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【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】

第37回 今の世に 議員は何をする人ぞ (2013/5/22 愛知県大府市議会議員 鷹羽登久子/LM推進地議連会員)

関連ワード : 大府市 愛知 鷹羽登久子 

ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟 連載・コラム政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。現在は、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を連載しています。第37回は、愛知県大府市議会議員の鷹羽登久子氏による「今の世に 議員は何をする人ぞ」をお届けします。

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穏やかなまち、愛知県大府市

 愛知県大府市は人口8万8,000人(2013年4月末現在)。名古屋市の南部に隣接し、自動車産業が盛んな愛知県の西三河地区にも隣接する、知多半島の付け根にある小都市だ。全国の多くの地方自治体が置かれている状況とは少々様相が異なり、今も人口は増え続け、不交付団体を堅持している。市の経営が危機的なわけでなく、まちがひっくり返るような大事件もこれまでなく、いわゆる政治に無関心な若い世代も多いためか、無風に近い、穏やかな地方政治の状況である。

 そんな大府市で、私は2007年に市議会議員になった。政治とは無縁の、普通に働き暮らしてきた一市民が、議会のお作法に新鮮に驚き、素直に法や条文を読解し、シンプル至極に考えて伝えて行動してきた6年間だったと思う。

なぜ? どうして?がきっかけ

 「議員は何をする人ぞ」……自分がこれを理解してから立候補したのか、と問われればNOだ。一介の住民だった自分は、知らないうちにいろいろな制度が決まり、いつの間にかハコモノが建っていることに違和感を感じ、どうして市民が知らないうちに、望んでいない結論が出てしまうのか、と疑問を持ち、それなら自分が決定する現場に立って、なぜそうなるのか見てみよう――という単純な理由が大きかった。実はこの疑問は、決定過程が市民に見えない、市民の意思を反映できていないという、今の議会改革の根本の部分を指すものだったということは、図らずも後から身に染みたことだった。

 地方議員が向き合わねばならない課題は、大別して2つだと思っている。1つは、議会という制度が、市民のためになっているか、民意を反映する仕組みになっているか、という「民主主義のあり方」としての議会改革。もう1つは、自分のまちがより住民にとって少しでも課題が少ないまちであり、限られる税源・経営資源の中で持続可能な形を構築できるのか、という「まちのあり方」、いわばお役所の施策政策についての部分だ。

大府市議会議員 鷹羽登久子氏

大府市議会議員 鷹羽登久子氏

 業界ならではのお作法や、それぞれの議会独自のお作法を重んじた前例主義と、より開かれた住民本位のあり方とが、時に両立し難い中で議会改革に取り組み、住民による民主主義を深めること。人口減少時代を迎え納税できる裾野が縮小することから逃れられない以上、拡大の一途をたどってきたインフラや公共施設、住民福祉を折り合いのつく範囲で縮小させつつ、最低限の社会保障を維持していくこと。簡潔にまとめるとそういうことだが、議員をいわゆる人気商売と思ってしまうなら、これは相当に困難なことである。これまでのように、皆さんの要望だからと何でも受け入れ、経営への影響を省みず行政に求める議員は、もはや足手まといになるし、議会情報もどんどん見える化していくことで、議会でそれぞれの議員がどのような働きぶりであるかも住民の知るところとなり、議員の力量も覆い隠しようがない。

 実は世の中の数多(あまた)の物事の中で、税金で果たさねばならない仕事の割合はそれほど多くはない。経済活動、生産活動、非営利活動、地縁血縁など多くの仕組みの相互補完で社会は回っている。議員が議員として関与し責任を負うのは、税金を使ってやるべきカテゴリーと、法や条例という社会の決まりを作る部分でしかない。しかし、相互補完で抜け落ちる部分があってもいけないわけで、そのために、今の世はどう回っていて、民意がどこにあるのか、という感性をいつもアンテナ立てていなければならない。

「議員さんって、何をしているんですか?」

 最近よく説明に使うのは、プロ野球選手みたいなものです、という表現だ。

 「正式な会議の日数は、それほど多くありません。議案はいわば、投手が投げてくる球です。外角内角、ストレートに変化球、本当にいろいろな球が来ます。福祉だったり教育だったり道路インフラだったり、役所でやるありとあらゆる仕事すべてがその範囲です。でも、どんな球でも、まずボールかストライクか見極めないといけない。ダメな提案はダメ、ということです。ゲームを見に来るお客さんが入場料を払っていて、そこからプロ選手の報酬が出ているように、私たちも税金から報酬をいただいています。税金を納める市民から納得してもらえる発言をし、説明をして、判断に責任を持たないといけません。そして、試合のない日にもトレーニングが欠かせないように、私たちも、情報収集をしたり研究や調査をしたり、みなさんの輪に混ざって民意がどこにあるのかを探ることに、日々を使っています」

 これまでのように、皆さんのお願い事を何でも聞き、何でもそのまま税金で叶えるということはもはやできない。議員は、情報収集から活動手法まで、より専門化する段階にある。より困難な道に見えるかもしれないが、変化著しい時代を迎えているということもできる。そんな時代の過渡期に立ち会い、向き合う責任を負うことは、大きなやりがいであり生きがいともなり得る。

 議員には必ず任期があり、代替わりしていく。私は地方政治というフィールドの裾野を広げ、底上げしていく1つの力になりたい。それは巡り巡って自らのまちにもきっと良い影響をもたらしていくに違いない。そして、そんな自分の行動が、次の世代に何かを残していくことができるなら幸せだと思う。

著者プロフィール
鷹羽 登久子(たかば とくこ):愛知県大府市議会議員 2期目。既存政党とは距離を置く無所属。 各地の地方議員や学識者と交流を持ち、勉強会や合同視察の企画などを行っている。同業者の仲間うちの呼び名は「ねえさん」。
HP:大府市議会議員 たかばとくこ のホームページ
twitter:takaba_tokuko

鷹羽登久子氏プロフィール

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