「プッシュ型」商品券の動向 (2022/7/12 マイ広報紙)
この記事は「マイ広報紙」に掲載した記事などを紹介し、コメントしたものです。
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各地域で、家計の負担緩和や消費の下支えなどを目的に商品券施策が実施されており、広報紙にもしばしばその案内が掲載されます。今回はその中から、住民からの申込不要で商品券を配る「プッシュ型」商品券の取り組みを取り上げて紹介します。
この7月に発行された広報紙では、以下のような商品券情報が掲載されています。
▽愛知県東郷町 広報とうごう 2022年7月号
「みんながお得!! TOGOエールチケット」
▽秋田県五城目町 広報ごじょうめ 令和4年7月号No.1056
全町民へ1万円分の商品券の配布や低所得の子育て世帯へ5万円を支給
▽東京都福生市 広報ふっさ 令和4年7月1日号
「《予告》市独自の2つのコロナ・物価高騰対策事業」
※「福生市シニアお買物券」が「プッシュ型」に該当
自治体の発行する商品券は、「購入型」と「プッシュ型」の2種類に分けることができます。
「購入型」は、多くの場合に事前の申込が必要です。各地域で案内されている「プレミアム付商品券」がよく知られていますが、これがまさに「購入型」で、購入時に商品券の代金に利用額が上乗せされます(※)。人気のプレミアム付商品券では申込者の抽選が行われる場合もあります。
(※)プレミアム付商品券の例:1万円で購入でき、1万5000円分利用できる(5000円分がプレミアムとして上乗せされる)。
一方の「プッシュ型」は、自治体が申込や申請を受けることなく、条件を満たした人に配布する商品券です。その特徴を以下にまとめます。
- 住民は手続き・購入不要で商品券を受け取れる。
- 購入不要であるため、申込受付・抽選・販売の事務が発生しない。
- 購入不要であるため、昨今のコロナ禍対策のような、販売所での感染リスクへの対応が不要になる。
- 購入不要であるため、購入型よりも生活困窮者に優しい。
- 購入型と比較すると、購入額分が無いため経済効果が小規模。
- 希望しない人にも届いてしまい、発行した商品券に無駄が生じる。
- 自分で購入したものでないため、使われる確実性が比較的低い。
昨今、自治体や官庁等の行政の経済対策という文脈では、対象者に能動的に支給する「プッシュ型」が注目されています。「プッシュ型」の給付が子育て世帯への給付金等で既に実施されているのは周知の通りです。
さらに、商品券を郵送で住民に届ける方法からデジタル商品券をオンラインで付与する方法にシフトすることで、速やかに対象者を支援できる「プッシュ型」のメリットが高まっていきます。冒頭の3自治体の他にも、商品券のデジタル化の進展とともに「プッシュ型」の広がりが予想されます。
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