オフィスはどこまで進化を続けるのか (2019/2/1 瓦版)
【オフィス進化論:最終回】
ラボ的要素も備えるイトーキの新オフィスは社員の能力最大化にフォーカス。機能性に留まらず、空間としての品質にもこだわっている。作業を加速させる設備が整い、快適であれば十分ともいえるが、イトーキでは物理的にも技術的にも可能な限りの究極を目指している。
空間としての快適さを極限まで追求するワケ
空気、水、光、フィットネス、食べ物、快適性、こころ。同社はこの7テーマで、オフィスの品質面を追求する。どれだけ機能性を追求しても、そこが空間として快適でなければ最高のパフォーマンスを発揮できないとの考えからだ。
職場にいるのは労働力でなく人間。そうした当たり前の側面にもしっかりと目を向けば、職場が不快で劣悪な空間であるなら、本能的に危険を感じるハズである。ほこりまみれで薄暗く、じめじめしたような職場で生産性を高めようとするのは無理がある。
つまらない仕事でさえ、そこでやると楽しくできてしまう――。もはやハードとしての職場は、そこまで妥協なく磨き上げていかなければ、存在意義はないといっても過言ではないかもしれない。オフィス以外にも働く場所の選択肢が増えた以上、働く側が空間としてオフィスにそこまで求めたとしても、なんの不思議はない。
常に予約で埋まっているリゾートホテルがある。そこではリラックスを求めて訪れる顧客を最大限にもてなしてくれる。ロケーション、受付、ホテルマン、居室、スパ、料理、ベッド、アメニティ…。どんな些細なことでもストレスフリーな仕様で、利用者は心から満足する。そして「リラックスする」という目的を果たし、ホテルを後にする。仕事場であるオフィスが同様に「最高の仕事を実現する」という目的を果たしてくれる場であれば、そこで働く者の生産性が最大化されることは自明だろう。
300年前、大量生産に効率的に対応するために生まれたオフィスの概念。皆が同じ場所に集まって仕事をするというスタイルはいまも有効ではある。だが、当時と大きく異なるのは、そこで求められることが効率以上に付加価値にシフトした点だ。そこに集う様々な社員が、それぞれの個性をぶつけ合い、創造的なアイディアを生み出す。その源となるのは、部署や階層にとらわれない活発なコミュニケーションだ。
仕事のカタチの変化と比例して進化するオフィスの未来形
テクノロジーの進化で、今後、大量生産型の流れ作業は人間から機械やAIにシフトしていく。それにより、人はより人間らしい仕事に時間を割けるようになる。いわゆる社畜からの脱却へと大きく前進する。まだまだ進化の余地を残すオフィスにとっての目下のテーマは、いかに人間らしさを引き出す場になれるか、といえるだろう。答えは一つではないが、そこへ向かって試行錯誤しながら、着実にその理想形に近づいていく。
「オフィスを取り巻く環境は大きく変化しているが、今後もずっとなくなることはないと考えている」。イトーキのオフィス変革プロジェクトを指揮した藤田浩彰氏は明言した。そうだとすれば、どんなに仕事内容や社会環境が変化しても、オフィスは進化を続け、働く者にとって仕事を推進してくれる場であり続けるはずだ。(了)
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