難民から見た“鎖国”日本 (2015/9/29 フリーライター 上村吉弘)
シリアなどからの難民がヨーロッパ各国に殺到している問題で、ドイツには今年だけで約80万人が到着する見通しですが、メルケル首相は受け入れに寛容な姿勢を見せています。
いまや欧米最大の関心事
海岸に打ち上げられた少年の遺体写真が世界に衝撃を与え、イギリスのキャメロン首相は1万5000人の受け入れを表明し、アメリカも2017年度から年間10万人を受け入れる方針を表明しました。アメリカは毎年7万人の難民を受け入れていますが、中東からの難民受け入れに関してはテロへの警戒もあり、これまでは少数にとどまっていました。
欧州委員会では各国の難民受け入れに関し、義務的な割り当て制度を提案していますが、フランスやドイツほどの経済的余裕がないポーランドやチェコ、スロバキア、ハンガリーなどの旧東欧諸国は抵抗しており、難民増加はいまや国際的な人権問題として世界が頭を抱える問題になっています。
翻って、日本はどうでしょうか。メディアの関心は安保法制に偏り、中東や欧州の惨禍を大きく報じる様子は見られず、国民も別世界の出来事と感じているかもしれません。
難民対策に消極的な法務省
法務省によると、昨年、日本に難民認定を申請した5000人のうち実際に認定されたのは11人です。うち5人は異議申立てにより認定された方々です。ほとんど認定されない一方で、申請者数は2010年の1202人から増え続けています。シリア人の難民申請も60人以上います。法務省は申請が急増する中で、就労目的の偽装難民対策を強化する方針を公表しましたが、受け入れ拡大については検討課題にとどまっています。
世界の難民数は5100万人。日本の人口の半数近くが世界のどこかで安住の地を求めてさまよっています。
かつて、「人の命は地球より重い」と語った総理大臣がいました。
一国だけの平和ではなく、国際的な平和に貢献するために、日本の“鎖国”状態に向き合うべき時ではないでしょうか。
(参考)平成26年における難民認定者数等について(法務省 報道発表資料)
- <著者>
上村 吉弘(うえむら よしひろ) フリーライター
1972年生まれ。読売新聞記者、国会議員公設秘書の経験を活かし、永田町の実態を伝えるとともに、政治への関心を高める活動を行っている。
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