就活アウトローの就業を全面バックアップする「プレ経営者」とは (2019/1/30 瓦版)
高学歴や協調性があることが、就活で有利に働く要素であることは多くの人が認めるだろう。では、そうでない人が、実はものすごいポテンシャルがあるとしたら…。残念ながら、そうした隠れ有能人材が日の目を見る機会がほとんどないのが、日本の就活戦線の現状だ。
アウトローのポテンシャルを引き出す社会実験
もちろん、本当に才能があるかどうかは分からない。そこでさきごろ、大胆な社会実験の場を用意したのが、NPO法人のキャリア解放区だ。はみ出し者の居場所確保に独自の就職ルートを開拓する同組織は、2013年の設立からこれまでに累計620人のアウトローの就職支援を行ってきた。
今回、同組織が新たに用意したのは、「プレ経営者」という選択肢だ。どんなものか。その名の通り、「経営者」を体験するという社会参加だ。もう少し正確には、飲食店を、店長として大幅な権限を持って運営する。
通常、飲食店店長をするには、FCに加盟し、本部の指示や管理に従う必要がある。本部に利益還元することが軸だからだ。安定感はあるが、個人に例えれば、正社員。縛りが多く、息苦しさは否めない。ましてや、体験するのは就活からはみ出したアウトロー。そこで、同組織ははみ出し者でも順応できる斬新なFCシステムを考案した。
「今回のアウトロー用のFCは一言でいえば自律分散型になります。従来のFCのように本部の指揮命令は基本なく、店舗の運営は加盟店として参画するキャリア解放区との業務委託契約とし、裁量は大幅に若者に移譲。従って、独自の店舗運営も可能で、頑張った分だけ報酬がアップする仕組みです」と同組織代表理事の納富純一氏はその仕組みを解説する。
斬新なシステム構築を後押ししたのは、同プロジェクトに提携企業として参画する和僑ホールディングス。新しい「和」を提案すべくチャレンジを続ける同社が、キャリア解放区のコンセプトに賛同。FCの常識を覆す自律分散型の店舗運営を全面バックアップしている。
元ニートがFC運営する飲食店第一号
「飲食業はブラックといわれ人手不足だが、実は働きたくても働けない人もたくさんいる。そうした埋蔵人材を活用することである程度軽減される側面はある。今回、社会実験として、従来のFCでは考えらない仕組みを考え抜いて考案した。これがうまくいけば、次に続くアウトローがどんどん出てくると確信している」と飲食業界の風雲児の異名を誇る同社、高取宗茂氏は熱く語った。
「社会実験」というように、同社にはFC本部としての利益はほとんどない。その本部と加盟店契約を締結するキャリア解放区もリスクを背負っている。「プレ経営者」はその意味で、やる気のあるアウトローにとっては、最小リスクで最大リターンを得られるビッグチャンスといえる。
一号店(東京・新橋)を切り盛りするのは24歳の2人の若者。服飾専門学校を経てデザイン関係の仕事で働いたのち、疲弊してニートになった内村瞳氏と有名私大を卒業後、就活せずにバイトなどで“社会勉強”していた渡辺竜政氏。ともにアウトロー就活に参加している中で今回のプロジェクトを聞き、手を挙げた。
「大学卒業後、バイトしながらプラプラする生活でヒマしていたので、このプロジェクトに参加した次第です」と飄々と語った渡辺氏。その口ぶりとは裏腹に厨房では真剣なまなざしで焼き鳥の仕込みをするなど、風格たっぷり。内村氏もてきぱきと接客をこなし、「余裕ができたら店のユニフォームをつくってみたいですね」と小さな野望も明かした。
納富氏の試算では、順調に運営すれば会社員以上の報酬も得られるといい、そうなれば成功体験が好循環し、社会人として躍動するきっかけになるだろう。他のアウトローへの波及効果も確実で、同店がアウトロー再生工場として、大きな意義を持つことになる。「まずは一号店を成功させることが重要」と気を引き締める納富氏だが、その目はしっかりと先を見据えていた。
- 関連記事
- デジタル時代をスマートに生きる情報発信の作法
- 香港から見える日本のリアル(1)『大卒以外の選択肢~非大卒就職支援「HASSYADAI」の事例から』
- 東京の役割はカーストからのリセット―ヤンキーの人生をビジネスで変える
- インターンシップ参加者の獲得競争激化の中、知名度の低い企業はどうすべきか
- 離職率100%を目指す会社の狙いとは