第32回 将来世代を考えられる政治の環境を作る  |  政治・選挙プラットフォーム【政治山】

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【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】

第32回 将来世代を考えられる政治の環境を作る (2013/4/17 大津市議会議員 古尾谷雅博/LM推進地議連会員)

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政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。現在は、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を連載しています。第32回は、大津市議会議員の古尾谷雅博氏による「将来世代を考えられる政治の環境を作る」をお届けします。

◇        ◇        ◇

 滋賀県の県庁所在地である大津市は人口34万の中核市であり、琵琶湖岸に沿って南北に長いのが特徴。お隣の京都市との距離は、滋賀県庁と京都府庁を直線距離で測ってみると約10km程度の近さ。歴史は深く、7世紀に天智天皇が近江大津宮に遷都して以来の歴史を持つ古都で、世界文化遺産の延暦寺や園城寺(三井寺)、日吉大社、紫式部が源氏物語を書いたとされる石山寺などの国宝の神社仏閣をはじめ多くの史跡があり、武田信玄が臨終の際に「瀬田の唐橋に我が風林火山の旗を立てよ」と言ったとされる話で有名な「瀬田の唐橋」は歴史において重要ポイントであり、この橋の歴史を語れば日本の歴史が分かるとされるほど、日本の歴史には数多く登場する。

議会構成(議員数は38人 下記は構成)

会派名 議員数
湖誠会 13
市民ネット21 6
日本共産党大津市会議員団 6
公明党議員団 5
大志会 3
清正会 2
1
惻隠 1
みんなの党大津 1
合計 38

※38人中、40歳未満の議員は7人で、超党派「若手大津市議の会」として、会派とは別の活動もみられる。

 将来世代を考えられる政治の環境を作る――。

 「将来の世代を考えた政治を実現するための土台を作らなければならない」。これは、私が試行錯誤をしながら今、取り組んでいることです。誰もが将来世代を考えなければならないと知りながらも、なかなか変わらない。要望を中心とした政治がまだまだ横行しているんだなぁと素朴に思ってしまうところです。「政治は票のあるところに向けた政策が語られる」……本当にその通りかもしれませんね。

大津市議会議員 古尾谷雅博氏

大津市議会議員 古尾谷雅博氏

 先日、日本の人口動態が発表され、マスコミ各社も大きく報道しました。大津市も他都市よりは多少緩やかではあるものの例外ではなく、人口減少が進みます。日本の人口減少は、特に地方都市にとって、存続の危機すら危ぶまれる問題であると認識していますし、日本の社会形成の根幹である問題だと考えており、特に少子高齢化による人口ピラミッドのバランスの悪さは気になるところであります。

 「今は将来世代のポケットに手を突っ込むようなやり方をしている。将来の世代が一番弱者で、1票を行使できない」

 この言葉は野田前総理がおっしゃったことですが、これに共感された方は多いのではないでしょうか。しかし、将来世代に一番近い存在である若い有権者の投票率を見て、「これでは政治は動かない」と、嘆いてしまいました。取り方によっては「自分たちの将来のことも考えてほしい」という票より、「先の世より今を見てほしい」という票の方が圧倒的に多いと取れるからです。

 財団法人明るい選挙推進協会がHPで公表している数値を見ても、例えば直近の衆議院選挙を例にとると、20歳代の投票率は37.89%で、60歳代の投票率は74.93%と約2倍の差があり、データを見る限り、何年生まれの方が投票意識が高いといえる訳でもなく、投票行動には年齢による投票への意識が見え隠れします。

 同じく、大津市の2009年の衆議院選挙から参議院選挙、滋賀県大津市議会選挙、2012年の衆議院選挙までの年齢層別平均投票率を見てみると、下表のようになります。やはり、平均投票率が低いのは20歳~24歳で約38.5%、最も投票率の高いのは65歳~69歳の76.4%であります。

 投票率だけで見れば2倍なのですが、若者世代がこのまま投票活動を積極的にしないと仮定すれば、2030年の大津市の人口予測に照らし合わせて考えると、票数では3倍の差が生まれるわけです。

 

