【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】
第39回 「地方議員2.0」を目指して (2013/6/5 横浜市会議員 鈴木太郎/LM推進地議連会員)
政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。現在は、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を連載しています。第39回は、神奈川県横浜市会議員の鈴木太郎氏による「『地方議員2.0』を目指して」をお届けします。
◇ ◇ ◇
横浜市の状況
直近の人口動態調査で横浜市の人口は370万人を超えました。人口規模や予算規模ではいくつかの県をしのぐ、我が国最大の基礎自治体です。一方で、将来人口推計によると、2019年に人口はピークを迎え、その後は急速に減少が見込まれています。
このような社会環境のもとで、引き続き大都市としての魅力と競争力を維持していくためにも、広域自治体である神奈川県から財源の移譲とともに、一切の地方事務を担っていく特別自治市の創設を国に対して提案しています。
特別自治市に関しては、住民と行政の距離が遠くなるなど、住民主体の行政運営に支障を来すのではないかという懸念も指摘されています。特別自治市における新たな住民自治の在り方、議会の在り方など未知の世界を追求していかなければなりません。未知の世界を担うのが、「地方議員2.0」です。
本来の議会の権能
私自身は、現在、横浜市会議員として3期目です。18区ある行政区のうち、人口が約27万人の戸塚区が私の選挙区です。この選挙区の6議席のひとつをお預かりしています。これまでの選挙結果は、2003年(平成15年)には、11,983票で2位、2007年(平成19年)には、16,566票で1位、2011年(平成23年)には、24,095票で1位(横浜市議で最高得票)となっています。
この間、一貫して心掛けていたのは、本来の議会の権能を発揮しようということです。そのために1期目には、議会での質問にこだわりました。
2期目には、さらに様々な取り組みを実施しました。例えば、仲間の議員とともに「図書館へ行こう!」というリサーチ・プロジェクトを行い、当局に政策提言を行いました。また、「横浜市版無駄撲滅プロジェクト」と称して議会主導で事業仕分けを実施しました。そして、横浜市政史上初の議員提案による本格的な政策条例として、横浜市中小企業振興基本条例の制定を実現しました。
3期目に入り議会でも委員長、副委員長といった重責を担う機会も多くなりました。温暖化対策・環境創造・資源循環委員会の副委員長として、資源集団回収における資源物の持ち去り対策として、持ち去り行為を明確に禁止し、違反した場合には20万円以下の罰金を課すよう現行条例を改正しました。「この1年で条例改正したい!」と委員会で宣言し、横浜市政史上初の委員会提出議案による実務条例の改正となりました。
2013年5月から、政策・総務・財政委員会の委員長を務めていますが、委員長就任後初の委員会で「この委員会でオープンデータの取り組みを加速させます」と宣言しました。
横浜市会のみならず全国の地方議会の動きを見ると、この10年でだいぶ変わってきたと感じています。ひと言でいえば、より政策に重きを置くようになってきています。これまでの殻を打ち破るような若くて優秀な人材も数多く登場しています。この動きをさらに一歩進めて、目指すべきは「地方議員2.0」です。キーワードは、「ハイブリッド」と「プロジェクト」です。
ハイブリッド&プロジェクト
議会改革が論じられる際、とかく対立軸で語られます。例えば、政策に対して陳情、議会活動に対して地元活動、インターネットの普及でリアルに対してヴァーチャルといった感じです。本当に必要な政策というのは、マニフェスト大賞を受賞するようなカッコイイものである必要はなく、地に足のついた地道なものです。そういった政策のシーズ(種)を見出すには対立軸ではなく融合が必要です。いわゆるドブ板的な地元活動だったり、個別の陳情だったり、住民との何気ない会話などから本当に必要な政策が見つかるのです。政策のシーズをカタチにしていくには政務調査や議会対応などの政策実務能力が必要になります。まさにハイブリッドな能力、資質、関心、興味が「地方議員2.0」に求められているのです。
本当に必要な政策を実現していく手法としてプロジェクト・マネジメントが欠かせません。議会での質問に準備が必要なのは言うまでもありません。これが条例制定といったレベルの政策実現を目指すとなると、あらかじめ取り組みの全体像を計画し、進捗を管理するプロジェクト・マネジメントのノウハウが求められます。スケジュール管理やプロジェクト・チームの組成、そして予算の管理など体系的なプロセスが大事です。
一般的に議員活動は多忙を極めます。取り組みを始めたときは崇高な目標を掲げていたものの、多忙であるがゆえに、時間とともにいつの間にか当初の目標とはずいぶん異なる結末を迎えることがあります。プロジェクトとして取り組むと、あらかじめゴールを明確にしますので、ぶれない政策ができる可能性が高くなります。
政治の役割とは、究極的には社会課題の解決です。その社会課題が複雑化しているからこそ、「地方議員2.0」は、プロジェクト・ベースでの政策実現に挑戦しなければなりません。
- 著者プロフィール
- 鈴木 太郎(すずき たろう):横浜市会議員(3期目)。自民党所属。上智大学外国語学部英語学科卒業、シラキュース大学情報研究大学院修士課程修了。三菱銀行、外資系金融機関勤務の後、自民党衆議院支部長秘書を経験。
HP:横浜市会議員(戸塚区)「鈴木太郎」のホームページ
- LM推進地議連の連載コラム
- 第38回「政策実現のための活動を支えてくれるマニフェスト」(岡山県倉敷市議会議員 齋藤武次郎)
- 第37回「今の世に 議員は何をする人ぞ」(愛知県大府市議会議員 鷹羽登久子)
- 第36回「地方自治の「かたち」を考える~関西広域連合の経緯を通じて」(京都府議会議員 中小路健吾)
- ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟(LM推進地議連)連載コラム一覧