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台風が明らかにした選挙制度の課題―高まるインターネット投票への期待 (2017/11/6 政治山)

 10月22日に投開票日を迎えた第48回衆議院議員選挙は、台風21号の影響により投票時間の繰り上げが行われたり、投票用紙の搬送が間に合わず開票作業が翌日に持ち越されるなど、現行の選挙制度が抱える課題を浮き彫りにする結果となりました。

 この事態を受けて、野田聖子総務相は24日の閣議後の記者会見で「電子投票やインターネット、マイナンバーカードを活用した取り組みの研究を始めたい」と述べました。

 なぜ実現しないのかといった疑問の声が寄せられることも多いインターネット投票ですが、有権者はどのように考えているのでしょうか。政治山では「台風の影響によって衆院選の開票作業が大幅に遅れたことを受けて、野田聖子総務相は電子投票やネット投票の研究に言及しました。ネット投票を導入すべきだと思いますか?」といった内容で、政治山ユーザーにアンケートを実施しました。

 その結果、「導入すべき」59.4%と「どちらかというと導入すべき」18.2%をあわせた肯定的な意見は77.6%でした。一方、「導入すべきでない」14.2%と「どちらかというと導入すべきでない」8.3%をあわせた否定派は22.5%で、ネット投票を導入すべきとの回答が大きく上回りました。

 現在一部の自治体で導入している電子投票は、投票所内で電子機器を用いて投票を受け付けるもので、投票データを記録した媒体(MO)を開票所に搬送したうえで集計しているため、今回のような記入済み投票用紙の搬送事情による開票の遅れを防ぐことはできません。

参考:疑問票ゼロ、按分なしの電子投票

 また、台風による繰り上げ以前から、約4万5000カ所の投票所の3分の1に当たる約1万5000カ所では2~4時間、最大で3日間の繰り上げが予定されており、ソロモンや南スーダンでは公示日の翌々日(10月13日)に投票が締め切られています。

参考:衆院選、ソロモンと南スーダンの投票期間は2日間―在外投票の実態とは

 総務省ではこれまでに「投票環境の向上方策等に関する研究会」などでネット投票についても議論を重ねていますが、ネット投票の実現に欠かすことのできない本人確認をマイナンバーカードを用いて行うべきとの方向性を示しています。2020年には在外邦人がネット投票できるように、と内閣府の「マイナンバー制度利活用推進ロードマップ」には記載されていますが、現状ではマイナンバーもマイナンバーカードも海外で用いることはできません。

 今回の選挙では、台風の影響で外出を控えたため投票できなかったという子育て中の親御さんの声や、海外赴任して間もない急な選挙だったため選挙人登録が間に合わなかったという声も聞かれました。「投票したくとも投票できない人がいる」という現実を踏まえ、ネット投票の実現に向けて、必要な法整備や技術の検証を着実に進めていく必要があるのではないでしょうか。

政治山クリックリサーチ(2017年10月25日~10月31日実施)

回答数:303
調査期間:2017年10月25日~2017年10月31日
調査方法:政治山クリックリサーチ(択一方式の簡易アンケートシステム)

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