【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】
第53回 やっぱり紙媒体も大事!あきる野市議会の議会報リニューアルと今後 (2013/9/25 東京都あきる野市議会議員 子籠敏人氏/LM推進地議連会員)
政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。現在は、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を連載しています。第53回は、東京都あきる野市議会議員の子籠敏人氏による「やっぱり紙媒体も大事!あきる野市議会の議会報リニューアルと今後」をお届けします。
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東京のふるさと、あきる野
あきる野市は、東京駅から西へ50キロほどに位置している緑豊かな街で、人口は約8万2000人(2013年9月1日現在)。市の約6割を山林が占め、かつては林業などが栄えましたが、現在は「とうもろこし」などに代表される農業のほか、渓谷美などの山紫水明な景観、釣りやバーベキューでにぎわう渓流、泉質に定評のある温泉、そして東京都心からアクセスしやすい好立地を活かした観光産業に力を入れています。
また、あきる野市は1995年に1市1町が合併して誕生した街で、「平成の大合併」の先駆けとして注目され、合併当初は全国から多くの自治体関係者が視察に訪れましたが、当時進めた新市建設計画の遂行などで発行した「合併特例債」等によって膨らんだ債務を着実に縮減させていくのも今の大事な課題となっています。
あきる野市はかつて「スポーツと音楽のまち宣言」をした歴史もあり、スポーツ選手や音楽家も多数輩出しています。最近では、ロンドンオリンピックで銅メダルを獲得し、現在、女子バレーボールの日本代表キャプテンを務めている木村沙織選手が育った街としても知られ、木村選手は市の名誉市民にもなっています。なお、あきる野市議会の定数は21人で、合併当時の36人から、数度の市議選を経て漸減してきています。
フリーペーパー的な新議会報「ギカイの時間」の誕生
「きょう、議会だよりがリニューアルしました!」
2013年2月1日の朝、議員メンバーに呼びかけ、有志で市内の各駅頭に立ちました。この日、1995年の新市誕生以来初となる市議会だよりの全面リニューアルの日を迎え、議会だよりを、その名も「ギカイの時間」というフリーペーパーのような作りに刷新しました。もちろん、議員が駅頭で市民に直接議会だよりを配る行動も、わが市議会始まって以来のことです。
今回のコラムでは、おかげさまで最近、全国各地の議会からたくさんの視察や問い合わせ等をいただいているわが市議会の新議会報「ギカイの時間」の誕生にまつわるポイントをいくつかですが紹介すると共に、今後の目標などについて私見を述べさせていただきます。
若手で結集、合意形成への制度設計とゴール設定
リニューアルに向けては1年強の時間をかけました。議論がスタートしたのは、2011年の10月。手法は「議会報編集特別委員会」の中に小委員会的な「議会報調査研究グループ」(議員3人、事務局職員1人の計4人で構成)を設置して検討を進めるというやり方でした。この4人は私も含め、全員40歳前後のアラフォー世代で、議会の中の超党派の若手で構成しました。ちなみに、事務局職員を含め、超党派の4人で小委員会を組むという制度設計をしたことが、最終的に議会全体の合意形成をスムーズに得ることにつながった1つのポイントでした。
また、検討の着手にあたって私が重視し提案したことは「ゴールの設定」でした。当時の私たち残りの任期は2年弱。この任期中に実現まで持っていかねば、たとえ報告書をまとめたとしても改選後の新メンバーの中でお蔵入りになってしまう可能性もある。そこで私が提案したのは、1年4か月後の2013年2月1日に発行する「第70号」という節目の号に合わせて、議会だよりをリニューアルさせるという明確なゴールの設定でした。
リニューアルの決定や表紙のデザインは、市民の意見が決め手
具体的な中身の検討へ向け私たちが手始めに行ったことは、全国の自治体の斬新な広報誌の調査と取り寄せ。ネットなどを駆使して、定評のある自治体の広報や議会だよりを膨大にピックアップして、「コレ!」と思った冊子については、次々と問い合わせをして現物を送ってもらい、手に取って見比べ、その特徴や効果を分析しました。
