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【衆議院議員選挙2014】

第21回政治山調査「主婦の半数強が棄権?戦後最低投票率の更新も」(2/2) (2014/11/28 政治山)

内閣不支持につながる政策分野

 このように、本調査の回答者である主婦層の、第2次安倍内閣の実績に対する評価や、現在の日本の景気・家計状態に関する認識は、非常に厳しい。そのことが、先に見た内閣支持率の低さに結びついているかどうかを確認するため、統計的な分析を行ってみた(分析手法についての説明は割愛する)。

 その結果、「医療・介護」「外交・安全保障」「景気・雇用対策」「原発・エネルギー政策」「消費税増税」の5項目について、評価が高い人ほど第2次安倍内閣を支持し、評価が低い人ほど支持しないという傾向が見られた。また、現在の日本の景気について、良くなったと感じている人ほど内閣を支持し、悪くなったと感じている人ほど支持しないという傾向も確認された。つまり、本調査に回答を寄せた主婦たちの多くは、経済(景気)、原発・エネルギー、税制(消費税)といった政策分野における第2次安倍内閣の実績に対する不満から、内閣を積極的には支持できないという態度を表明したと考えられるのである。

「投票には行かない」が「自民党候補者への投票」を上回る

 主婦の間での第2次安倍内閣に対するこうしたシビアな見方は、来る衆院選で、与党にとって望ましくない結果を生むことにつながるのであろうか。調査では、「来る12月14日(日)に予定されている衆議院議員総選挙についてお伺いします。あなたは、今度の衆院選で、候補者の名前で投票する小選挙区では、どの政党の候補者に投票しようと思っていますか」という質問を行った。その回答の分布は表1のとおりである。

<表1>次期衆院選の小選挙区で、どの政党の候補者に投票しようと思っているか

選択肢 割合
投票には行かないつもりだ 10.3%
自民党の候補者 9.6%
民主党の候補者 3.3%
維新の党の候補者 1.7%
公明党の候補者 1.7%
次世代の党の候補者 0.3%
みんなの党の候補者 0.2%
共産党の候補者 3.0%
生活の党の候補者 0.2%
社民党の候補者 0.3%
その他の政党の候補者 0.1%
無所属の候補者 0.6%
まだ決めていない 59.2%
わからない 9.5%

 明確な意図を表明した人の中では、「投票には行かないつもりだ」という回答者の割合(10.3%)が最も高く、「自民党の候補者」に投票するつもりと答えた人の割合(9.6%)をも上回っているのが特徴的である。その一方で、野党各党(非自民・非公明)の候補者への投票意図を表明した人の割合は、合計しても9.1%と、与党(自民党・公明党)の候補者への投票意図を表明した人の割合(11.3%)に及ばない。つまり、調査の段階で表明された投票意図を見る限りでは、ここまでの分析から予想されるような与党にとって望ましくない選挙結果が生じる可能性は低いと考えられる。

5割超が棄権、前回記録した戦後最低投票率の更新も

 もっとも、7割近くの回答者が「まだ決めていない」(59.2%)、「わからない」(9.5%)としていることから、主婦層の投票行動の帰趨は、これら投票意図未定の人々が実際にとる行動によって決まるということになる。そこで、統計分析の手法を用いて 、これらの回答者がとる行動を予測してみた。その結果をまとめたのがグラフ4である(%の分母は、分析対象者全体(n=994)である)。

(グラフ4)衆院選投票意図(予測値)

 調査で投票意図を表明した人に関しては、この分析モデルからは、自民党・公明党候補への投票意図が11.4%、非自民・非公明の各党候補への投票意図が9.2%、棄権(投票には行かないつもり)が10.4%と予測された。表1の数字とほぼ一致していることから、この分析モデルの精度はかなり高いと言える。一方、ここで注目する投票意図未定の回答者に関しては、自民党・公明党候補への投票が10.4%、非自民・非公明の各党候補への投票が11.3%、棄権が47.4%と予測された。言い換えれば、来る衆院選での投票行動について調査の段階で「まだ決めていない/わからない」と回答した69.4%の人のうち、3分の2強(68.6%)は、棄権することになると予測されたのである。

安倍内閣への不支持が野党を利するとは限らない

 この分析結果からは、主婦層の第2次安倍内閣に対する見方がかなりシビアであるにもかかわらず、彼女らの行動が与党に不利に働くことにはならないと予想される。その理由は次の2点に求められる。

 第1に、野党が統一候補を立てられていないということである。分析にあたり、便宜的に民主党・維新の党・次世代の党・共産党など野党各党を「非自民・非公明」としてまとめた。このため、自民党・公明党の候補者への投票意図の割合と非自民・非公明の候補者への投票意図の割合が拮抗しているように表面上は見える。しかし実際には、共産党は各選挙区に独自候補を立て、またその他の野党各党間の選挙協力も必ずしもうまくいっていないことから、非自民・非公明の各党候補への投票は分散する。その結果、このグラフに表れている以上に、主婦層の投票先に関して自民・公明と野党各党との間の差は大きくなると考えられるのである。

 第2に、第2次安倍内閣への厳しい評価が、野党への投票ではなく棄権に結びついているということである。自民党・公明党への批判票の受け皿になり得る野党が存在しないことで、内閣を積極的には支持できないと考える主婦層の票が行き場を失い、その結果、棄権という消極的な形での不満の意思表示が増える。そうした棄権の増加が、結果的に与党を利することになると考えられるのである。

棄権という消極的な不満の意思表示にも、真摯に向き合う施政を

 多くの識者が指摘するように、今回の衆院選では棄権に回る人がかなりの数に上ることが見込まれる。主婦層の意識と行動を分析した本小論の分析結果も、その見方に合致する。

 実際に戦後最低の投票率を記録するような低調な衆院選になった場合、自民・公明両党が過半数議席を獲得し、政権を継続できたとしても、選挙後に成立する新政権は、心に留めておくべきことがある。それは、少なくとも主婦層は、現政権のこれまでの実績を必ずしも肯定的に評価していないということである。棄権という形での消極的な不満の意思表示を甘く見ると、手痛いしっぺ返しを食らうことになるだろう。本小論で示された主婦層が抱く、そして主婦層に限らず国民各層が抱く、現政権に対する不満の種を摘み取る施策を打つことを、新政権には期待したい。

<著者>今井 亮佑(いまい りょうすけ)
1977年京都府生まれ。2000年東京大学法学部卒業。2002年東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了、修士(法学)。選挙・投票行動研究、世論調査分析が専門。主な業績に、『原発政策を考える3つの視点 震災復興の政治経済学を求めて③』(共著、早稲田大学出版部)など。

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