【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】
第120回 議会・行政情報の発信を、地方議員のミッションに! (2015/1/28 東京都調布市議会議員 高橋祐司/LM推進地議連会員)
政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。現在は、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を連載しています。第120回は、東京都調布市議会議員の高橋祐司氏による「議会・行政情報の発信を、地方議員のミッションに!」をお届けします。
東京都のほぼ中央に位置し、人口増が続く調布
調布市は東京都のほぼ中央、多摩地区の南東部に位置し、新宿副都心へ15kmの距離にあります。東は世田谷区、北は三鷹市、小金井市、西は府中市、南は狛江市および多摩川を挟んで稲城市、神奈川県川崎市に接しています。面積は21.53平方キロメートルで、東京都の約1%に当たり、中央部を東西に京王線、国道20号線、中央自動車道が走り、これを中心として市街地を形成しています。そして北に武蔵野の面影を残す深大寺の森、南に多摩川が流れ、豊かな自然にも恵まれています。
スポーツも盛んで、調布飛行場に隣接する調布基地跡地には味の素スタジアムがあり、FC東京と東京ヴェルディのホームグラウンドになっているほか、2014年に開催された第68回国民体育大会・第13回全国障害者スポーツ大会のメイン会場ともなりました。さらに、2020年東京オリンピック・パラリンピックでは、多摩地域で唯一の開催地となることが決定しており、味の素スタジアム周辺には、新たなスポーツ施設(屋内プール・体育館)の建設が急ピッチで進められています。
人口は約22万3,000人で、今後もしばらく増加傾向が続くと予測されており、保育園の定員増への対応、小学校の改修・教室増も見据えた取り組みなど、子ども・子育て施策への投資は大きな課題となっています。今年(2015年)、市制施行60周年を迎えます。
会派制を基本とし一人会派が認められ、改革も進んでいるが・・・。
市議会の定数は28人(現在1名欠員で27人)。議会運営は会派制を採り、すべての議員が会派に所属するスタイルで、一人会派も認められ、現在は7会派のうち、一人会派が4会派あります。メリット・デメリットはそれぞれに存在し、今後の課題もあるものと認識しています。
議会改革への取り組みは、2011年9月から2013年5月まで約1年8カ月の間、33回にわたり、各会派代表により構成された議会改革代表者会議において協議を重ね、ある一定の成果を得ました(私も一員として参画)。全国的に見ても評価をいただけるレベルまで達しているようです。
具体的な成果の主なものでは、
- 議会基本条例の制定
- 市民への議会報告会開催を規定
- 一般質問に一問一答制導入
- 理事者側と対面する質問者席新設
- 傍聴環境整備:車いす席設置(付き添い可)、手話通訳、要約筆記、ノートテイク(以上すべて事前申し込み制)
- 「市議会だより」を、新聞折り込みから全戸配布へ
- 本会議だけでなく、常任委員会のインターネット中継
- 陳情提出時の趣旨説明機会を設定 などなど。
議会改革代表者会議解散以降は、議会運営委員会で継続審議となっていた事項を引き継ぎ、協議を継続しており、2014年度には政治倫理規定の制定や、一般質問時のプレゼンテーションツール導入(試行:PC&プロジェクター、大型スクリーン)など順次決定しています。
2014年日経グローカル誌で発表された第3回議会改革度調査では、調布市議会は都内49市区議会中3位の評価を受けました。
とは言え、改革に終わりはなく、改善すべき点は多々あるものと考えています。議会基本条例も制定して終わりではありませんし、議会報告会も開催はしているものの、開催回数、住民意見広聴への取り組みなど課題もあり、「市議会だより」をはじめとする議会広報のあり方など、基本理念で定めた「分かりやすく、より開かれた議会」実現に向けての取り組みは今後も継続して推進していくべきと考えています。
地方議員よ、いまこそメディアたれ!
地方議員以前、広告業界で企業や団体の広告・広報に携わってきた私が、地方議会に関わりたいと考えた動機の1つが、行政情報の公開や住民に対する情報提供の不満でした。ところが、議会内に身を置いてみると、行政以上に議会にも情報公開推進の必要性を感じることとなりました。
行政側への情報公開・提供についてはこの4年間でも再三再四、そのツールや手法、意識改革も含め提言していますし、今後も続けていくつもりですが、それは議会広報についても同様と考えています。
住民が行政や議会に関心が薄い(低い)のは、住民にその情報が届いていないのが大きな要因だと私は感じています。もちろん情報はただ単に公開すればよいのではなく、より理解してもらいやすい提供の仕方、工夫も必要と考えています。地方議会が審議・決議する議案(条例や施策や制度、予算)は国会での議案よりもより住民にとって身近な、より生活に密着したテーマ・話題です。それが住民のみなさんにとって、関心が低いはずがありません。
議会での話題や議論の経過・結果を住民に細かくかみ砕いて説明すると、疑問や不満や反論がどんどん湧き出てきます。関心のある層(住民)は間違いなく存在しますし、行政での施策案や議会での議論の内容などがキチンと住民に届けば、住民の生の声はきっと返ってくるのだと信じています。その声こそが我々議会にとって有意義で貴重な「民意」なんだと思うのです。
テレビや新聞で毎日のように報道される国会での議論の経過や結果に対して、市民に最も身近な市政の情報は、1月に1回か2回の市報やホームページで提供される程度、これではなかなか伝わりません。
地方自治体の情報、地方議会の姿を一番身近で見て感じていて、その内容を市民に分かりやすく、しかもスピーディーに届けられるのは、われわれ地方議員をおいてほかにいないのではないでしょうか。ブログやSNSなど最新のネットツールを駆使した日々の発信はもちろん、街頭・駅頭での市政報告、議会レポートの配布・ポスティングなど従前からの手法でもよいでしょう。地方議員が今こそ、市民への行政や議会情報の提供をミッション(責務)として捉え、取り組むことが重要なのではないでしょうか。
選挙のたびに、「なぜ投票に行かないのだ!」と嘆く前に、その市政情報、議会情報をできるだけ発信していく習慣を身に着けるべきでしょうし、私はそれを今後も推進していこうと考えています。理想的には、そうした課題の提供と市民からの意見を聴く公聴会を“議会として開催する”ことでしょうし、それが議会の機能強化にもつながるのだと信じています。
- 著者プロフィール
高橋祐司(たかはし ゆうじ) 調布市議会議員
1956年生まれ、大学卒業後約30年、広告代理店に勤務 2011年4月、調布市議に初当選。無所属、会派名:つながる調布(一人会派)
行政も議会も徹底的に「見える化」できれば、市役所も議会も自ずと変革して来ると信じている。
市役所で起きていること、議会で議論されていることは市民にほとんど伝わっていません。伝わればそこからきっと疑問や不満や反論が出て来ます。それが民意、まちづくりの鍵。そんな市民の「生の声」を聞きたいと思い、日々市政情報、議会情報の発信を続けている。
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