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小学生が自分たちの地域を取材―「うみやまかわ新聞2016年度版」完成 (2017/3/7 日本財団)

小学生が自分たちの地域を取材、執筆
海・山・川と深く結び付いた日本学ぶ

海と島でできた日本を、全国の子どもたちが、新聞づくりを通して学ぶ「うみやまかわ新聞2016年度版」が完成し2月19日(日)、東京都内で展示・発表会が開催されました。本年度は全国14カ所で、小学校の総合学習や地域の課外活動として、うみやまかわ新聞づくりが実施されました。発表に臨んだ児童の代表は、自分たちが暮らす地域を取材することで、その暮らしが海や山、川と深く結び付いていることに気付き、記事を書く体験をすることにより新聞づくりの大変さを知った、とそれぞれ話しました。

展示・発表会参加者全員で記念撮影

展示・発表会参加者全員で記念撮影

うみやまかわ新聞は、「島を知ることは日本を知ること」をコンセプトに活動するNPO法人離島経済新聞社(東京都世田谷区)と日本財団が、2014年度から共同事業としてスタートさせた教育プログラムです。地域学習やキャリア教育の一環として「多面的・総合的にものごとを捉える力」「コミュニケーション力」「他者と協力する態度」「つながりを尊重する態度」「情報メディアの基本知識」などを総合的に学ぶことができるカリキュラムです。

(写真左)完成した「うみやまかわ新聞2016年度版」/(写真右)会場に展示された新聞の中面

(写真左)完成した「うみやまかわ新聞2016年度版」/(写真右)会場に展示された新聞の中面

離島経済新聞社によると、6,852島からなる島国・日本には、多様な「海」「山」「川」があり、歴史や文化を育んできた「水のつながり」があります。そんな日本をつなぐ海と山と川をキーワードに、14年度から本年度までの3年間、全国各地の児童が「地域」「新聞づくり」「情報通信技術」などを学びながら、自らが暮らす地域を取材し、新聞づくりを行ってきました。完成発表会はこれで3回目です。

長崎県対馬市立豊小学校代表の発表の様子

長崎県対馬市立豊小学校代表の発表の様子

本年度は北海道から沖縄までの小学校11校と3地域が、うみやまかわ新聞の各地方版づくりに参加。地域の小学校、教育機関、団体、民間コーディネーターの協力の下、テーマを掲げて「うみ」「やま」「かわ」に関するデータを取材して集め、離島経済新聞社の編集長、編集スタッフ、カメラマンなど新聞づくりのプロの指導を受けながら、それぞれの地方版を完成させました。

沖縄県うるま市立津堅幼・小・中学校の発表の様子

沖縄県うるま市立津堅幼・小・中学校の発表の様子

完成した新聞を携えて児童の代表やサポート役の地域コーディネーターが、東京都墨田区押上の東京スカイツリータウン 東京ソラマチの会場に集結しました。最初に離島経済新聞社の鯨本(いさもと)あつこ統括編集長が「無事に新聞が完成し、こうして一堂に会することができて、とてもうれしく思います。どんな思いで新聞をつくってきたのか、実際に新聞を手にして今どんな感じでいるのか、今日の発表で聞けるのを楽しみにしています」とあいさつしました。

滋賀県近江八幡市立沖島小学校の発表の様子

滋賀県近江八幡市立沖島小学校の発表の様子

この後、幼稚園・小学校・中学校合わせて24人の、沖縄県うるま市立津堅幼・小・中学校の代表による「沖縄県うるま市津堅島版」の発表をトップバッターに、小学校11校と3地域の代表児童が、自分たちのテーマや、地域の魅力、原稿書きの苦労、達成感、などを次々に発表しました。東京まで出向いた代表者にテレビ会議システムを通じて、地元から応援メッセージを送る学校も5校ありました。

鹿児島県和泊町立大城小学校6年生代表の松下直飛君と山田奈々華さんは、全校児童47人の小さな学校だからこそ、全員が家族のように仲良く助け合いながら楽しく学校生活を送っている。さんごが隆起してできた沖永良部島には伝統と自然が数多く残されている。このことを全国の人に知ってもらいたいと思い「さんごの島」というテーマを立てた。6年生10人が今回「鹿児島県和泊町沖永良部島版」づくりに取り組んだ、と紹介しました。

その上で、新聞づくりを通して、事実を伝えなければならない責任感と記事を書く難しさを感じた。間違った情報を新聞に載せることができないということは、とてもプレッシャーになった。だからこそ取材をする時に一字一句聞き逃すことができないぞ、と真剣に聞くことができた、と話しました。

