マイナンバーカードによる本人認証とスマートフォンとの連携 (2016/11/28 JIJICO)
マイナンバーカード利活用の拡大に向けたスマートフォンとの連携
マイナンバー制度は行政機関の業務効率化を大きな目的としていますが、一方で政府はマイナンバー制度で構築した個人認証基盤を民間にも解放して新ビジネスの創出を促進させようとしています。その施策の一つとして注目されるのが、マイナンバー情報を格納したマイナンバーカードとスマートフォンとの連携です。
総務省の平成27年通信利用動向調査ではスマートフォンは全世帯の7割以上で保有されており、機能や性能も年々向上しています。また、行政やビジネスで提供されるサービスの悪用等を防ぐため、利用者の本人確認を行う機会が増加しています。こうした状況を背景に、マイナンバーに基づく公的個人認証基盤をスマートフォンで連携して多様な活用を図ることが検討されています。
マイナンバーカードとスマートフォンとの連携は2通り
マイナンバーカードの利活用については総務省の「個人番号カード・公的個人認証サービス等の利活用推進の在り方に関する懇談会」で検討されています。その中でスマートフォンとの連携も議論されています。
マイナンバーカードとスマートフォンとの連携は2通りあります。
第1の連携方法は、スマートフォンでマイナンバーカードを読み取り、公的個人認証基盤にアクセスして利用者認証を実施する方法です。一般にマイナンバーカードのようなICカードを読み取るには専用のカードリーダーを必要となりますが、その代わりに多数の国民が所有するスマートフォンを利用して本人確認を行うことで各種サービスを利用することが可能となります。
例えば、役所に行かなくてもマイナンバーカードをスマートフォンにかざして本人確認を行い、保育所入所や児童手当などの申請手続きを行えるよう、全国の自治体で準備が進められています。また、インターネットバンキングへのログインでパスワード等を入力する代わりにスマートフォンにマイナンバーカードをかざして本人認証を行い、口座残高照会等を行えるよう、群馬銀行で実証実験の検討が行われています。
第2の連携方法は、スマートフォンへの利用者証明機能の搭載です。マイナンバーカードに格納されている個人電子証明書等をスマートフォンにダウンロードして格納することで、マイナンバーカードが手元になくても公的個人認証基盤を利用して本人確認を行うことが可能となります。
こちらではイベント会場等で利用者証明機能を格納したスマートフォンをかざして入場資格の確認を行う実証実験の実施が計画されています。このことが実現すれば、転売等を目的としたチケット購入の防止が可能となるでしょう。
実現に向けた課題
以上のことを実現するには、乗り越えるべき課題もあります。
一つは、セキュリティです。
マイナンバーカード情報の読み取り、格納を行うスマートフォン自体のセキュリティを確保するための方策については様々な検討が行われています。また、マイナンバーカードやスマートフォンを所有者以外の者が成りすまして悪用することを防止するための施策も必要とされるでしょう。
二つ目の課題はマイナンバーカードの普及状況です。
当初はシステム不具合等からマイナンバーカードの交付が遅れた問題がありましたが、現在はほぼ解消されています。しかし、マイナンバーカードの申請は2016年11月時点で1200万件弱であり、全国民の1割程度しかありません。これではせっかく利用環境を構築しても使われない仕組みとなる恐れがあります。
そうならないためにも、マイナンバーカードとスマートフォンとの組合せで利便性と安全性を兼ね備えたサービスを実現が期待されます。
- 著者プロフィール
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金子 清隆/ITコンサルタント セキュリティコンサルタント
デルタエッジコンサルタント株式会社
ITに造詣が深く、ITを活用した経営・業務の効率化や、会社を守るためのセキュリティ対策を、最適コストでの実現を支援します。また、防災やネット犯罪等のリスクに対応するサービスも提供します。 【経歴】 ●大学卒業後、1991年より日本総合研究所において主にオープン系システムの企画提案、開発に従事。 ●1998年よりプライスウォーターハウスコンサルタントにて、ITコンサルタントとしてITに関わる分野で総合的なコンサルティングを担当。 【業務内容】企業情報システムの企画・構築策定、システム評価、情報セキュリティ、ITを活用した業務最適化、リスク管理、ITマネジメントなど、 ●2006年より、あずさ監査法人において、内部統制報告制度(J-SOX)の施行にともなうシステム監査業務・支株式会社設立 ※社名・業務内容は在籍当時のものです。
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