NYの視点:米国大統領就任式演説、ドルや税制改革への言及に焦点 株式会社フィスコ 2017年1月20日
米国の大統領就任式で、トランプ氏が第45代アメリカ大統領に就任する。大衆主義者、ポピュリストとされるトランプ氏は様々な慣習を破った。トランプ政権にはひとりもラテン系メンバーが採用されなかった。過去30年間で初めて。また、「大統領がドルの水準に関して言及を避ける」という最近の伝統に反し、ウォールストリートジャーナル紙とのインタビューの中で、「ドルが強すぎるため、米国企業が中国の企業と競争することは不可能」と言及。中国当局による人民元安を抑制する措置に対しても、「見せかけの行動」だと一蹴した。
一方、トランプ次期大統領が大統領顧問として起用することを発表したヘッジファンドのスカイブリッジ・キャピタル創業者スカラムッチ氏もスイス、ダボスの世界経済フォーラム(WEF)年次総会で、「我々はドル高に注視する必要がある」との姿勢を示すとともに、トランプ政権の成長を主軸にした政策で「経済が十分に強まり、ドル高にも耐えうる」と加えている。
また、トランプ次期米大統領から財務長官に指名された投資家のスティーブン・ムニューチン氏は上院財政委員会の公聴会において、トランプ氏のドルに関する言及が「長期的な見解ではない」と弁明。「米国ドルは長年にわたり最も魅力のある通貨で海外から米国に投資を呼び込んでいる」とし、「ドルの長期的な強さは重要だ」と強調した。「強いドルは国益にかなう」との従来の方針に変更がないことを示唆。ただ、定番となっている文言を使用しなかったため、「ドル政策も今までの慣習を破るのでは」との懸念が完全には払拭しなかった。
*ムニューチン米次期財務長官候補(上院財政委員会の公聴会)
■ドル
「米国ドルは最も魅力のある通貨」
「ドルは非常に強い」
「ドルの長期的な強さは重要」
「トランプ次期大統領のドルに関するコメントはおそらく短期の見解」
■貿易
「トランプ次期大統領は自由で公平な貿易を模索している」
■中国
「為替の人為的操作は国際商取引法に違反」
「中国が為替操作を実施したら、為替操作国に認定へ」
■税制改革
「トランプ次期大統領は成長推進の税制計画を持っている」
「税制改革はGDP成長押し上げに重要」
「税制の簡素化は不可欠」
「トランプ次期大統領の米国の低成長への懸念を共有」
「税制改革はGDP成長押し上げに重要」
20日に予定されている大統領就任式での演説では、国境税(border taxadjustment) やドルの政策に焦点が集まりそうだ。border tax adjustment は共和党下院が推進している政策。導入されるとドルが15%上昇すると見られている。トランプ氏は選択肢のひとつとしているものの「複雑すぎる」との見方も示している。同氏は現状35%の法人税を15%に引き下げることを提案していた。
トランプ次期大統領の強みは、誰もが同氏の能力を過小評価していること。就任後にドルが上昇、ダウも心理的節目の20000ドルを試す動きを再開する可能性もある。
<SK>
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