第1回 ダイアローグで学んだ私の変化~人材マネジメント部会を経験して~  |  政治・選挙プラットフォーム【政治山】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
トップ >  記事 >  連載・コラム >  早大マニ研 人材マネジメント部会 連載 >  第1回 ダイアローグで学んだ私の変化~人材マネジメント部会を経験して~

【一歩前に踏み出す自治体職員~ありたい姿の実現を目指して~】

第1回 ダイアローグで学んだ私の変化~人材マネジメント部会を経験して~ (2014/11/27 長野県伊那市総務部総務課主査 唐木玲)

「人材を変え、組織を変え、地域を変える」ことを目的にリーダー育成する、自治体職員のスキルアップ研究会「早稲田大学マニフェスト研究所 人材マネジメント部会」受講生による連載コラム。研修で学び得たもの、意識改革や組織変化の実例などを綴っていただきます。第1回は長野県伊那市総務部総務課主査 唐木玲さんによる「ダイアローグで学んだ私の変化~人材マネジメント部会を経験して~」をお届けします。

人マネとの出会い~これまでの自分から

 29歳のとき、自分が生まれ育った伊那市の職員になりました。公務員に対しては、世間から否定的な意見を聴くことが多いですが、伊那市役所で働き始めて、組織の中で一生懸命働く先輩の姿を目の当たりにし、よい職場に就職したと感じたことを覚えています。

 就職してからの私は、伊那市の職員として自分自身のあり方を、心のどこかで探し続けてきました。それは、自分自身の日常の行動や、将来の自分の姿を、明確にイメージできないという一抹の不安があったからでした。しかし、確答があるわけでなく、また、誰かに問いかけるわけでもなく、考えるきっかけすら得ないままに時が流れていました。

 基礎自治体の職員の行動規範となるような原理原則に出会いたいと強く感じ始めたのが、採用から10年を迎えるころです。市役所の外へ出て、様々な活躍をする人の話を聴いて、自分を確立したいと考えました。早稲田大学マニフェスト研究所の主催する人材マネジメント部会(以下「人マネ」)の案内を見たのが、ちょうどその時でした。

 伊那市は、それまで人マネへ未参加だったので、案内を読んだだけでは分からないことばかりでした。それは、「人材マネジメント」という聞きなれない言葉、具体的に何をするのか分からない1年間の日程、3人1組での参加という、通常の「研修」と趣が違う案内だったからです。それでも、きっかけを求めて所属に参加を申し出ました。

人マネでの気づき~新たな学びから

 いま振り返ると、2013年4月に東京で行われた人マネ第1回研究会では、出馬幹也部会長のオリエンテーションの話は、ほとんど頭に入りませんでした。なぜなら、聴くことのほとんどが、これまで自分が意識してこなかった事柄ばかりだったからです。この日は、北川正恭先生の講演も含めて、聴いたことをただ必死にノートに記しただけで終わりました。

 その中で、第1回研究会で1つ気づきを得ました。それは、「ダイアローグ」に出会ったことです。相手の話をよく聴くこと、そして共感することが話し合いの基礎と説明があり、今の自分に最も欠けていることだと意識したことを覚えています。

(左)伊那市のマネ友とダイアローグ、(右)職員同士のダイアローグの様子

(左)伊那市のマネ友とダイアローグ、(右)職員同士のダイアローグの様子

人マネから実践へ~ゲリラ的な取り組みであるけれど

 人マネの研究会では、各回の終わりに次回までの課題が出されます。この課題に取り組む過程で、同じ自治体のメンバー3人でダイアローグを繰り返しました。初めは暗中模索しながらの実践でしたが、課題に対して3人がそれぞれの感じることを話して共有すること、その中で新たな気づきを得ることを繰り返しました。そうやって課題に対して深く掘り下げていくと、この過程を自分たちだけで独占してはいけないと感じ始めました。

 主に2つの実践に取り組みました。

 まず初めに取り組んだのは、人マネでの学びを伊那市職員に周知することでした。メンバー3人で分担して、「研修通信」を庁内ポータルサイトに掲載し始めました。

 続いて、伊那市職員にダイアローグに触れてほしいと感じました。トップダウンとかボトムアップでなく、そこに集ったメンバーがフラットな状態で話すことで気づきを得る、そして新たな行動へつなげていく、そんな機会を味わってほしいという思いでした。

 ダイアローグのテーマ設定には、無理やり感を与えない工夫が必要でした。まずは、自発的に参集してもらえる場づくりを3人でダイアローグして、シナリオを作りました。その実践の様子は、こちらの記事に詳細がありますのでご覧ください。

【早大マニフェスト研究所連載/マニフェストで実現する『地方政府』のカタチ】ダイアローグ(対話)により組織変革のムーブメントを作る~伊那市役所職員有志の取り組みから~

実践から得たもの~私の変化、そして次へつながる一歩へ

 人マネへの参加は、私にとって大きな転機になりました。それは、北川正恭先生や幹事の皆さんから得た多くの学びや、研究会で出会うそれぞれの自治体で実践をする仲間の存在が心の支えになったことは間違いありません。

 そして、自分自身が取り組むことになった研修通信の発行やダイアローグの場づくりを通して、自分の組織における仲間の存在を確認できたこと、加えて、自分の進む道に一筋の光が見えたことが、私にとって財産になったと感じています。

 心のどこかで、1人でこんなことやっても無駄だろうと思い込んでいたことが、人マネを通じたわずか一歩の取り組みによって、今後につながる勇気を与えてくれたことは間違いありません。また、引き続き、明日への一歩につなげていきます。

長野県伊那市総務部総務課主査 唐木玲さん(右)、幹事と先輩マネ友と交流

長野県伊那市総務部総務課主査 唐木玲さん(左)、幹事と先輩マネ友と交流

■早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会とは
安倍内閣が目玉政策として進める「地方創生」をキーワードに、「地方」「自治体」のあり方に改めて注目が集まっている。市民との協働や官民連携が重要になっている中で、特に職員の働きが大きな鍵となっている。これまで自治体では民間の手法を用いた「スキルアップ」は数々試行されてきたが、本来的に必要なのは意識改革であり、人や組織を巻き込むことのできる人材が求められている。早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会では「人材を変え、組織を変え、地域を変える」ことを目的に、立ち位置を変え、主体的に動き、思い込みを打破するリーダーを育成することを目指している。
関連記事
ダイアローグ(対話)により組織変革のムーブメントを作る~伊那市役所(2014/6/19)
職員の意識変革の第一歩として、職員自主勉強グループの立ち上げを~佐賀県庁(2014/5/15)
「気づき」の連鎖を作り自治体職員のやる気に火をつける~熊本県庁(2014/3/13)
人材マネジメントで『地方政府』を実現する(2013/12/12)
人材マネジメントによる職員の意識改革が地域を変える~相馬市役所(2013/7/11)
関連リンク
早稲田大学マニフェスト研究所 人材マネジメント部会
facebookページ