【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】
第30回 遅々として、しかし、進む「議会改革」 (2013/4/3 神奈川県葉山町議会議員 横山すみ子/LM推進地議連会員)
政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。9月からは、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を開始しています。第30回は、葉山町議会議員の横山すみ子氏による「遅々として、しかし、進む「議会改革」」をお届けします。
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葉山町の姿
神奈川県三浦郡葉山町は、東京から50キロ圏に位置する町で、町外への通学・通勤者は、住民の7割を超えています。そのうち神奈川県内が約7割、東京が約3割となっています。
美しい海岸線と緑豊かな山々に囲まれた葉山の自然と、冬暖かく夏涼しい気候と相まって、古くから保養地として、また「葉山御用邸」のある町として知られています。
昭和40年代に多くの宅地造成が行われ、人口が急増しました。約3万3,000人の人口は近年まで微増を続けていましたが、人口の伸びが横ばいに入り、数年後には微減に入っていくのではないかと予測されています。
自主財源比率は70%を超えていますが、高齢化率は27%を超えて、4人に1人は65歳以上。民生費が急速に伸びています。一方、別荘や保養所跡地が住宅地として整備され、子育て中の世代の転入が多くなりました。この10年ぐらいは幼児や小学生が増え、保育園待機児童対策が急務となっています。
議会改革は長い時間をかけて
首都圏近郊の他の自治体と同じように、昭和40年代からの宅地造成による転入者が従来住んでいた住民の数を上回る比率となり、行政に対しても、議会に対しても関心を持ち積極的に発言する人が出てきました。
議員も、かつての地域代表型から、テーマを持って取り組む議員の割合が増えつつあります。町民の議会に対する視線も厳しく、地域代表として主に地域の課題に取り組むだけでは議員の責務を果たしていないと自覚する議員も増えました。
議会基本条例制定、議長選挙が大きなきっかけに
議員となって一生懸命に活動すればするほど、なぜ議会で議論がしにくいのか、議会に町民の皆さんが参画する仕組みをどうやって実現すればよいのか、どのように議会の透明度を高めるか、そもそも地方議会の本来の役割は?と、悩みが深くなります。勉強の場として参加したのが「市民と議員の条例づくり交流会議」でした。その後、政務調査費の制度ができたのも助けとなり、自治体学会や条例づくり交流会議に、同僚議員を誘って参加しました。
葉山町で議会改革が大きく動き出した1つのきっかけは、2006年の「市民と議員の条例づくり交流会議」でした。葉山町議会から数人の議員が参加しました。そこで北海道栗山町議会の橋場議長の講演を聞いて、議会活動の方向が見えたと感激して帰った同僚議員がいました。
葉山町議会でも、議会改革はそれ以前から取り組んでいましたが、ここで大きな具体的な目標が見えたのです。その後の議長選挙の際に、議長の所信として「議会改革の推進」と「議会基本条例の制定」を掲げた候補者が議長に当選しました。
議会基本条例、修正しながら、前へ
議会基本条例の制定を目指すことは合意されたものの、条例制定までには時間を要しました。議会運営委員会全員の合意を原則としているため、議論を重ねても合意できない項目は外されていきました。
議会基本条例は2009年7月1日に制定、施行は同年の10月1日からとなりました。制定に至る数年間、私は議会の外におり、実際の議論には加わっていないのですが、「議会報告会を条例本文に定める」「反問権を明記する」などが合意できず、条例本文に入っていません。
議会報告会については、「意見交換会等町民参加に係る制度に関する要綱」を定めて、何回か実施しています。現状は報告に限定しているため、参加される町民の方から、議員1人ひとりの意見を聞かせてほしいとの発言が出ています。
委員会審議の中では、議案についての職員への質疑後に職員は退席。そのあとに議員間の討議を行うことが多くなっています。そのため、この3月に議長の提案によって、事前の論点整理など手順を定めました。
2011年9月に、請願・陳情については、委員会が必要と認める場合は、提出者の意見を聞く機会を設けるという趣旨の条例改正を行いました。休憩中ではなく、正式な審議の場で、陳情者の意見を聞くことができることになって、一歩前進です。
議会は変われるか?
2007年の統一地方選挙を前に、「市民と議員の条例づくり交流会議」では、「自治体議会改革フォーラム」を立ち上げ、「変えなきゃ!議会『討論の広場』へのアプローチ」という本をつくりました。その表紙の裏にある文章です。
「市民も変わり、社会も変わる。
だが自治体議会は旧態依然、古い慣習としきたりに寄りかかり、議員同士の自由な討議すら、ままならないのが現状だ。
二元代表制とは名ばかりの、執行機関優位のシステムを絶ち、開かれた「討論の広場」へと生まれ変わるための、新たな議会スタイルを提起する。」
とあります。
それから6年、議会改革の先頭を切って走り続ける会津若松市議会などの姿に、議会の可能性を感じ勇気が湧きます。まだまだ「地方議会は変われる!」と信じて、一歩ずつ前に進んでいきたいと思います。
- 著者プロフィール
- 横山すみ子(よこやますみこ):葉山町議会議員。1942年北京市生まれ。衆議院速記者として勤務したのち、1970年に葉山町に転居。葉桜こども文庫、葉山高齢社会をよくする会食事サービスグループなどで活動。1985年葉山町議会議員選挙 初当選。以降、町議会議長、議会運営委員長、建設経済常任委員長などを歴任。現在7期目。
HP:横山すみ子の活動報告 葉山町政・議会・まちづくり
facebook:sumiko.yokoyama.7/ twitter:@yokoyamasumiko
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