直近の選挙における年齢平均投票率と、古尾谷氏が今後の人口動態から予測する世代別票数

  年齢平均投票率 H27人口予測 H27票数予測 H42年人口予測 H42年票数予測
20~24歳 38.524 17,344 6,682 13,951 5,374
25~29歳 40.706 19,482 7,930 16,192 6,591
30~34歳 46.514 19,832 9,225 17,616 8,194
35~39歳 52.59 20,319 10,686 17,534 9,221
40~44歳 56.622 24,849 14,070 19,339 10,950
45~49歳 58.434 22,235 12,993 19,546 11,422
50~54歳 62.018 21,342 13,236 19,894 12,338
55~59歳 65.682 19,793 13,000 24,058 15,802
60~64歳 68.266 20,877 14,252 21,190 14,466
65~69歳 76.412 24,685 18,862 19,909 15,213
70~74歳 75.902 19,047 14,457 17,836 13,538
75~79歳 79.86 14,088 10,152 17,595 12,679
80歳~ 51.02 22,766 11,418 39,315 19,717

 

 現在は、違憲判決が出た1票の格差が問題になっていますが、今後は世代間の1票の格差も問題になるのではないかと危惧(きぐ)します。ただ、世代別の格差を広げている要因が若者の選挙離れだというのも投票率から見れば事実で、ここをわれわれ政治家はどのように訴えていくかが重要ではないでしょうか。

 さらに大津市では、地方選挙と国政選挙の投票率の差は大きく、投票率が落ちた2012年の衆議院選挙とわれわれが戦った2011年の市議会選挙を比べてみると、市議会選挙は約15%も投票率が低い。15%といえば大津市では4万票あまりも眠ってしまっていることにつながり、さらにはこの4万票の多くは無党派層だと想像ができ、ここをどう掘り起こすかが将来を見た政治を行うカギになるかと思います。

 さて、私は国会議員の秘書をしていたころに、こんなに財政的に悪い中、なぜ政治は今も要望型の政治が続くのかと疑問に思っていました。

 財務省のホームページを見れば、国の財政はとっくに危険水域を突破している。政治は、何をどのように減らすかをマニフェストにも明記するべきであり、どうすれば国民や市民の皆さまの負担を最小限に抑えながらも、より現在にマッチしたサービスに移行できるかを考えるのが役目ではないかと。

 そうして「国を変えるためには、地方が変わらないと変わることができない」との一心で、政治家の世界に飛び込んだのですが、正直に言うとなかなか突破口が見つからない(苦笑)。

 今、市議会議員の1期目が2年過ぎたわけですが、「将来財政を考えるためには国・県・市の財政を同じライン上に考えるべきだ。要望よりも何をどう切るかの議論が大事」と真正面から訴えてもなかなか響かない。これには本当に悩みました。

 国は借金まみれでも、地方自治体の多くは、国にもっと補助が欲しいと言う。逆に、地方が我慢するといった議論が各地方から湧き上らないといけない状態ですが、こういったことを訴える地方政治家は全国を探しても、かなりの少数派なのではないでしょうか。

 数字の上で見ていくと、地方の方が財政の状況はいいといえ、夕張市でさえ国よりいいとされています。(財務省ホームページより 国と地方の財政状況の比較)

 ところで、政治はどう転んでも、多数決が基本の世界で、少数の議員がどう訴えてもなかなか変わらない。ならば、将来を語る政治家を応援してくれ、未来を語る政治家志望者が多く当選できる環境を目指すのも、政治を変える1つのポイントなのではないでしょうか。

 そんなことで今は、将来を語る政治を志望する方と共に一緒に育っていけるように、他都市であっても、政党がどこであっても、志が同じ政治家や政治家の卵と共にインターネットラジオの放送をしたり、勉強会を開いたりしています。

 まずは、政治を変えるための土壌を作るのも政治改革への道ですよね。将来世代の事を考える政治家を増やすために、眠っている票を掘り起こし新たな政治家をより多く導かなくては!

著者プロフィール
古尾谷 雅博(ふるおや まさひろ):大津市議会議員。所属会派:風
1975年大津市生まれ。衆議院議員の地元秘書として活動し、選挙前の3カ月で1028回の街頭演説を経て大津市議会議員初当選。現在1期
facebook:masahiro.furuoya
twitter:@FuruoyaMasahiro
インターネットラジオ・「晴れ時々大津市政」:(ええラジオ内の番組枠)

古尾谷雅博氏プロフィール

LM推進地議連の連載コラム
第31回「行政経営の深化を目指して~行政サービスのコスト意識の向上~」(神奈川県茅ヶ崎市議会議員 海老名健太朗)
第30回「遅々として、しかし、進む「議会改革」」(神奈川県葉山町議会議員 横山すみ子)
第29回「『議員活動の見える化』とインターネット活用」(江東区議会議員 鈴木綾子)
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