【一歩前に踏み出す自治体職員~ありたい姿の実現を目指して~】
第17回 マネ友とともに一隅を照らす! (2016/3/30 静岡市 財政局税務部 駿河市税事務所 係長 大石誠)
「人材を変え、組織を変え、地域を変える」ことを目的に自治体職員のリーダーを育成する実践的な研究会「早稲田大学マニフェスト研究所 人材マネジメント部会」受講生による連載コラム。研修で学び得たもの、意識改革や組織変化の実例などを綴っていただきます。第17回は静岡市 財政局税務部 駿河市税事務所 係長の大石誠さんによる「マネ友とともに一隅を照らす!」をお届けします。
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人材マネジメント部会との出会い
私は2013年度、早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会(以下人マネ)ベーシックコースに参加し、2015年度は静岡会場で運営委員をさせていただきました。
人マネに参加した当初は人材育成の部署に配属されており、参加する前年から自分が参加することが決まっていました。2012年度のマネ友のダイアログに参加させてもらいながら、一体何ができるのだろうかと考えていたのを思い出します。
しかし、実際に自分が人マネに参加してみると、外から見ていたのとは大違いでした。そんな中、静岡市はもう何年も参加しているのに過去のマネ友とのつながりがあまりないのではないかということを感じ始めました。
人マネコミュミニティの創造
そこで当時、SNSが流行し始めていたことあり、フェイスブックで静岡市のマネ友グループ「しずマニ」(秘密のグループ)を作ることにしました。目的はその年のマネ友の活動を紹介していくことで、過去また未来のマネ友とつながりを作っていくことでした。グループ作成後、少しして人マネ幹事団もグループにお招きしたところ、出馬幹也 部会長から静岡県内のマネ友まで広げてみてはどうかという提案をいただいたことで、静岡県全体のマネ友まで広げることができました。現在では、静岡会場に参加される自治体のマネ友や、それぞれの地域で活躍されているマネ友にも参加していただいています。
その成果として、ベーシック参加者や過去のマネ友が継続している取り組みの見える化が進みました。静岡市でも縦のつながりが強化され、その年の参加者だけでなく過去のマネ友とのダイアログ、共働の機会が増えました。もちろん、他の自治体との横のつながりも強化されました。同じ地方会場で、共に学ぶマネ友がそれぞれの場所で頑張っていることを知るのは、非常に励みになるということを実感しています。
また、2014年度から静岡会場の人マネ望年会ということで、現役参加者と過去のマネ友が一緒になってダイアログと懇親会を、第1回は浜松市、第2回は掛川市で開催することができました。
部会参加を終えて一歩踏み出す
2013年度のベーシック参加が終わると、論文に書いた通り、部会参加者への支援と自治体内へのダイアログ(対話)の普及を目的として、自主研究グループ「しずマニ」をマネ友とともに立ち上げました。
2014年度は夜間講座を企画し、平和教育・地雷・小型武器・子ども兵の問題に取り組む国際協力NPO「テラ・ルネッサンス」の鬼丸昌也さんを、初めて静岡にお招きしました。この夜間講座「こうして僕は世界を変えるために一歩を踏み出した」は静岡市のマネ友の運営のもと、約60人の参加を得て開催することができました。
この時も講義を聴くだけでなく、周りの方とダイアログしてもらうことでお互いの感じたことを振り返り、気づきを共有する時間を作りました。参加された方の感想として「ダイアログがあったことで、より多くの意見、価値観を共有することができた」「前へ向いて一歩踏み出そうという気になった」など、多くの勇気の出るコメントをいただきました。
2014年度は、静岡市で出馬部会長による「所属長研修」開始元年でもあり、この夜間講座も職員約60人の方が参加され、静岡市のダイアログ文化普及に貢献できたと思います。とはいえ静岡市は組織も大きく、全体に行きわたるまで時間が掛かると思いますが、そこは「微力ではあるが無力ではない」という鬼丸さんの言葉を胸に活動を継続していきます。
運営委員として腕を磨く
そして、2015年度、学びと実践の継続のため、運営委員として部会のお手伝いをさせていただくことを決意しました。ベーシックに参加していた時の想いをもう一度思い出すことができました。この1年を通じての大きな気づきは、対話の手法としての「ファシリテーション」の奥深さでした。ファシリテーターの唯一の武器は「問いかけ」であると教えていただきました。この「問いかけ」こそ今年の自分のテーマでした。
単なるグループワークの司会進行ではなく、参加者が対話の中で深掘りできるような「問いかけ」、一人称で考えるための「問いかけ」、部会参加者の内発的な気づきを促すような「問いかけ」など、その重要性について身をもって体験しました。ダイアログの中でついつい話したくなる自分を抑え、沈黙の時間を耐える。それはとても難しく感じましたが、部会参加者の真剣なダイアログに身を置き、研究、実践できるということは貴重な経験となりました。組織や地域に貢献していくには、これからも腕を磨き続けていかなければなりません。まさに「人マネに卒業なし」です。
そして人マネはつづく
「自治体は別でもマネ友は仲間です」最初の部会で聞いた言葉です。今まさにそれを実感しています。運営委員だったこともあって、2015年度はマネ友が活躍されている地域へ足を運び、頑張っている姿を見る機会も多かったです。そのたびに勇気をもらい、励まされ、また頑張ろうという気持ちが沸々と湧いてきます。
人マネに参加してから3年、やっと見えてきたものもあります。ベーシックの時にはただがむしゃらに1年間走ってきましたが、1年経ち、2年経ち運営委員として参加して思うのは、他人を巻き込むに値する人間になろうということです。行動を継続することで他人に信頼される自分になれば、活動できる範囲が組織のなかにおいても地域でもさらに広がっていくはずです。その結果、つながりのないところにつながりを作り、対話により新しい価値を生み出すことで組織を感化し、皆が笑顔の「ありたい姿」に近づけたいと思います。
- ■早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会とは
- 安倍内閣が目玉政策として進める「地方創生」をキーワードに、「地方」「自治体」のあり方に改めて注目が集まっている。市民との協働や官民連携が重要になっている中で、特に職員の働きが大きな鍵となっている。これまで自治体では民間の手法を用いた「スキルアップ」は数々試行されてきたが、本来的に必要なのは意識改革であり、人や組織を巻き込むことのできる人材が求められている。早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会では「人材を変え、組織を変え、地域を変える」ことを目的に、立ち位置を変え、主体的に動き、思い込みを打破するリーダーを育成することを目指している。