(写真左)鹿児島県和泊町立大城小の児童が、テレビ会議システムを通じて地元から応援/(写真右)発表をする大城小の松下直飛君(左)と山田奈々華さん

(写真左)鹿児島県和泊町立大城小の児童が、テレビ会議システムを通じて地元から応援/(写真右)発表をする大城小の松下直飛君(左)と山田奈々華さん

記事の執筆についても、読み手のことを意識して書くことは、あらためて難しいなと思いった。知っていて当たり前のことをどう表現すればいいのか悩んだ。下書きの段階で先生から何度も校正が入り、新聞社に提出してからも校正が入り、赤い原稿用紙を見るたびに心が折れそうになった、と打ち明けました。さらにインターネットを通じて他地域の人と交流して、それぞれの地域に素晴らしい歴史、伝統、自然があると思った。このことを知ることができたのは新聞づくりのおかげだ、と述べました。

離島経済新聞社の鯨本あつこ統括編集長

離島経済新聞社の鯨本あつこ統括編集長

長崎県対馬市の最北端で、全国でも大陸に最も近い同市立豊小学校は全校児童23人。うち5~6年生8人は、テーマ「上対馬と韓国の今と昔、そして未来へ」を掲げて<長崎県対馬市版>の作成に挑戦しました。新聞を読んだ人に感じてもらいたいことは、上対馬と韓国は距離的にも、貿易や観光の関係でも大昔から近いということ。新聞づくりを通して学んだことを基に「2000年続く境界交流の歴史」というキャッチフレーズをつくった。上対馬の人たちの63パーセントが韓国の観光客を好意的に思っている。この新聞記事を通して、これから少しでも韓国のことを好きになってくれる人が増えてほしい、と男女3人の代表が呼び掛けました。

すべての発表の後、鯨本さんは「自分の暮らす地域とほかの地域との違い、逆にそのつながり、自分の地域にある自慢したいことは何か、そんなところを意識してもらえると、とても面白いと思います。日本には本当にいろいろな地域があります。いろいろな地域を見る。そして自分の地域のことをもっと探ってみる。そんな面白さを感じてください」と話しました。最後に鯨本さんが、各学校・地域の代表に修了証を手渡し、児童・支援者全員で記念撮影をして、16年度の制作事業を終了しました。

〔2016年度参加小学校・地域一覧〕

<北海道利尻町利尻島版>
テーマ:利尻のひみつ
制作:利尻町青少年リーダーの会「若葉」4~6年生

<千葉県いすみ市版>
テーマ:明るい未来咲くいすみ市
制作:いすみ市立太東小学校6年生

<東京都江戸川区葛西地区版>(2クラス)
テーマ:ごみを減らしてバリアフリーの進んだ町に
制作:江戸川区立二之江第三小学校6年1組
テーマ:人に親切なまち
制作:江戸川区立二之江第三小学校6年2組

<長野県木曽町版>
テーマ:木曽の宝物を未来へつなげ!
制作:うみやまかわ新聞編集部木曽町支局5~6年生

<山梨県北杜市版>
テーマ:山紫水明の王国、北杜
制作:うみやまかわ新聞編集部北杜市支局4~5年生

<滋賀県近江八幡市沖島版>
テーマ:びわ湖と沖島
制作:近江八幡市立沖島小学校3~6年生

<岡山県真庭市落合地区版>
テーマ:Future of the project 目指せ落合のタイムトラベラー
制作:真庭市立落合小学校6年生

<愛媛県上島町版>
テーマ:上島町の未来を考えよう
制作:上島町立弓削小学校6年生

<高知県佐川町尾川地区版>
テーマ:うけついでいく佐川の風景
制作:佐川町立尾川小中学校5~6年生

<長崎県対馬市版>
テーマ:上対馬と韓国の今と昔、そして未来へ
制作:対馬市立豊小学校5~6年生

<大分県日田市中津江・上津江版>
テーマ:自然からはじまる津江の輪
制作:日田市立津江小中学校6年生

<鹿児島県屋久島町口永良部島版>
テーマ:自然とともに生きる口永良部島
制作:屋久島町立金岳小学校4~6年生

<鹿児島県和泊町沖永良部島版>
テーマ:全国に知ってほしいさんごの島
制作:和泊町立大城小学校6年生 

<沖縄県うるま市津堅島版>
テーマ:恵みがいっぱい豊かなビティ島
制作:うるま市立津堅幼・小・中学校3~6年生

●うみやまかわ新聞 ウェブサイト

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