【連載】行政経営の深化を目指して~行政サービスのコスト意識の向上~  |  政治・選挙プラットフォーム【政治山】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
トップ >  記事 >  連載・コラム >  ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟 連載 >  第31回 行政経営の深化を目指して~行政サービスのコスト意識の向上~

【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】

第31回 行政経営の深化を目指して~行政サービスのコスト意識の向上~ (2013/04/10 神奈川県茅ヶ崎市議会議員 海老名健太朗/LM推進地議連会員)

関連ワード : 海老名健太朗 神奈川 茅ヶ崎市 関東 

政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。現在は、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を連載しています。第31回は、茅ヶ崎市議会議員の海老名健太朗氏による「行政経営の深化を目指して~行政サービスのコスト意識の向上~」をお届けします。

◇        ◇        ◇

茅ヶ崎市の概要

通称アロハ議会

通称アロハ議会

 神奈川県茅ヶ崎市といえば、サザンの桑田佳祐氏や加山雄三氏の音楽に表現される湘南の海ですが、北部には里山も広がっています。四季を通じて温暖な気候が特徴で、明治から昭和初期にかけては湘南の別荘地、保養地と言われ、9代目市川団十郎氏などの文化人などが別荘を構えました。また、6月の市議会定例会では、行政も議会もアロハ着用の通称、アロハ議会が開催されることも特徴です。

 1947年市制移行後、イメージの良さと東京・横浜に近いことから、住宅都市として発展し、人口は毎年増加を続け、4.3万人から23.6万人にまでなり、今も増え続けています(茅ヶ崎市では2020年度まで増加と推計)。増え続けるが故の課題として、近隣市よりも保育園の待機児童数が圧倒的に多いこと、家が密集して建築されてきたので、特にJR東海道線以南では、大規模災害時の火災危険度が高いことです。

茅ヶ崎市議会の構成

 茅ヶ崎市議会の定数28名で、現在の議員数も28名です。会派別の構成と政党別の構成は、下表の通りで、男女構成は、男性18名、女性10名となっています。

 年齢別議員数は、20代0名。30代1名。40代5名。50代13名、60代9名、70代以上0名で、若い世代が少なく、50代の中でも54歳と55歳で8名というように特定世代に集中しているのが特徴です。

 2011年の統一地方選挙において、神奈川県内での地方議員選挙で30代以下の立候補者数が前回(2007年)のときよりも減少したのも特徴で、若年層の政治参加というのは大きな課題だと思います。

茅ヶ崎市議会 会派構成と政党別の構成(平成25年3月31日現在)

会派名 会派名 構成
新政ちがさき 8 民主党1、社会民主党1、神奈川ネット1、無所属5
湘風クラブ 7 自民党2、無所属5
公明ちがさき 5 公明党5
茅ヶ崎クラブ 4 自民党1、無所属3
みんなの党茅ヶ崎市議団 3 みんなの党3
会派に属さない議員 1 日本共産党1

市民も、職員もみんなで意識しよう!行政サービスのコスト

 私が議員を務める中で、一番感じる疑問は、「行政サービスにはコストがかかること、そしてそのことを行政がきちんと開示していないのではないか。市民もあまり理解していないのではないか」ということです。

茅ヶ崎市議会議員 海老名健太朗氏

茅ヶ崎市議会議員 海老名健太朗氏

 今でも印象に残っている事例が、茅ヶ崎市では屋内温水プール施設の建て替えです。建て替えにより利用料が200円から400円に値上げされることになりました。そのことが議会で審議されたとき、この値上げ幅が市民の負担増ではないか攻められる場面がありましたが、市民1人がこの温水プールを使用するとランニングコスト(運用費用)として1人あたり1,100円かかることが分かりました。裏を返すと、私たちの税金で900円穴埋めするか、700円穴埋めするかということになるのではないでしょうか。確かに、利用料だけ見ると倍増じゃないかということになるのですが、しかし、そこにはコストがかかっているのです。しかも、建て替えの際のイニシャルコスト(初期費用)は含まれていないのです。

 コストをどう考えるか? 税収が右肩上がりであれば、そういったコストもその中で吸収されていたのかもしれませんが、今や税収も下落傾向です。しかし、高齢化の進展やさまざまな行政サービスの提供が求められる中、扶助費などが増加基調にあり、行政運営ではなく、行政経営が本当に求められる時代になっています。

