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【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】

第3回「議会報告会は参加者が少ないからやる意味がない?~インフラとして地方議会試論」(2012/09/19 所沢市議会議員 桑畠健也/LM推進地議連)

ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟 連載・コラム

 政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。9月5日からは、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を開始しています。第3回目は、埼玉県所沢市議会の桑畠健也氏による「議会報告会は参加者が少ないからやる意味がない?~インフラとして地方議会試論」をお届けします。

◇        ◇        ◇

 埼玉県所沢市は、西武線のターミナル駅があり、東京のベットタウンとして発展した。現在の人口は約34万人。議員定数は、36名。

 ご多分に漏れず、所沢市議会に対する風当たりが厳しい。定数削減や報酬削減を求める住民の風圧をひしひしと感じることが多い。定数削減議論は、少数精鋭主義を経て、突き詰めていけばついには、「議会無用論・不要論」の地平に辿りつく。

本当に地方議員はいらないのか?

 地方議員選挙は、政令市や一部の市を除き、大選挙区制である。にもかかわらず、実態としては「擬似小選挙区」の色合いが強い。そもそも行政や学校が、成人式や卒業式などの地区の行事に招待する議員を限定することで、区割りを行っていると言える。地方議員の役割は、自分の出身地区のために汗をかくことが第一義とされていたことの証左ともいえよう。ところが、下水道や道路、公園などの整備が進んだ地区では、大きな要望は減ってきている。

 一方で、財源も枯渇しつつあり、これまでのように、地方議員が地区に対して成果を上げることも難しくなってきている。従来型の「資源のぶん捕り合戦の尖兵」としての地方議員の役割が見えにくくなっているのだ。そうすると、「地方議員は何もシゴトをしていない」と感じる住民が増えてくる。

 資源分配のシゴトがなくなれば、本当に地方議員はいらないのだろうか。その問いに答えるために、地方議員のあり方を「機能論」と「存在論」の両面から捉えていく必要があるだろう。

地方議員を機能から捉える

 機能論の観点からすると、資源をぶん捕ってこないとなれば議会開会中だけがシゴトと見なされ、日給換算で「報酬が高い」という議論に行き着く。機能論の議論を突き進めていけば、例えば、行政の監視機能については、監査委員制度やオンブズマン制度を充実すればよいし、民意の反映ということであれば、これだけITインフラが整っているのだから、インターネットアンケートや、パブリックコメントなどで事足りるという考え方も成り立つ。「いや、議会の機能はじっくり議論することにある」となれば、最近では「DP(熟議型世論調査、注1)もありますよ」と切りかえされるだろう。立法機能を強調したところで、実際は、議員立法は理念型条例(注2)が中心で、まだまだ立法自体が主流ではない。

 誤解のないように断っておくが、私は地方議員として、議会の監視機能や民意反映機能、立法機能について、コストに見合うだけの成果を上げていると評価している。しかし、私も地方議員になってみてようやく理解できたほどであるから、地方議会に関心のない住民に機能論の面からご理解いただくことの困難さは想像するに難くない。

民主主義のインフラとしての地方議会論

所沢市議会議委員・桑畠健也氏 所沢市議会議委員・桑畠健也氏

 そこで最近、例に出しているのが議会の「存在論」、つまり「“インフラとしての議会”論」である。私はある種、議会は住民にとっての民主主義を保障するインフラだと思っている。

 所沢市議会へ視察にお見えになる地方議会の方々から「議会報告会に人が集まらないために、議会報告会を推進している議員が大変困っている」と相談される機会が多いからだ。機能論からすれば、住民の参加が少ない議会報告会は、その意味を否定される。もちろん、多くの住民の参加があるよう努力することは言うまでもないが、議会報告会は住民に対する一種の制度保障である。パブリックコメントでも、「寄せられる意見が少ないからダメな政策だ、だから止めよう」という議論にはならない。なぜなら、パブリックコメントも制度保障であり、住民の行政参画のためのインフラだからだ。議会報告会も、回数を重ねるごとに運営についての経験が積み上がっていく。

 普段はそれほど住民が参加しないとしても、いざ大きな争点が持ち上がった場合に、議会はインフラとしての議会報告会を有することで、それまでは多分、不可能であった、即時に数百人規模の住民集会開催が可能となる。だから、止めてはいけないのだ。例えば、消防や警察、自衛隊などは出動回数が少なかったり、戦争が少ないことをもってムダだと非難する人は多分いないだろう。なぜなら、存在そのものが抑止力となっているからだ。

 もし行政を監視する議会がなかったとしたら、市長や知事などの首長はやりたい放題だ。議会が存在することで、首長に対して事前抑止が働く。議会という場で不正不実を追求される可能性があるだけで、恣意的な行政へのけん制となるのだ。

 仮定の話として、どこかの自治体が、議会をなくしたとしよう。その後、やはり必要だとなった場合、再び議会を興すには相当のコストを覚悟する必要があるだろう。議会に対する批判は簡単だが、表面的な批判は、結局は住民の利益を損なうことになる。私は、歴史的に持続してきた制度や慣習をひとまず是とする保守主義の観点からも、議会制度という存在を機能論や合理性のみで割り切っていく考え方はおかしいと考えている。

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(注1)DP(熟議型世論調査)…deliberative pollのこと。討論型世論調査とも。[記事に戻る]

(注2)理念型条例…議員が提案するもののうち、報酬や定数の改定、議会の運営など予算を伴わない条例のこと。逆に、予算を伴い、県民の生活に直接かかわる条例を、政策条例と言う。[記事に戻る]

著者プロフィール
桑畠健也(くわはた・けんや):1964年北海道旭川市生まれ。(財)松下政経塾第9期生、同研修部主担当を経て、2004年4月より埼玉県所沢市議会議員。現在3期目。博士(農学)。
HP:くわはた健也(くわけん)
Twitter:@kuwahatakenya
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