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【早大マニフェスト研究所連載/マニフェストで実現する『地方政府』のカタチ】

第19回 『ピンチをチャンスに』 不祥事を好機に「新しい地方議会」のあり方を考える (2014/8/28 早大マニフェスト研究所)

関連ワード : 地方議会 

早稲田大学マニフェスト研究所によるコラム「マニフェストで実現する『地方政府』のカタチ」の第19回です。地方行政、地方自治のあり方を“マニフェスト”という切り口で見ていきます。掲載は、毎月第2木曜日。月イチ連載です。今回は、「『ピンチをチャンスに』 不祥事を好機に「新しい地方議会」のあり方を考える」』をお届けします。

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◇        ◇        ◇

頻発する地方議会の不祥事

 東京都議会のセクハラやじ問題、兵庫県議会議員による政務活動費を不自然に支出していた問題など、地方議会の不祥事が続いています。私の活動の拠点である青森県内においても、今年(2014年)1月の市長選に際して、市議20人のうち15人が公職選挙法違反の容疑で逮捕された平川市議会。7月、視察先の稚内でタクシーを蹴って器物破損で現行犯逮捕、その後議員辞職したむつ市議。同じく7月、愛知県で視察の途中で退席し、大相撲名古屋場所を観戦した3人の田舎館村議と、悪い意味で全国的にも注目を集めています。

議員視察で問題がおきた田舎館村役場

議員視察で問題がおきた田舎館村役場

不祥事を「新しい地方議会」を考える好機に

 この一連の問題を議員個人の資質の問題だけに矮小化してとらえるべきではありません。確かに問題の議員は、議員の資質を大きく欠いています。しかし、東京都議会では、議会の運営の仕方に問題はなかったのか。兵庫県議会では、議会事務局のチェック体制は十分だったのか。平川市議会では、選挙で議員は、政策や思いで選ばれるものではないのか。むつ市議会、田舎館村議会では、本来、議員視察はどうあるべきなのか。そうした、「そもそも論」の問題を今一度考え直し、前向きに「新しい地方議会」を作り直していく必要があると思います。

 また、不祥事を受けての議会不要論にもくみしたくありません。議会には、予算や条例の議決といった大きな権限があります。地方分権が進めば進むほど、その役割は重要になります。一連の地方議会の不祥事を受けて7月に緊急実施した、ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟と政治山の共同インターネット調査によると、地方議員に対するイメージは、「何をしているか分からない」が56.1%。「いてもいなくても同じだ」が34.9%でした。また、地方議員に対する信頼度は、「信頼する」が都道府県議会議員で6.3%、市町村議会議員で7.1%と、非常に厳しい結果になっています。しかし、今回の一連の不祥事を受けて、「地方議会に対する関心がアップした」と答えた人が38.7%、「選挙でしっかり候補者を選ぶ」と答えた人が41.6%と、地方議会に対する関心が高まっているのは事実です。『ピンチをチャンスに』していかなければなりません。

20名中15名の議員が逮捕された平川市役所

20人中15人の議員が逮捕された平川市役所

三極化する地方議会

 改革の取り組みへの意欲を判断する指標にもなり、議会のあり方や、議会運営のルールを定めた「議会基本条例」を制定している議会は、自治体議会改革フォーラムの調査によると、3月末現在で570議会と、全国の議会の1/3になりました。今、地方議会は三極化していると思います。改革の必要性を感じず、旧態依然とした議会運営を行う「居眠り議会」。「議会基本条例」を制定し、そのことで満足してしまい、改革をしたふりになっている「したふり議会」。「議会基本条例」の実効性を高め、住民福祉の向上のため不断の努力を実践し、成果を挙げ始めている「真の改革議会」の3つに。

 議会の自浄作用が働くためには、議員がまずその汚れに気付く必要があります。改革議会とそうでない議会があるように、それぞれの議会の中にも、改革派の議員と守旧派の議員が存在します。「うちの議会はこんなもんだ」「今までこのようにやってきた」「それで問題がなかった」、そうした思い込み(ドミナント・ロジック)を打破するところから改革は始まります。「悪貨は良貨を駆逐する」ではなく、「良貨が悪貨を引き上げる」そうした流れを作っていかなければなりません。

議会改革の意欲を競う統一地方選挙に

 7月27日に実施された平川市議会議員補欠選挙の投票率は39.87%と、前回より34.1ポイント下回りました。市民は諦めてはいけません。地方議会は住民自治の根幹です。地方分権の流れは、好むと好まざるに関わらず、これからますます加速します。それに伴い、首長の役割のみならず、地方議会の役割も今まで以上に重要になります。『ピンチをチャンスに』。住民とともに、議員のあり方、議会のあり方を考え直し、そのあるべき姿に向かった改革を進める好機にしてほしいと思います。そして、来春の統一地方選挙は、地域の課題に対する政策と、議会改革への意欲を競い合う選挙になることを期待したいと思います。

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佐藤淳氏青森中央学院大学 経営法学部 専任講師
早稲田大学マニフェスト研究所 招聘研究員
佐藤 淳
1968年青森県十和田市生まれ。早稲田大学商学部卒業。三井住友銀行での12年間の銀行員生活後、早稲田大学大学院公共経営研究科修了。現在、青森中央学院大学専任講師(政治学・行政学・社会福祉論)。早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員として、マニフェスト型の選挙、政治、行政経営の定着のため活動中。

■早大マニフェスト研究所とは
早稲田大学マニフェスト研究所(略称:マニ研、まにけん)。早稲田大学のプロジェクト研究機関として、2004年4月1日に設立。所長は、北川正恭(早大大学院教授、元三重県知事)。ローカル・マニフェストによって地域から新しい民主主義を創造することを目的とし、マニフェスト、議会改革、選挙事務改革、自治体人材マネジメントなどの調査・研究を行っている。
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