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【一歩前に踏み出す自治体職員~ありたい姿の実現を目指して~】

第2回 組織変革に向けた一歩一歩~良きことはカタツムリのようにゆっくり進む~ (2014/12/19 神奈川県茅ヶ崎市企画部企画経営課主任 足立悠)

「人材を変え、組織を変え、地域を変える」ことを目的にリーダー育成する、自治体職員のスキルアップ研究会「早稲田大学マニフェスト研究所 人材マネジメント部会」受講生による連載コラム。研修で学び得たもの、意識改革や組織変化の実例などを綴っていただきます。第2回は神奈川県茅ヶ崎市企画部企画経営課主任 足立悠さんによる「組織変革に向けた一歩一歩~良きことはカタツムリのようにゆっくり進む~」をお届けします。

人材マネジメント部会への参加

 人材マネジメント部会には、3人1組で組織変革プラン1年間検討するベーシックコース、参加者1人1人の課題認識・行動を定め、グループコーチングを実施し参加者の挑戦を後押しするアドバンスコースの2つのコースがあります。

 私は2013年度にベーシックコース、そして2014年度はアドバンスコースに参加し、やらされ感・虚無感等がない「ほんとうの笑顔が生まれる職場を作る」ことをテーマに「対話を用いた業務計画・業務棚卸の実施」や「適正な業務分担」「神奈川県内人マネ参加自治体の学びの場の創出」といった取り組みに挑戦しています。

ダイアローグによって得られるもの。自分は…

 人材マネジメント部会ベーシックコースでは、各研究会にてさまざまなテーマでダイアローグ(対話)を行いますが、その他にも「夏期合宿」や「リベンジ発表」などの大イベントがあります。

 夏期合宿では、所属する自治体の組織変革プランを発表し、幹事団からの指摘や他自治体からのコメントをもらいます。そして秋のリベンジ発表で組織変革プランを練り直し、再度発表します。「リベンジ発表」というと、厳しい指摘をいただいた幹事団へのリベンジと思いがちですが、「自分自身へのリベンジ」となります。

 夏期合宿前には参加者3人でダイアローグを重ね、理事者や所属長との対話を通じ、自分たちの組織のありたい姿は何か、現状はどうか、今何をやるべきなのかを検討します。しかし、幹事団からの指摘を振り返ると、自分たちの検討内容が「他者に任せるもの」や「自分たちが取り組みやすいもの」であると気付かされます。

 大事なことは、「自分はどうしたいのか」「自分は何をするのか」=「一人称で捉え、語る」こと、つまり物事を自分事として捉えることであり、こうした考え方が研究会への参加やダイアローグを重ねることにより習慣化され、「ありたい姿」を考え、「現状」を分析し、「取り組むべきこと」を洗い出すプロセスを日常業務でも用いるようになります。

 このような結果、過去の経緯、やり方に基づく「事実前提」ではなく、今考えられる最善の方策を取るという「価値前提」思考が身に付くと言えます。

ダイアログ研修風景

ダイアローグ研修風景

熱意だけでは、人は、組織は動かない

 ベーシックコース参加時には、夏期合宿、リベンジ発表を通じ、多くの組織変革プランを3人で検討し、理事者や全部局長に説明する機会をいただきました。当事者としては、「これだけ時間をかけて検討してきたものだから何かしら各部局で取り組んでもらえるのでは」と甘い期待がありましたが、結果は散々でした。

 理由は1つ、「熱意だけでは、人は、組織は動かない」ということです。ほどよい熱意と理解、納得感、共感が必要なのです。理解してもらい、納得してもらい、共感してもらい始めて行動に至る、道の遠さを実感しました。さまざまな職員と対話を行い、市役所をより良くするためのプランを検討していたはずなのに、いつの間にかプランに固執してしまい、ただの熱意の押し売りになっていました。

 大事なのは、常に相手の立場に立って考える、いわゆる「立ち位置を変える」ことであり、組織を変えるのは簡単ではないという当たり前のことに気付いた瞬間でした。

 そのような中、職員課から「新採用職員向けにダイアローグを実施してほしい」との言葉をいただきました。小さな手ごたえを感じた瞬間でした。

 当日は、「住民から信頼される地方公務員とは」をテーマとし、ダイアローグの実施、発表、そして振り返りを行いました。初めてのダイアローグに若干戸惑いも見せていましたが、時間が経つにつれ各々が積極的に発言し、きちんと成果物もできあがり、「傾聴」「相互理解」がより深い対話を生み出すことを、日常業務でも上司・先輩と対話してみることを伝えました。

一歩ずつ前へ

 いま、私は毎年度作成する業務計画や業務棚卸し評価について、特定の職員が作成するのではなく、職員1人1人が参加し、対話を重ねながら作成できるよう準備を進めています。

 また、人材マネジメント部会に参加する県内自治体と意見交換や懇親を深める場を設け、困った時、行き詰った時に相談し合える関係を強めたいと思っています。

 そして、今年もベーシックコースに3人の職員が参加しており、「人事異動時の管理者との対話」を提言し実現させるとともに、昨年度の参加者と6人で自主研究グループを立ち上げ、「どうすればより良い職場になるか」をテーマに新採用職員向けのダイアローグ研修を実施いたしました。

 今後は「思いの伝承」をテーマに、退職される部長による講話を開催します。企画書を持って依頼に行くと、皆さん乗り気であり、多くの職員に参加してもらい、新たな気付きを得られるよう取り組みたいと思います。

 「より良い組織にしたい」という思いを持っていても、個人1人でできることは限られています。しかし、取り組みを進めていくと、少しずつ仲間や理解者が増え、より良い組織になるための歩みを進められているのではと感じています。

終わりに

 人材マネジメント部会は、「研修」ではなく「研究会」という名称を用いています。これは、単発で座学により理念等を教えてもらうものではなく、自らが問題を設定し、ありたい姿に向け、終わりのないゴールに向け継続的に一歩踏み出していくものだからです。

「良きことはカタツムリのようにゆっくり進む」

 私自身、これからも一歩踏み出し続け、「ほんとうの笑顔」があふれる職場を作り上げたいと思います。

新採用職員ダイアログ研修成果物(左)、神奈川県茅ヶ崎市企画部企画経営課主任 足立悠さん(右)

新採用職員ダイアローグ研修成果物(左)、神奈川県茅ヶ崎市企画部企画経営課主任 足立悠さん(右)

■早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会とは
安倍内閣が目玉政策として進める「地方創生」をキーワードに、「地方」「自治体」のあり方に改めて注目が集まっている。市民との協働や官民連携が重要になっている中で、特に職員の働きが大きな鍵となっている。これまで自治体では民間の手法を用いた「スキルアップ」は数々試行されてきたが、本来的に必要なのは意識改革であり、人や組織を巻き込むことのできる人材が求められている。早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会では「人材を変え、組織を変え、地域を変える」ことを目的に、立ち位置を変え、主体的に動き、思い込みを打破するリーダーを育成することを目指している。
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