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みんな渡辺代表の8億円が政治資金だった場合に守るべき法律 (2014/4/1 政治山)

 みんなの党の渡辺喜美代表が、化粧品会社DHCの吉田嘉明会長から8億円を借り入れた件が連日報道されています。記憶に新しいところでは、前東京都知事の猪瀬直樹氏が医療法人「徳洲会」から5000万円を借りて騒動となり、辞任に追い込まれる事態になりました。遡れば問題発覚当時に民主党代表だった小沢一郎氏も、自身の資金管理団体「陸山会」の借入金問題で代表を辞任しています。

 何度も繰り返される政治とカネの問題。そこで、政治活動資金について、東京大学大学院情報学環交流研究員の本田正美氏に伺いました。

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政治活動のお金は政治資金規正法で規制

 そもそも何が問題となっているのでしょうか。

「渡辺代表は個人的な借り入れと主張する一方で、貸した側は選挙のために必要な資金だと思って貸したと言っています。選挙に限らず、政治活動全般に必要な資金として借り入れたのか、あくまで個人的に使用する資金として借り入れたのか。まず、ここが重要な論点になります」

 どうして、政治活動のための資金かどうかが重要になるのでしょうか。

「政治活動を行う際に使う資金については、政治資金規正法によって規制されているからです。『政治団体及び公職の候補者により行われる政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため』と政治資金規正法の目的には書かれています。基本的に、政治家が政治活動をしようとする場合には、政治団体を設立して、総務省か各都道府県の選挙管理委員会に届け出をすることになっています。そして、毎年、その政治団体は収支報告書を提出することが義務付けられているのです。もし政治活動のために資金を借りたのであれば、この収支報告書に借りた旨の記載をする必要があります」

 政治資金収支報告書に記載していないと、何か問題があるのでしょうか。

「政治資金規正法に基づき、罰則があります。小沢氏の事件はまだ係争中ですが、政治資金収支報告書の記載に偽りがあったとされ、秘書3人が有罪とされました。政治活動に関係ない個人的な借り入れであるとして、政治資金収支報告書に記載をしないとすれば、何か後ろめたいことがあるのではないかと道義的な責任を追及されることにもなります。もちろん、金額が大きくなれば、何らかの利権とつながりがあるのではないかと、その出所も問題とされます」

選挙期間中に使用したお金は「選挙運動費用収支報告書」の提出が義務

 選挙直前に借り入れたということが注目されていますが、この点については何か理由があるのでしょうか。

「政治資金規正法とは別に、公職選挙法の規定にも抵触する可能性があるからです。というのも、選挙期間中に使用できる金額に上限があり、なおかつ、選挙時に使用した金銭については選挙運動費用収支報告書の提出が義務付けられているからです。もし、選挙のために借り入れて使用した金銭であるとしたら、その報告書の記載にも漏れがあるかもしれません。もちろん、公職選挙法も違反すれば、罰則があります」

 政治資金収支報告書とは別に選挙運動費用収支報告書の提出が必要なんですね。

個人的な借り入れでも資産公開は義務、ただし罰則はなし

 渡辺代表は個人的な借り入れであると強調していますが。

「個人的な借り入れであれば、確かに政治資金収支報告書や選挙運動費用収支報告書に記載する必要はありません。しかし、国会議員については、当選後に資産公開をすることになっています。もちろん、借入金も公開の対象です。8億円もの多額の借り入れがあったのであれば、当然、資産公開時に、きちんと借り入れがあることを明らかにしなければなりません」

 資産公開の内容を偽った場合はどうなりますか。

「国会議員の資産公開では、選挙当日時点での資産を公開することになっています。今回の渡辺代表の場合、選挙直前に借り入れているようですから、資産公開で届け出た内容を修正して幕引きを図りたいところでしょうか。政治家の資産公開については、たとえ偽りがあったとしても、罰則などはありませんし、そもそも保有する普通口座については公開する必要がないなど、制度として不十分なところもあります。いわば抜け道がある状態です。ですから、今後もこのように、政治活動や選挙に使ったとは言わずに、個人的に使ったとして、多額の資金の流れを明らかにしないという問題が常に起こる可能性があると思います」

本田正美氏【取材協力】
東京大学大学院情報学環交流研究員 本田正美

1978年生まれ。東京大学法学部卒。2013年、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。現在、東京大学大学院情報学環交流研究員。専門は、社会情報学・行政学。特に電子政府に関する研究を中心に、情報社会における行政・市民・議会の関係のあり方について研究を行っている。共著本に『市民が主役の自治リノベーション』(ぎょうせい刊)がある。
関連リンク
政治山「2010年分の政治資金収支報告書の関連まとめ」
政治山「政治家のお金の遣い方で是非が問われているもの~2010年分政治資金収支報告書より」
Yahoo!ニュース「政治資金」
Googleニュース「政治資金」
総務省「政治資金」
総務省「みんなの党 政治資金収支報告書(平成24年分 定期公表)」
温故知新の会(平成24年分 定期公表)pdfファイル
渡辺美智雄政治経済研究所(平成24年分 定期公表)pdfファイル
本田正美氏の記事
市民が議員を評価する(前編)「私の議会の質問を評価してください」(2014/4/8)