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議場を飛び出せ!全国で広がる住民と地方議会の対話 (2014/6/5 政治山)

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地方議会と住民が対話を行う場となる議会報告会の開催が全国各地で広がっています。この議会報告会について、東京大学大学院情報学環交流研究員で、電子政府について研究をしている本田正美氏に伺いました。

埼玉県所沢市議会の「議会報告会」の様子 (早稲田大学マニフェスト研究所提供)

埼玉県所沢市議会の「議会報告会」の様子(早稲田大学マニフェスト研究所提供)

議員の個人活動ではなく議会活動を報告する

――議会報告会とはなんでしょうか。

「議会報告会とは、定例会の開催後などに議会の主催により実施されるものです。具体的には、議員が会場に集まった住民に対して議会での議論や議決を説明し、議員と住民の意見交換を行うものです。一人ひとりの議員が支援者向けに行う活動報告会とは異なり、議会をあげて開催されるところに特徴があります」

――議員の活動報告とはどのような違いがありますか。

「議会をあげてということは、各議員にはそれぞれの立場や意見があるなかで、その立場を越えて、議会で議論されたことや議決されたことを住民に議員が示すということです。一人ひとりの議員の自己宣伝ではなく、議会として、どのような議論を行い、どのような結論を出したのかを住民に伝える。重要視されるのは、議会としてその活動を住民に対して報告することです」

――いつごろから広まった取り組みでしょうか。

「北海道の栗山町議会が2006年に議会基本条例を制定して注目を集めました。この条例制定の契機となったのが、2005年の同町における議会報告会の開催であったとされています。議会基本条例の制定が注目を集めると同時に、具体的な取り組みとして議会報告会の実施も注目され、議会基本条例制定と議会報告会実施がセットで各地に広まっていったと言えるでしょう」

事実上廃止をしてしまった長崎県議会

――地方議会というと、議場に集まって議員が議論するというイメージがありますが、議会報告会はどこで開催されるのでしょうか。

「各地の公民館などを会場として開催されます。議会報告会は、議会が地域に飛び出していく取り組みであるとも言えます。次の選挙に備えて、議員個人での地域活動に重きを置く方が多いのも事実ですが、このように議会をあげた地域での活動ということも本来は重要なのです」

――前回の取材で、長崎県議会の通年議会の廃止についてお話をしていただきました。その際に、次の選挙に向けて地域活動を優先したい会派の議員が通年議会の廃止に動いたと指摘されましたが、議会報告会にも影響はあったのでしょうか(参考「わずか2年で廃止になった通年議会、その背景にあるものとは」)。

「長崎県議会は、議会基本条例第8条に基づき、広聴広報協議会を設置し、この協議会が企画・運営して議会報告会「語ろうで県議会」を開催してきました。しかし、通年議会の廃止と合わせて、この広聴広報協議会も自民党会派により廃止されてしまいました。議会をあげての地域での活動も否定されてしまったのです。この事実を見ても、長崎県議会の場合、一部の会派の議員が選挙のために自身の地域での活動を優先したことが明らかであると言えるでしょう」

――議会報告会の実施は全国的に広がっているようですが、長崎県議会のような例は稀なのでしょうか。

「事実上廃止してしまった長崎県議会は稀有な例と言えるでしょう。議会基本条例を制定し、議会報告会の開催についても規定しながら、実際には開催しないという議会もありましたが、最近では着実に実施例が増えています。北は栗山町議会をはじめ北海道の複数の議会から、南は最近第3回を開催した那覇市議会など沖縄の議会まで、全国で議会報告会が開催されています。流山市議会のように、常任委員会ごとの班分けを行い、会場別にテーマを分けて住民と意見交換を行うという取り組みも見られるようになっています。今後は、様々な工夫が加えられた議会報告会が開催され、議会による地域での活動も充実していくことになるでしょう」

本田正美氏【取材協力】
東京大学大学院情報学環交流研究員 本田正美

1978年生まれ。東京大学法学部卒。2013年、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。現在、東京大学大学院情報学環交流研究員。専門は、社会情報学・行政学。特に電子政府に関する研究を中心に、情報社会における行政・市民・議会の関係のあり方について研究を行っている。共著本に『市民が主役の自治リノベーション』(ぎょうせい刊)がある。
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