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年間20分?「討論」を制限する渋谷区議会 (2014/9/26 政治山)

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 議会は、議員がそれぞれの意見を戦わせ、最後は結論を出す場です。議員が意見を表明する場面の1つとして、「討論」の場があります。その時間を制限しようとする動きが東京都の渋谷区議会でありました。この件について、東京大学大学院情報学環交流研究員の本田正美氏に聞きました。

渋谷区役所

渋谷区役所

議会で行う「討論」とは?

――まず、討論とは、どのようなものなのでしょうか?

「討論とは、議会の本会議や委員会で議案などが表決に付される際に、その案件に対して議員が賛成か反対の意見を表明することを指しています。それぞれの立場を明確にして行われるものなので、賛成か反対の討論しかありません。対して、議員間で自由に意見を戦わせることを指すのが討議です。議会では、討論と討議が分けて考えられています」

――討論では、意見を戦わせるわけではないということでしょうか?

「その通りです。討論の場面では、議員同士が議論を交わすわけではありません。それぞれの立場の議員が賛否の理由を述べることで、他の議員に自らの意見に同調するよう求める。これが討論にあたります。国会や地方議会では、議事日程に記載された案件に対して討論しようとする議員は、通告を行った上で討論をすることとされています」

討論を制限しようとする渋谷区議会

――このほど、東京都の渋谷区議会が討論を制限しようとしているとの報道がありました。

「渋谷区議会の議会運営委員会が1人の議員の討論時間を年間20分に制限すると決めたと伝えられています。議会の運営について定める会議規則を正式に変更するのかどうかは不明ですが、議会運営委員会で決められたということで、何らかの形でそのような制限がなされることになるのは確実でしょう。他の議会でも全会一致で賛成の案件では討論が行われないこともありますし、1回当たりの討論の時間に制限があるところはありますが、1人当たりの年間の時間を制限するということは極めて異例と言えます」

――なぜ1人当たりの討論の年間時間を制限するのでしょうか?

「渋谷区議会の場合は、特殊事情があります。それは、各会派の人数に応じて、本会議での質問時間を制限するということを行っており、少数会派や1人で活動する無所属議員は質問をする機会が極めて限定されてしまっていることです。質問を制限されている議員にとって討論は自身の意見を表明する貴重な場であり、討論を利用して質問では十分に行えない議論をしていたと思われます。そのような中で、議題とは関係のない討論が行われているとの問題提起があり、制限を加えるということになったようです。討論までも1人当たりの年間の時間制限をしようというのですから、一定規模以上の会派に所属していない議員には議会で発言をさせないと言っているに等しいと思います」

――討論の時間を制限する渋谷区議会としては、今後何を行うべきでしょうか?

「議会で審議される議案には賛否が分かれるものもあるはずですが、表決に際して行う討論を制限してもよいと考える議員が多数派を占めているということですから、議案に対する賛否など明らかにせず、すべて通していけばよいというのが渋谷区議会としての意思であると思われてしまいかねません。議会における議員間の自由な討議を促進するというのが今般の議会改革の流れです。討論を制限するのであれば、議案の表決の前に、議員間の闊達な討議を行うべきです」

本田正美氏【取材協力】
東京大学大学院情報学環交流研究員 本田正美

1978年生まれ。東京大学法学部卒。2013年、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。現在、東京大学大学院情報学環交流研究員。専門は、社会情報学・行政学。特に電子政府に関する研究を中心に、情報社会における行政・市民・議会の関係のあり方について研究を行っている。共著本に『市民が主役の自治リノベーション』(ぎょうせい刊)がある。
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