吉田豊六戸町長「一票の正確性を保つために電子投票続ける」 (2016/1/19 政治山)
青森県六戸町で17日、町議会議員補欠選挙が行われました。国内では同町と岡山県新見市の2つの自治体で電子投票が実施されています。同日行われる予定だった町長選で無投票による7選を果たした吉田豊町長に、電子投票の意義についてうかがいました。
投票の意思を無駄にしてはならない
- 記者
- 六戸町では2004年の町長選から電子投票を実施されていますが、町長のお考えになる電子投票のメリットをお聞かせください。
- 町長
- 電子投票最大のメリットは正確性にあります。有権者の意思は投票結果に正しく反映されなければなりません。そのためには、誤記入や誤読、読解不能によって生じる不明票や按分票を無くす必要があります。開票や集計など事務作業の効率化もありますが、正確性こそが最優先されなければなりません。
- 記者
- 2002年の電磁記録投票法施行以降、電子投票は最大10の自治体で実施されてきましたが、現在では2自治体のみとなっています。今後も電子投票を継続していくのでしょうか。
- 町長
- 継続していきたいと考えています。確かに実施する自治体は減少し、議員から「よそがやらないのに何故うちだけやるのか」と言われることもあります。それでも町民には受け入れられているし、事故も起きていません。何より、不明票や按分票をなくす取り組みは行政としての責務ともいえるのではないでしょうか。
現行制度に縛られず、民意に耳を傾ける工夫を
- 記者
- 今回の町議補選では42票の無効票が生じています。投票時のタッチパネルに「投票しないで終了する」との選択肢がありますが、これは事実上、白票を投じる行為と受け取ることができます。白票にも意味があるとお考えですか。
- 町長
- 投票所にわざわざ足を運んで選択している以上、有権者の意思表示として真摯に向うべきです。投票に行くか行かないかは大きな違いです。やむを得ない事情があって投票できない人以外は、ぜひ投票に行ってほしいと思います。
- 記者
- 公職選挙法では投票する際に候補者名を直筆で記入する「自書」を定めていますが、どう思いますか。
- 町長
- 自分の名前を書いてもらうことにありがたみを感じるのは事実です。しかし、それは候補者側の事情であって、有権者側の事情ではありません。現に高齢者や障害者にとって投票所で候補者名を自書させることはかなりの負担を強いることとなります。高齢者に電子機器を扱えるのかとの意見もありましたが、電子投票では90過ぎの方でも何ら不自由なく投票しています。
18歳選挙権はやや性急、主権者としての自覚を
- 記者
- 今夏の参院選から選挙権年齢が18歳に引き下げられます。新たに選挙権を取得する若者には、どのように選挙にかかわってほしいと思いますか。
- 町長
- ただ与えられた選挙権には意味がないと思います。まずは選挙権の意義や未来への責任を理解し、有権者としての自覚を養うことが必要です。もちろん、今の有権者すべてがその自覚を有しているとはいえません。私たちも襟を正さなければなりませんが、自分たちの未来は自分たちでつくるんだという自負をもって選挙と向き合い、投票に行ってほしいと思います。
- 吉田豊(よしだ ゆたか) 青森県六戸町長
- 1950年六戸町生まれ、65歳。東京農大卒。町議会議長を経て1996年の町長選に初当選。3期目途中の2005年、近隣町との合併協議会離脱を巡って解職請求(リコール)運動が起き辞職。出直し町長選で当選した。2016年1月17日執行予定だった町長選で無投票による7選を果たす。
- <聞き手> 市ノ澤 充 株式会社パイプドビッツ 政治山カンパニー シニアマネジャー
- 政策シンクタンク、国会議員秘書、選挙コンサルを経て、2011年株式会社パイプドビッツ入社。政治と選挙のプラットフォーム「政治山」の運営に携わるとともにネット選挙やネット投票の研究を行う。政治と有権者の距離を縮め、新しいコミュニケーションのあり方を提案するための講演活動も実施している。