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【後編】「チームで仕事をする時、自分の理念を掲げた瞬間にハラスメントになる」・ふかわりょう(芸人) (2018/10/17 マネたま

失敗ヒーロー!

華々しい成功の裏には、失敗や挫折がある。その失敗エピソードから成功の秘訣をヒモ解く『失敗ヒーロー!』。今回ご登場いただくのは、お笑い芸人、DJとさまざまなステージで息長く活躍されているふかわりょうさん。後編では、その活躍ぶりにますます注目度が高まっているMCの仕事へ対してのマインドやチームで仕事をする時の意識や大切にしていることについて語っていただきます。

視聴者との信頼関係があれば「予定調和」はいらない

――『5時に夢中!』では、例えばタモリさんのようにふかわさんご自身も“白米”のような存在なのでしょうか?

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ふかわりょう
1974年8月19日生まれ、神奈川県出身。在学中の1994年に芸能界入り。現在、TOKYO MX『5時に夢中!』MCのほかTBS『ひるおび!』コメンテーターなどお笑いタレントの枠にとどまらない活躍で注目を集め続ける。ROCKETMAN名義でDJとしても活動。

ふかわりょう(以下、ふかわ):白米の日もあれば、のり弁の日もあり、炊き込みご飯の日もあります。唐揚げには炊き込みご飯は合わないなとか、微妙な周波数のチューニングは自分なりにしているつもりです。だから、ゲストや曜日によって微調整しています。何気なく映っているようで、毎日モードが違います。僕としては、いちいち盛り上げて終わりたくないんですよ。そこに川のせせらぎがあって欲しいというか。例えば収録ものの番組では15秒に1回、安定した笑いがあるような感じですが、そういうものにしたくはないなと。これはあまり関係ないのですが、笑顔の数で人生の豊かさを測るかのようなCMがあるじゃないですか? ああいうのを見ていると嘘っぽくて嫌な気持ちになるんですよ(笑)。

――「嘘のない自分でいたい」と先ほど(前編)もおっしゃっていましたよね。

ふかわ:嘘はつきたくないですね。ある程度は必要かもしれないけど、予定調和では終わらせたくないんです。無難な笑いで終わるくらいなら、クシャクシャになって終わったほうがいい。でもそれは、視聴者を信頼しているからなんです。視聴者との信頼関係って大事だと思うんですよ。喋ったことにテロップを付けたりするのは、親切なようで逆に視聴者を信用していないのではないのかなとも思います。「ここまでしないとわからないだろう」って。僕としては、過度に色を付けなくてもわかりますよねっていう想いや信頼が大切だと思います。

――それを視聴者も感じるのでしょうね。だからこそ面白いし、生って楽しいんだなと思いました。

ふかわ:僕自身、押し付けられるのが一番の苦痛なので。でも嘘をつけない性格だと大変なんですよ。みんなが絶賛している映画を同じように賛同できなかったりして(笑)。

下手な下準備は「失敗」になる

――苦手な現場や、失敗談などがあれば聞かせてください。

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ふかわ:苦手な現場はないですね。強いていえば、事前に台本を読むと気になる箇所が出て、始まる前にエネルギーを使い過ぎてしまう。それって不毛だし、周囲にも悪影響。MCをやるようになってから「こうしたらいい」「ああしたらいい」とスタッフに言うのを全部止めました。演者の番組への愛情は、スタッフからしたら重い場合もあるし、厄介だと思ったんです。それに『5時に夢中!』が、整然としたきれいな1時間になったところで、誰が望んでるんだろうって。だから下手な下準備は自分にとっては失敗というか、いいことがなかったですね。根本的にそれは自信のなさから来ていたんだなと思います。だから今は、出たとこ勝負。バラエティなども当日楽屋に入るまで、極力何もしません。

――瞬発力、ライブ感も磨かれそうですよね。

ふかわ:DJにしても最低限の準備はするんですが、どういう箱でどういうジャンルで、機材は……と、チェックしようと思えばいろいろできてしまうんです。でもいざ行った時に、足りないものがあるとそれに気を取られて不安定になるし、オーガナイザーを責めたくなってしまいます。それはやっぱり不毛なことですよね。だから「できる範囲でやります」という向き合い方に変わりました。目の前のものをただ受け入れるだけ。下手にリサーチはしない。そんなわけで今回の取材の企画書も全く読んでないです(笑)。マネージャーを信頼しているので。

チームで仕事をする時、自分の理念を掲げた瞬間にそれはハラスメント

――受けていただけて良かったです(笑)。「マネたま」の主な読者層である30代の方々はチームで仕事をすることも多いですが、何かアドバイスはありますか?

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ふかわ:出たとこ勝負であっても、仕事はチームでするものです。チームで頑張る時こそ、自らの理想を押し付けるのは危険だと思います。自分が舵をしっかり握っているよりも他の人に握らせたほうがいい。力を抜いた時に、新たな力が作用し始めると思うので。僕も芸能界にしがみつく力をふと離した時、振り落とされるかと思いきや、逆に浮力が働くようなところがあったので。DJも1人で繋ぎ方の美学や美意識に酔ってしまいがち。なんなら『つなぎ表』みたいなのを用意しちゃうんですよ。それはそれで価値があるのかもしれないけれど、自分のなかでは違うなと思っていて。それで成功したところで、何の意味も感じなくなりました。出たとこ勝負でスタートして、結果、うまくいかなかったとしてもいい。勝利の方程式を毎回やるよりも、心の充足感が生まれました。それはチームプレイにしても、有効だと思うんですよね。

――DJにしても予定調和ではなくて、フリージャズっぽいような感じなんですね。

ふかわ:お笑いでも、必ずオチに着地してなくても……という気持ちがあって。ただこれは自分の理想です。人と仕事をする時、自分の理念を掲げた時点でハラスメントになるし、正義を振りかざすのは見苦しいと思います。自分が思っているなら、実際に自分でやればいい。今はすぐ人を糾弾しますよね。チームメイトのミスも、責めても意味がない。褒めろということではなくて、傷口に塩を塗る必要はないと思います。わかっていなかったら言うべきだとは思いますけど。

マネジメントで大切なのは「見返り」を求めないこと

――たしかに今は人に厳し過ぎる部分もありますよね。では、ふかわさんにとってのマネジメントとは何でしょうか?

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ふかわ:あきらめること、それだけです。受け入れるという表現もできるかもしれないですけど、ほとんどのことを、あきらめる。変に期待すると、いいことないんですよ。期待すると、現実との落差に気持ちが濁るし、めんどくさくなる。実際、完璧を目指すといいことがなかったんです。うまくいかないと嫌だし、人は認めてもらいたいと思うでしょう? でも「そもそも世の中は僕に何を期待しているのか?」と(笑)。だから、期待すること自体がエゴだと感じたんです。それは決してネガティブなことではないですよ。あきらめて「こんなもんか」というところから入るんです。好きなことをやらせてもらっているという気持ちがあるから、これ以上期待しなくてもいいと思える。ただ僕も、努力は放棄しているわけではありません。こだわりは、むしろ増している気がします。大切なのは、見返りを求めないことだと思っています。

提供:マネたま

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