都市との格差解消、日本から学べ―日中交流で農村リーダー育成へ (2017/5/10 日本財団)
農村のリーダー育成に向け交流事業
福建省と日本財団、日中友好基金
中国・福建省と日本財団、笹川平和財団・日中友好基金室の間で中国の農村リーダーを育成するユニークな事業が動き出しています。都市部との大きな格差を抱える中国農村部の発展に向け、日本の農村部から教訓を学び取るのが狙い。3年計画で双方の交流を進め、成果を本にまとめ中国国内で広く共有する方針で、7月にも第一陣の視察団が来日する予定です。
同様の交流事業は2009年から3年間、やはり福建省との間で都市部のコミュニティーリーダーの育成を狙いに行われ、日本の介護保険など社会保障から自治会組織、防災、子どもの通学安全、ゴミの分別収集まで中国側にも参考になる日本の取り組みが確認され、今回はその実績を基に、気候風土が日本と似ており、過去の事業で人脈的つながりもある福建省の外事弁公室との間で新たに農村交流を行うことになりました。
日本では1950年代から1970年代にかけ過剰人口を抱えた農村の2男・3男が都会に出て高度成長を支える一方、父親の出稼ぎで農村には子供と老人が残される問題も発生。さらに高度成長を支えた昭和一ケタ生まれ世代の引退後は都会への若者流出で過疎が進み、65歳以上の人口が過半を占める「限界集落」問題など農村の荒廃が深刻化、農村を中心にした地方創生が急務となっています。
これに対し最高指導者・鄧小平氏の改革開放政策以来、経済発展が続く中国では大都市と農村部の格差が急速に拡大、両親の出稼ぎによる保護者不在の“留守児童”問題など農村の問題が深刻化し、農村の社会基盤を整備しながら格差解消、農村の「都市化」をどう進めるかが大きな課題となっています。
こうした中で4月14日から5日間、日本財団の尾形武寿理事長らが福建省を訪問、竜岩市の武平県、長汀県、連城県のほか泉州市の徳化県を回り、農村づくりのモデル地域に指定されている村落や開発状況などを視察、各県の幹部や対外的な交流を担当する外事弁公室の関係者と今後の交流の進め方などについて意見交換しました。
近く訪問先などが決まる予定で、現時点では行政の末端組織である郷や鎮のリーダー10数人が3年間で計3回にわたり日本の農村などを訪問、例えば青果物では品種改良や流通経路など市場の開拓、食の安全確保などを学ぶことにしています。
一行には北京に本社を置く中国社会科学文献出版社の謝寿光社長も同行、日本の都市と農村の格差が中国に比べ小さい点などを挙げ、「中国の農村の健全な発展を図る上で、日本の農村から学び、参考にすべき点はたくさんある」と語っています。
最終日の18日には福建省外事弁公室の王天明主任とも懇談、王主任は「中国は昨年まとまった第13次5カ年計画で都市と農村の一体化を打ち出し、農村を豊かにする都市化を目指している」と説明、これに対し尾形理事長は「いい面も悪い面も実際に来て見てもらうのが一番早い」と事業に対する期待を述べました。
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