 それはまさに、“あれもこれも”行う時代ではなく、“あれかこれか”選択する時代になっているということではないでしょうか。その選択を行政も市民も行うには、まずは、行政側が行政サービスのそれぞれのコストを広く市民に開示することです。そして、それを通じて職員もコスト意識を向上させ、市民も当たり前のように受けてきた行政サービスにもコストがかかっていることをはっきりと数字で理解することが必要です。すなわち、「行政サービスのコストの見える化」と「コスト意識の向上」が求められているのです。

 行政サービスのコストというときに、予算書や決算書で事業費が計上されていますが、これはコストの総額を表していません。なぜなら、その事業費には、関わる職員が年間何名で、いくらの人件費になるのかといったことが含まれていません。また、コストを理解しやすくするためには、単なる総事業費だけでは不十分です。例えば、利用者1人当たりでの金額や、住民票なら1枚発行あたりの費用はいくらかなどの金額で示すことなどが必要です。

 私は議員として、行政経営の深化を目指して、この「行政サービスのコストの見える化」と「コスト意識の向上」を主な活動テーマに取り組んでいます。まずは、行政側からのコスト開示が不十分すぎると考え、その開示を進めることを取り組んでいます。

 例えばですが、多くの市民は住んでいる自治体に借金があることを知っていても、それがいくらなのかはっきり分からないのが現実ではないでしょうか。そこで広く市民に市の借金の総額から、市民1人当たりの金額が分かる「借金時計の導入」を提案しました。公民館などの公共施設については、会議室などの利用率や施設ごとの必要経費を「公共施設白書」としてまとめることや、各施設でその施設の年間必要経費を掲示することを提案しました。また、予算書・決算書では、前年度・前々年度との比較ができても、経年での歳入・歳出構造が捉えられないことから「財政白書」の作成を提言してきました。

湘南カフェ風景

湘南カフェ風景

 これら情報開示の提案に加え、職員に対して「簿記の資格取得」を求めています。行政経営の深化に向けて公会計改革が行われましたが、予算書・決算書が単式簿記で表されています。複式簿記の考えを全職員が理解・習得しておくことが必要ではないかと思います。これら提案に合わせて、私自身として、「湘南カフェ」や「えびけんの語り場ちがさき」「茅ヶ崎テレビ」といったUSTREAM番組で双方向の発信活動を展開しています。

 私は、“あれかこれか”の選択の時代、行政経営の時代には、職員も市民も行政サービスにはコストがかかることをはっきりと認識することが必要だと思っています。今はまだ、行政側からのそのコスト開示が不十分だと思います。これからも「コストの見える化」をもっと進め、市民も、職員もコスト意識を持ち、これからの市政を考えていける形を実現していきたいと思います。

著者プロフィール
海老名健太朗(えびなけんたろう):1972年生まれ。神戸出身。高校時代に水俣病未認定患者問題を知り、政治に関心を持つ。中央大学法学部卒業後、保険会社に勤務するも政治を志し、2001年に松下政経塾に22期生として入塾。塾生時代に茅ヶ崎市のまちおこしに関わり、2007年から茅ヶ崎市議会議員に当選し、現在2期目。「行政サービスのコストの見える化」や「コスト意識の向上」を中心に“地方の時代、地方の基準で判断を!国政政党(中央)のフィルターで判断すべきではないと思いませんか!だからこそ、私は政党に属さず、完全無所属で活動します!”をスローガンに議員活動を展開している。
facebook(公式):ebina.kentaro
twitter:@ebiken72
USTREAM:えびけんの語り場ちがさき(毎月1回 日曜夜21時~配信)
    :茅ヶ崎テレビ(第4月曜日夜、政治コーナーを担当)
LM推進地議連の連載コラム
第30回「遅々として、しかし、進む「議会改革」」(神奈川県葉山町議会議員 横山すみ子)
第29回「『議員活動の見える化』とインターネット活用」(江東区議会議員 鈴木綾子)
第28回「衆議院選挙の総括から見えてくる自治の基盤整備」(埼玉県越谷市議会議員 白川秀嗣)
ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟(LM推進地議連)連載コラム一覧
関連リンク
ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟ホームページ
関連ワード : 海老名健太朗 神奈川 茅ヶ崎市 関東