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【衆議院議員選挙2014】

衆議院解散から立候補するまでの知られざる戦い (2014/12/11 東京大学大学院情報学環交流研究員 本田正美)

選挙期間は公示日から投開票日の前日まで

 現在、公示日である12月2日から始まった衆議院議員選挙が行われている。14日には投開票が行われて、衆議院の議席が確定する。この公示日から投票日の前日までが選挙運動を行うことのできる選挙期間とされている。

 投票日は選挙期日とされ、この日に選挙運動を行うことは基本的に禁止されているのだ。例えば、投票所の近くに選挙事務所が置かれた場合、選挙期日には看板を撤去する必要があるといった制限も課されている。もちろん、選挙カーも基本的には走らせることができないから、投開票日は静かになる。それでも、投開票の日に、どこかの陣営から「投票に行ってください」という趣旨の電話を受けた経験を持つ方もいるだろうが、あの電話もあくまでその日が投票日であるという事実を告げるだけで、特定の候補者を応援していることを匂わすものの、その候補者への投票を直接依頼しないように巧妙な言い回しが選ばれているはずである。

 選挙期間に候補者は当選へ向けて全力を尽くすことになるのだが、実はこの選挙期間前にも、各陣営の事務所関係者は「選挙戦」を戦うことが強いられていることは知られていないのではないだろうか。

選挙に立候補するにはまずは立候補予定者説明会に参加する

 解散となると、まずは各都道府県で立候補予定者説明会が実施される。多くの場合、各都道府県の選挙管理委員会(選管)が各政党に説明会の日時を連絡し、政党を通じて各陣営にも知らせが伝わるようになっているようだが、最近では各都道府県の選管のWebサイトでも開催日が公開される。

 立候補しようとする者は、基本的にこの説明会に足を運ぶ必要がある。ただ、実際に候補者本人が説明会に足を運ぶことは、国政レベルでは数少ないと言っていいだろう。秘書や後援会の幹部、政党の関係者が候補者の代理として、説明会に出席する。

 この説明会では、立候補に必要な各種手続や選挙期間中の運動における注意点などが説明される。説明会に出席しなくても立候補することは可能だが、説明会の場で立候補に必要な書類も手交されるため、少なくとも政党に所属しているような候補者の陣営は確実に出席をしている。場合によっては、候補者が未定であっても、政党の関係者が「候補者未定」として参加することもある。

 ここで各陣営がおおかた出揃うことから、マスコミ各社も説明会に詰めかける。政党に所属せず、突然立候補表明するような人も、この説明会には参加することが多いことから、この場でマスコミは各選挙区の候補者のおおよその戦いの構図を予想立てすることができるとも言える。

立候補予定者説明会で配付される資料。立候補するにあたって必要な手続きや、注意しなければならないことが記載されている。

立候補予定者説明会で配付される資料。立候補するにあたって必要な手続きや、注意しなければならないことが記載されている。説明会が開催された後は、選管窓口でも配付している。

立候補の届出書類は、セレモニー的な意味合いがある

 説明会に出席すると、立候補の届出時に必要な各種の書類が手交される。各候補者の陣営の事務担当者などは、この書類の作成に追われることになる。

 公示日には、立候補の届け出が行われたというテレビニュースが放送されるが、実は、大半の候補者の陣営は、既に選管が確認済みの書類をセレモニー的に届出時に担当者に渡しているに過ぎない。説明会で必要書類を受け取った各陣営は事前に立候補に必要な各種書類を揃え、各選管の事前審査を受け、いわば届出書類の完成品を事前に準備完了させており、公示日には、その書類を持って行っているだけなのだ。そのため、立候補の届け出自体はそれほど時間がかからずに完了する。

 もちろん、選挙公報やNHKなどで流される政見放送も事前に準備がなされる。そのため、公示日当日に思い立って立候補しようと思えば、もちろん立候補は可能だが、実際にはさまざまな活動で「出遅れる」ことになる。そもそも、公示日1日で必要な事務手続きを済ませるのは容易なことではない。

立候補の届出順はクジ引きで

 立候補の届出順を決めるために、クジ引きが行われる。届出順で公設のポスター掲示板に貼るポスターの場所が決まり、新聞などの報道も届出順となることから、この順番を気にする陣営は多い。公示日の午前8時30分から立候補の届け出の受付が開始される。それよりも前に届け出の会場に来た陣営については、まず仮受付が行われる。そして、午前8時30分までに仮受付をした順に、届出順を決めるクジを行うための予備のクジ引きが行われる。

 予備のクジは、番号が先端に書かれた棒を引く形式で行われる。その後、届出順を決める本クジとなるのだが、その方式はいく通りかあるようだ。縁あって、何度か届け出のクジ引きに立ち会ったことがあるが、まず一つ目の例は、予備クジに書いてあった番号を各陣営の番号として、その後、番号の書かれた球を抽選機に入れて抽選し、出た番号の順に届出順とする方式だ。もう一つの例は、予備クジに書かれていた番号順に、改めて番号の書かれた棒を引いていく形式である。この場合、本クジで引いた棒の先に書かれていた番号がそれを引いた各陣営の届出順となる。

 届出順が決まると、その順に各陣営が準備の完了している書類を提出する。そして、受理されると、選挙事務所に掲げる必要のある選挙事務所標礼などのいわゆる「選挙の七つ道具」が選管から配布され、選挙戦がスタートするのである。

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本田正美氏【取材協力】
東京大学大学院情報学環交流研究員 本田正美

1978年生まれ。東京大学法学部卒。2013年、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。現在、東京大学大学院情報学環交流研究員。専門は、社会情報学・行政学。特に電子政府に関する研究を中心に、情報社会における行政・市民・議会の関係のあり方について研究を行っている。共著本に『市民が主役の自治リノベーション』(ぎょうせい刊)がある。
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