【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(1)◆もしトラ相場は終焉か◆ 株式会社フィスコ 2016年11月13日
○米大統領選後も手探りか○
数年前ブームとなった「もしドラ」(もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら)をもじって、トランプ旋風は『もしトラ』と呼ばれてきたが、直前まで波乱に満ちた攻防はいよいよ審判の時を迎える。選挙後も法廷闘争などにもつれ込むとの見方もなくはないが、米国変節の印象で方向性を模索することになろう。
6日、コミーFBI長官は米議会に書簡を送り、新たなメール問題は調査の結果、「7月に出した結論(訴追を求めない)を変えなかった」とした。これを受け、『もしトラ』相場の代表的存在のメキシコ・ペソは1.8%高。4日のNY相場でも一時1.2%高と切り返し始めていたので、10月28日に発覚したクリントン氏の追加電子メール問題による波乱は、短期筋の一過性の仕掛けとの印象がより強くなった。
基調は模様眺めだが、BAML(バンクオブアメリカ・メリルリンチ)の週間調査によると、債券ファンドからの資金流出は11億ドル、内訳はハイイールド債ファンドからの流出が44億ドル、国債ファンドには3億ドルの資金流入。株式ファンドからの資金流出は38億ドル、うち米国株ファンドが35億ドルを占めた(11月2日時点)。年初からの株式ファンドからの資金流出は1510億ドル(全て先進国)とされており、とくに資金流出が加速した訳ではない。BAMLは「リスクオフの動きが見られたが、秩序立っており、パニック的なものになっていない」とコメントした。4日、NYダウは7営業日、ナスダックは9営業日続落したが、下げ幅としてはそれほど大きくないことも買い控え姿勢を示している。
クリントン政権になった場合、政策の影響を測る意味で医薬品株の動向をウォッチしたい。4日の欧州市場で医薬品株の下落が目立ったが、米議員が独禁当局に製薬会社による価格操作の有無を調査するよう求めたと伝わったため。仏サノフィ、デンマーク・ノボ・ノルディスク、米イーライ・リリー、メルクが対象(インスリンおよび糖尿病薬が対象)。発端は10月14日、民主党候補だったサンダース上院議員がツイッターで「製薬会社の貪欲さ」を痛烈に批判し、槍玉に上がったアリアド・ファーマシューティカルズ株が15%急落したこと。米新政権は医療費膨張に対し、より厳しい価格規制を打ち出す可能性があると警戒されている。
もう一つ、原油相場の混迷にも注意が要る。4日のWTI相場は1.32%安の44.07ドル/バレルで終了。終値で9月20日以来の安値、週間で9.5%下落した。ロイターによると、OPEC専門会合でサウジとイランの対立が再燃。増産凍結に応じないイランに対し、サウジが「場合によっては日量1200万バレルに増産(現在1050万バレル程度)して原油価格を下げ、会合からも退席する」と脅しを掛けたと伝えた。OPECは専門家会合を25日、総会を30日に開催予定だが、果たしてまとめられるのか、予断を許さない状況が続こう。軟調な展開が続けば、資源関連や資源国通貨に影響するものと考えられる。
全体としては、手探りの状況が続くと考えられる。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(16/11/7号)
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