働き方改革でオフィスはどう進化していくのか (2019/1/9 瓦版)
オフィス進化論 その一
300年前からのオフィスの変遷
世界初のオフィスビルは英・ロンドンの東インド会社のものといわれる。貿易商社として一時代を築いた同オフィスでは大量の書類が作成され、それに伴う情報が集積。まさにヒトによるリアルな集積回路のようにそこでのやり取りによって、情報が効率的に伝達され、オフィス自体がハードとして生産性の向上に大きく寄与していた。
300年近く前の出来事だが、この画期的なスタイルがその後、社員が職場に集まって仕事をするというワークスタイルとして長く定着することになる。もっとも、大量の書類をさばく激務で自殺者が出たともいわれ、過重労働による心身不調やストレスは、当時から充満していたようだ。
日が昇れば目を覚まし、腹が減ったら飯を食い、日が暮れたら床に就く。自然と共生しながら、本能の赴くままに日々を過ごしていればストレスも発生しようがない。だが、人工的な環境の中で受動的に同じ作業を繰り返すことは、著しく生物としての本能に逆らうことになる。変調をきたすのも無理からぬことなのだろう。
オフィスが会社員に与えた様々な影響
日本初のオフィスビルは、東京・丸の内の三菱一号館といわれる。1894年に竣工された。レンガ造りの外観は西洋風で重厚な雰囲気。以来、130年にも満たないと考えれば、日本のオフィスビルの歴史はまだ浅いといえるのかもしれない。
もっとも、日本初のオフィスビルが重厚で財閥系だったことは、その後の就職観に多大な影響を与えたことは間違いないだろう。つまり、有名な会社に入り、都心の立派なオフィスで働くことがすごいこと、というエリート意識の醸成だ。これがいいことだったのかはともかく、高度経済成長を支えたメンタル面の要素として小さくない影響はあったといえるだろう。
立地とビルの規模がそのまま企業のステイタスと同義といえる時代が長らく続いたが、この潮流にも少しずつ変化が訪れる。1990年代の第三次ベンチャーブームの頃には、勢いづいたベンチャー企業がオフィスにバーを設置するなど、従来のカタチにとらわれない職場づくりを大胆に実施。特に採用面でアピールすべく、洒落たオフィスづくりに惜しみなくコストをかける風潮が出始める。
このころにはいわゆる大企業も様々な職場改革に着手。フリーアドレスや在宅勤務等も少しずつ取り入れられるようになる。大きくは大量生産から少量多品種生産へのシフト、そしてネットの普及による場所と時間の制約が解かれたことがその要因といえる。固定の席や空間の仕切りをなくすなど、組織のフラット化に併せるようにシマ型から脱却する職場が増え始めたのもこのことと無関係ではないはずだ。
2011年以降は在宅勤務も珍しくなくなり、最も生産性が高まる場所が“職場”という認識の企業も増え始める。子育てママなら自宅、外回りの多い営業マンは外出先…など、必ずしもオフィスへ足を運ぶ必要がないことが明確に認識され始める。昨今はオフィスなしで経営する企業が登場、コワーキングスペースが増殖するなど、オフィスの進化は社会構造の変化や組織論とも密接に連動しながら加速。3世紀前とは大きく異なる環境や社会/産業構造の変化の中でうごめきながら、日々最適なカタチを模索し続けている。(続く)
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