そして、巻頭特集として「学生や子育てママらいろいろな世代との座談会」を取り入れたり、あえて「ホワイト」と呼ばれる余白部分を誌面に十分に取ってレイアウトする手法、最終ページには市内の全小学校をリレーして子どもたちが夢を語っていくコーナーの掲載など、取り寄せた資料を参考に、各ページのレイアウトを組んでいきました。
その一方でポイントだったのが、表紙のデザインについて。これには「発行する側の、自分たちの考えだけで決めるのは危うい」と判断し、思い切って市役所1階の玄関ホールに各地から取り寄せた斬新な広報誌の表紙を貼り出して「市民投票」を実施。「手に取ってもらえる表紙のデザインはどんなものか」を調査し、そこで最も票を獲得した表紙の構成を重視してデザインをまとめました。
また、この市民投票を行った狙いと意義はもう1つありました。それは、検討を始めた当初は一部の議員の中に「議会だよりを変える必要が本当にあるのか」という意見もありました。そこで、市民投票では貼り出す広報誌の中に、わが市の議会だよりも入れて投票に臨んだところ、案の定、わが議会だよりは10件中、下から3番目。全体の得票率もわずか4%と惨たんたる結果が突き付けられ、議会としてのリニューアル決断への決め手となりました。
さらなる発信力と議員の基礎体力の強化へ、次なる目標
主に5つの方向があると個人的に思っています。
1つはもちろん、このリニューアルした議会だよりのブラッシュアップ。これに満足せず、より手に取ってもらえる議会だよりへ工夫を重ねていく必要があります。
2つ目はネット面の充実。ホームページの見やすさや情報発信・公開資料の充実、SNSへの対応など、手を付けるべきところは山ほどあり、この点についてはわが市議会は大きく後れを取っているのは確かです。
3つ目は「議会報告会」や「議会と語ろう会」といった、市民の元へ議員が赴いてキャッチボールする場の制度化。議会基本条例が各地で相次いで制定される昨今、この取り組みはもはや議会として必須であると考えます。
4つ目は巻頭の特集ページである「座談会」のコーナーで出た市民からの意見や指摘を、それを所管する各常任委員会に伝えて各委員会の「所管事務調査」として扱ってもらい、検討・回答を出していく「新たなサイクル」の創設。
そして5つ目が、この議会報リニューアルに関する視察の積極的な受け入れによる全国の皆さんとの共有化とこれに伴う議員による説明力の強化です。私はある意味、この5つ目のテーマに今最も力を入れたいと考えています。その理由は、1つには私たちが持つ経験やノウハウをどんどん全国の議会報に提供し、全国的な議会報の底上げに寄与したいという思い。もう1つは全国各地から来てくださる視察団にわが市の議員が説明や質疑応答を重ねることで、議員の説明力やプレゼン力も高まり、議会のレベルアップにもつながると考えるからです。
これまでわが市議会では、議会に関する事項で視察団が来ても、基本的には議会事務局の職員が説明を行ってきましたが、私は「議会の視察は議員が対応すべき」と思っています。おかげさまでわが市議会には今、議会報リニューアルの視察依頼が次々と来ており、中には私を説明員に指名してくださる議会もあります。私はこの機を活かして「議員対応による説明の一般化」や「視察(資料代)の有料化(少額)とプレゼン力の強化」、「視察団の市内での飲食および宿泊の強化」などにつなげていきたいと考えています。
- 著者プロフィール
- 子籠 敏人(こごもり としひと):東京都あきる野市生まれの40歳。「縁あって生まれた地域のために生きる!」をモットーに、高校時代から地域のさまざまなボランティア活動に熱中。そして立教大学経済学部を卒業後、地元の地域新聞社に記者として入社。その後、時事通信社での勤務を経て、2009年の市議選で初当選。現在2期目で会派の幹事長として奔走。議会では1期目で福祉文教委員会委員長、2期目では環境建設委員会委員長を務めている。立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科修了(社会デザイン学修士)。現在、同研究科博士後期課程在学中。
HP:あきる野市議会議員 子籠敏人のホームページ
facebook:子籠 敏人
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