【衆議院議員選挙2014】
選挙後の収支報告書に頭を痛める会計担当者 (2014/12/16 東京大学大学院情報学環交流研究員 本田正美)
総選挙が終わると特別国会が召集され、新たな総理大臣が選出される。実は、その裏で選挙戦が直ぐには終わらない関係者がいる。それが各陣営の会計担当者だ。
国政選挙から地方議会選挙まで、各選挙では選挙戦で使用可能な金銭の上限が設定されている。そして、立候補した者はその選挙戦に関する収支報告書を選挙後に提出しなければならない。そこで、各陣営の会計担当者は選挙戦で使用した各費用につき、領収書を集計し、収支報告書の作成に追われることになるのだ。この収支報告書の提出を終えて初めて選挙戦が完結するとも言える。
この選挙戦に関する収支報告書。いくつか厄介な処理が必要とされる。その一つが、ボランティア、つまり無償で選挙運動に関する労務などを担ってくれた方々の費用の処理だ。熱心な支持者を中心として無償で労務を提供するため、実際には金銭が動くことはなくとも、無償の労務提供をするという寄付が行われたと見なして収支報告書上は記載する必要があるのだ。
簡単に書くと、支出に労務提供者への報酬、収入に労務提供者による労務提供分の寄付があったと記載することになる。ここで、どれだけ労務提供があったのか、そして労務提供者の住所・氏名を記載する必要がある。人の出入りが激しい選挙運動にあって、そのような労務提供の実態を正確に記録しておくことは難しい。実際には、無償による労務提供があったにもかかわらずに、無理矢理帳尻を合わせている候補者も少なくないのではないだろうか。実際、多くのボランティアスタッフが動いていたはずなのに、公開された収支報告書を見ると、まったくその種の記載がない陣営も散見される。
14日の投開票で今回の総選挙は終わったが、会計担当者が頭を痛める期間はもう少し先まで続く。公職選挙法で提出期限は選挙期日から15日以内と定められており、今回は12月29日までとなる。
- 【取材協力】
東京大学大学院情報学環交流研究員 本田正美
1978年生まれ。東京大学法学部卒。2013年、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。現在、東京大学大学院情報学環交流研究員。専門は、社会情報学・行政学。特に電子政府に関する研究を中心に、情報社会における行政・市民・議会の関係のあり方について研究を行っている。共著本に『市民が主役の自治リノベーション』(ぎょうせい刊)がある。
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