【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(3):◆ドゥテルテ、プーチンのインフラ投資への思惑◆ 株式会社フィスコ 2016年10月30日
内外でインフラニーズ拡大、促進体制の整備へ
ドゥテルテ比大統領が就任後初来日した。暴言的発言から親中反米的と評されることが多いが、真の狙いは経済発展にあると見られる。米国の安全保障依存体制では、まとまった援助もなく、現状打開が難しいため、中国接近、日本との連携強化を目指していると考えられる。プライベートでの来日経験もあり親日家とされるが、第一声でも日本の援助への感謝を述べた。大統領は農地改革など国内既得権層と衝突しかねない国内改革を経済改革の柱に置いており、日本には一過性の金銭的援助だけでなく、長期的なインフラ設備改善、運営体制の支援を求めて来るものと思われる。南シナ海問題では、首脳会談で約束した「棚上げ」を中国側が破って工事を進めようとしてきた時の対応が注目される。
フィリピンだけでなく、12月プーチン来日を控えるロシアでも、日本の経済力への期待が高まる一方だ。ガスパイプラインや電力供給の(大統領肝いりとされる)エネルギー・ブリッジ構想からシベリア鉄道の北海道延伸など、医療、農業と並んでインフラ構築への視線が熱い。英国が25年間懸案となっていたヒースロー空港の拡張を打ち出すなど、世界的な経済停滞の打破にインフラ投資拡大を打ち出す流れが強まりそうだ。
一方、20日開催の財政制度等審議会で、財務省は17年度予算編成を睨み、公共投資の「選択と集中」をより徹底する方針を打ち出した。柱は、民間投資誘発効果や運用効率の高い事業に重点化、PPP・PFI(官民連携)拡大、全ての国管理空港にコンセッション(公共施設等運営権:運営民営化)導入など。空港や高速道路の民営化は始まったばかりだが、仙台空港(東急グループ、前田建設など)、関西・伊丹空港(オリックスグループ)、愛知県有料道路(前田建設)などの事例をベースに、海外案件でも急速に拡大する可能性がある。
財務省の方針は財政再建がバックにあるが、JBIC(国際協力銀行)を水先案内人にメガバンクや総合商社が追随していく資金供給枠組みも大幅に拡充する必要性が出て来よう。25日、下期の運営方針を発表した第一生命は円債純減の見通しとともに実物資産投資(インフラ投資に航空機ファイナンスなどを加えたもの)の積極拡充する方針。「効率的な市場にアクセスする」とし、投資のクオリティを下げず、キャッシュフローの安定分野を重視する。同様に、運用難に喘ぐ金融機関は多い。民間融資が依然規制下にある日本郵政グループや農中、政策投資銀行、金融庁が矢継ぎ早に経営改善を求める地銀など、積極的にインフラ融資、地域投資を行う素地は十分にあり、潜在的期待値は高いと思われる。不人気の金融株の大きな見直し要因になると考えられる。
民間資金を呼び込める安定かつ効率的なインフラ建設・運営体制の枠組み強化が内外で求められている。
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(16/10/26号)
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