【早大マニフェスト研究所連載/週刊 地方議員】
第11回 議会改革先進事例の紹介(5)
住民の意見をほったらかさない議会:塩尻市議会(2012/09/28 早大マニフェスト研究所)
政治山では、ローカル・マニフェストによって地域から政治を変える活動を行っている「早稲田大学マニフェスト研究所」(所長:北川正恭早大大学院教授)と連携し、「議会改革」と「マニフェスト」をテーマに連載をスタートしました。「議会改革」をテーマにした「週刊 地方議員」の連載では、研究所の調査結果をもとにして議会改革の最新事例を紹介しながら、議会本来の役割について考えていきます。第11回は「議会改革先進事例の紹介(5) 住民の意見をほったらかさない議会:塩尻市議会」をお届けします。
政治不信、政治家不信の要因
「選挙の時だけ美辞麗句を並べて、当選後は何もしないではないか」「住民の意見に耳を傾けますと言って話を聞くのはいいが、その後なんの連絡もない」……。このように腹を立てている住民の方の意見を聞いたことはないでしょうか。また、政治家なんていい加減なもので「選挙の時だけだよ」って心の中では思っている方もいらっしゃるかもしれません。
「選挙の時だけ」とか「聞いて帰った後、何も返事がない」という“その場しのぎ”の“ほったらかし”状態は、政治不信を増大する大きな要因です。これまでの議会議員は逃げ道を作るのがとても上手でした。例えば、住民から「あれどうなったのですか」と追及されると、「ええ、行政の職員には伝えてあるのですけどね」と言っておけば、怒りの矛先を役所側へ向けることができたからです。しかし昨今、そんな無責任な姿勢は通用しなくなり、議会改革を進めている議会は議会自らの責任も考え始めるようになってきています。
議会報告会の住民意見を調査・公表
長野県塩尻市議会では、議会報告会の際、住民から出た意見をすべて「調査票」に取りまとめ、後日、執行部側に意見をぶつけて調査します。その後、現段階でどのように課題が処理されているか、今後どのような対応を講じていくのかについて、調査票を埋めて議会ホームページで公表しています。(参考:塩尻市議会ホームページ)
この取り組みを始めたのは2012年からですので、議会も市民も行政も、まだまだ試行錯誤を繰り返しての段階であるとは言えます。しかし、住民意見を“ほったらかさない”この取り組みは、他の議会も大いに学習されるべき点ではないでしょうか。
今後の議会への期待
議会報告会で住民から出される意見は「行政への要望型」「政策提案型」「その他」と大きく三分類できるのではないでしょうか。住民意見も「要望型」から「政策提案型」へと変化していただくことにも期待しますが、こうした意見の中には、その地区(地域)特有の課題もあれば、実は全地域に共通する課題、という場合もあるでしょう。
今後、そのような市域全体の共通課題については、議会として行政へ対応を確認するのにとどまらず、どうすればこの課題を解決することができるかを議会の中で考え、議会が政策をつくりだし、議会へ提案・決定・解決していく、いわゆる「政策提案型・課題解決型」の議会へと進化していくことが期待されます。
- ■早大マニフェスト研究所とは
- 早稲田大学マニフェスト研究所(略称:マニ研、まにけん)。早稲田大学のプロジェクト研究機関として、2004年4月1日に設立。所長は、北川正恭(早大大学院教授、元三重県知事)。ローカル・マニフェストによって地域から新しい民主主義を創造することを目的とし、マニフェスト、議会改革、選挙事務改革、自治体人材マネジメントなどの調査・研究を行っている。