文化」
総選挙も公示も告示も、線引きがいま一つ腹にストンと落ちないのはこうした矛盾があるためだと思われます。白黒(当落)がはっきり決まる選挙が、はっきり定義できない文言で規定されているというのは、日本語や日本人のあいまい文化の大らかさであると同時に、何も決められない国民性を象徴しているようにも見えます。
- <著者> 上村 吉弘(うえむら よしひろ)
株式会社パイプドビッツ 政治山カンパニー 編集・ライター
1972年生まれ。読売新聞記者、国会議員公設秘書の経験を活かし、永田町の実態を伝えるとともに、政治への関心を高める活動を行っている。