英国の里親支援プログラム研修―子どもとのより良い関係に向けて (2016/2/27 日本財団)
英国の先進的プログラム研修会開催
まずは促進するファシリテーター養成
英国で開発された里親支援のためのプログラム「フォスタリングチェンジ・プログラム」を促進するファシリテーターを養成するための研修会が2月20日から5日間の予定で、東京・赤坂の日本財団ビルで開催されています。プログラムを里親と子どものより良い関係作りに役立てるのが狙いで、プログラムを日本に紹介し研修会のアドバイザーも務める長野大の上鹿渡和宏准教授は、「様々なスキルが盛り込まれており、日本に合った形でプログラムを発展させたい」と語っています。
フォスタリングチェンジ・プログラムは様々な理由で親と暮らせない子どもの7割が里親のもとで生活する英国の専門チームが1999年に開発した里親のためのトレーニングプログラム。虐待などで心に傷を負った子どもが起こす問題行動に里親が適切に対応し愛着形成を図ることで、里親と子どもの関係改善に著しい効果を発揮し、英国各地で活発な研修会が開催されているということです。
研修会は日本財団の主催で、同種の研修会は昨年3月の福岡市に次いで2回目。大阪や静岡、横浜、長野、仙台などの乳児院や児童相談所、こども相談センターなどで里親支援に取り組む22人が参加しています。
プログラムは「子どもの行動の理解の記録」、「肯定的なしつけと限界設定」など12のセッションで構成され、研修会でまず、これを実践できるファシリテーターを育成し、彼らを通してプログラムを里親に普及させるのを目的としています。里親が実際に身に付けるには週1回1セッションで約3カ月掛かる計算。ファシリテーターによる地区ごとの研修会が順次、計画される見通しです。
研修会には英国でプログラムのトレーナーとして活躍するキャシー・ブラッケビィさんとキャロライン・ベンゴさんの2人が講師として来日、5日間にわたりプログラムを学ぶほか、思春期の子どもへの対応にプログラムをどう生かすかといった特別研修も行い、最終日に修了証が手渡されることになっています。
日本では2015年3月時点で6,000人弱の子どもが里親のもとで生活する一方、約3万人が乳児院や児童養護施設で暮らしています。ここ数年、増加傾向にあるとはいえ里親委託率は16%とオーストラリアの93%、米国の77%、韓国の44%などに比べ、極端に低い数字で推移しています。
このため政府は2011年、里親委託ガイドラインを作り、家庭的な環境で子どもを育てる里親制度を強化、施設偏重を見直す方針を打ち出していますが、些細な原因による反発・反抗や不登校、夜遊びといった子どもの問題行動に直面する里親家庭は20%を超すとも言われています。
フォスタリングチェンジ・プログラムには、時に効果的に褒め、時には選択的に無視するといった、子どもの問題行動に対応し関係を改善するための膨大な情報を一冊にまとめた「里親トレーニングプログラム」も用意されており、上鹿渡准教授は「例えば里親が1日10分間、子どもに真剣に寄り添うだけでも両者の関係は劇的に変わります」と今後の成果に期待しています。
●ハッピーゆりかご プロジェクト ウェブサイト
●日本財団ハッピーゆりかごプロジェクト~子どもたちにあたたかい家庭を~
- 日本財団は、1962年の設立以来、福祉、教育、国際貢献、海洋・船舶等の分野で、人々のよりよい暮らしを支える活動を推進してきました。
- 市民、企業、NPO、政府、国際機関、世界中のあらゆるネットワークに働きかけ、社会を変えるソーシャルイノベーションの輪をひろげ、「みんなが、みんなを支える社会」をつくることを日本財団は目指し、活動しています。
- 関連記事
- 養子縁組家庭の子ども、70%が「自分自身に満足」
- 「水着を買えず授業を休む…子どもたちの貧困は遠い国のことではない」
- 子どもと高齢者の予算配分は1対7、貧困は「可哀想」ではなく「経済問題」
- 学校になじめない子どもはどこへ―インタビュー特集 「ROCKET」(上)
- ソーシャルイノベーション関連記事一覧