第19回 ハミダシ隊の挑戦~「ありたい姿」のために  |  政治・選挙プラットフォーム【政治山】

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【一歩前に踏み出す自治体職員~ありたい姿の実現を目指して~】

第19回 ハミダシ隊の挑戦~「ありたい姿」のために (2016/5/31 岩手県一関市 市長公室政策企画課 松谷俊克)

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「人材を変え、組織を変え、地域を変える」ことを目的に自治体職員のリーダーを育成する実践的な研究会「早稲田大学マニフェスト研究所 人材マネジメント部会」受講生による連載コラム。研修で学び得たもの、意識改革や組織変化の実例などを綴っていただきます。第19回は岩手県一関市 市長公室政策企画課の松谷俊克さんによる「ハミダシ隊の挑戦~『ありたい姿』のために」をお届けします。

◇         ◇

 わたしは2014年の人材マネジメント部会(以下、「部会」)に、岩手県一関市の第1期生3人の1人として参加しました。現在も仙台会場の運営委員としてお手伝いをしています。

 部会では、「組織のありたい姿」や「その姿を実現させるためには、何をするべきか」などをテーマに、徹底的に対話をし、考え続けました。

 その対話を通じて、結果的には自分と深く向き合う時間にもなり、「地域や組織のために、自分に何ができるのか」を考える貴重な時間となりました。

 そして、今でも考え続けています。

模造紙やふせんで話し合いを可視化しながら経営層と対話した

模造紙やふせんで話し合いを可視化しながら経営層と対話した

PLAN~対話を重ねて、わたしたちが掲げた「組織・人材のありたい姿」

 わたしたちが、その対話から掲げた「組織・人材のありたい姿」は

  • 日常の気づきを共有し、実行する「一歩踏み出す人と組織」
  • 課を越えた連携がスムーズにできる組織
  • 真面目な雑談ができる職場

 という3点でした。

 このありたい姿は、社会の急激な変化に対応するためにも、必要なことであると強く思っています。

DO~実践を通して身に付いていたこと、そして自主活動へ

 部会の課題対応や夏季合宿での施策提案のために、独自アンケート調査やキーパーソンインタビュー、経営層(市長、副市長、企画担当部長、人事担当部長)との対話、通信(会報誌)発行、オフサイトミーティングの開催などに取り組みました。

 今振り返ってみると、この取り組みにより「研究する姿勢」や「行動する勇気」などが身に付いていたのだと思います。

 わたしたちが考えた「ありたい姿」にするための施策は、自分たちで取り組む内容が多かったこともあり、部会参加の翌年には庁内自主研究グループ「人マネ部会ハミダシ隊(以下「ハミダシ隊」)」を結成しました。職員課にも承認をもらい、現在も研究する姿勢を貫き、取り組みを継続しています。

 「ハミダシ隊」という名前は、「一歩踏み出す」という言葉について、市長からの「踏み出す程度ではなく、ハミダスくらいでなければダメ。ルビを、踏(は)み出すにした方がいい」というアドバイスを思い出し、「ハミダス覚悟」を決めて命名しました。

 元県職員であった市長は県庁職員時代に、「常識破(じょうしきは)」という自主活動グループをつくって活動していたということもあり、わたしたちの活動には期待をしてくれていると確信しています(ハミダシ隊は、2015年度の部会参加者も加わり現在は6人)。

ハミダシ隊と経営層の対話の様子

ハミダシ隊と経営層の対話の様子

CHECK~目的をもって進めること、続けることの大切さ

 2014年度からの2年間の活動を通じて感じたことは、組織を良くしたいと思っている仲間がたくさんいること、そして、経営層も思いは一緒であるということです。一方で組織や人の意識を変えることの難しさも痛感しています。

 大事なことは、目的をしっかり持って活動を継続すること。歩みを止めずに、少しずつでも前に進むことだと分かっています。

 2016年5月、ハミダシ隊でミーティングを行い、6回のオフサイトミーティング(うち1回は退職予定者をゲストに迎えて実施)、3回の経営層との対話、9回の通信発行などこれまでの活動を振り返りながら、向かうべき方向性を確認するため、「ハミダシ隊のありたい姿、あるべき姿」について対話しました。そこで「わたしたちは組織(市役所)を良くするために活動をしている」という原点に立ち返り、ハミダシ隊のクレド(行動指針)を『わたしたちは、「庁内環境に効く、ハミダシ菌(善玉)」でありつづける』としました。

 また、2016年度の活動目標は、『オフサイトミーティングでの対話の結果(施策など)を行動(現実)にする』とし、具体的な年度内の活動計画も作成しました。

 これまでの、対話の手法を学びながら思いを語り合うだけのオフサイトミーティングから、対話を変革につなげるためのオフサイトミーティングとするシナリオを描き、その実現のために活動をしていきます。

退職予定者をゲストに迎えたオフサイトミーティング

退職予定者をゲストに迎えたオフサイトミーティング

ACTION~終わりのない研究、継続する活動

 わたしたちは、ありたい姿にするために、職員研修として組み込んでもらうという方法を現時点ではとっておりません。自主活動で取り組むからこそ、組織や職員個人の本当の変化を起こせること、それにより職員一人ひとりと地域住民の「本当の笑顔」がもっとたくさん見られる日がくるのではないかと信じています。

 大変なことかもしれません。時間がかかることかもしれません。だからこそやりがいがある!とわたしは考えています。

 庁内に「ハミダシ菌」を増殖させながら、一歩ずつ、より良い方向に向かうようにハミダシつづけます。

最後に~「あなた自身のありたい姿」とは

 これまでの部会での研究やハミダシ隊としての活動、運営委員として部会参加を通じて思うことは、組織のことを考えて語り合っていると、最終的には「人」というところに行きつくということ。

 組織や組織の中での自分の「ありたい姿、あるべき姿」の前に、まずは一人ひとりが「自分の人生において自分自身がどうありたいか」を本気で考え、「そのための行動」を実践すれば、おのずと組織も良くなるのでは……と、ときどき思考が飛んでしまいます。

 わたしは、部会で学んだ経験を活かしながら、組織の一員として、ハミダシ隊として、自分自身として、これからも自分と向き合い、自分を高めながら、仲間とともに地域や組織が良くなるように考え、行動していきます。

 部会への恩返しのため、そして何よりも、わたし自身のありたい姿を実現させるために。

岩手県一関市 市長公室政策企画課 松谷俊克さん

岩手県一関市 市長公室政策企画課 松谷俊克さん

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■早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会とは
安倍内閣が目玉政策として進める「地方創生」をキーワードに、「地方」「自治体」のあり方に改めて注目が集まっている。市民との協働や官民連携が重要になっている中で、特に職員の働きが大きな鍵となっている。これまで自治体では民間の手法を用いた「スキルアップ」は数々試行されてきたが、本来的に必要なのは意識改革であり、人や組織を巻き込むことのできる人材が求められている。早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会では「人材を変え、組織を変え、地域を変える」ことを目的に、立ち位置を変え、主体的に動き、思い込みを打破するリーダーを育成することを目指している。
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