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【前編】「『普通』と言われ続けたことで気づけた『何者でもない』自分像」・ふかわりょう(芸人) (2018/10/16 マネたま

失敗ヒーロー!

華々しい成功の裏には、失敗や挫折がある。その失敗エピソードから成功の秘訣をヒモ解く『失敗ヒーロー!』。今回ご登場いただくのは、お笑い芸人、DJとさまざまなステージで息長く活躍されているふかわりょうさん。TOKYO MX『5時に夢中!』、AbemaTV『AbemaPrime』に続きBSフジの音楽番組『OTOSEN』でも新たにMCに就任し、近年はMCとしてもますます注目されています。“芸人”と括るに括れない、掴みどころのない独特の魅力。その秘密を探ります。

「普通」と言われることがコンプレックスだった

――ふかわさんの芸能界入りは大学生の時ですよね。周囲では就職する方がほとんどだったと思うのですが、芸人になることに迷いはありませんでしたか?

ふかわりょう1

ふかわりょう
1974年8月19日生まれ、神奈川県出身。大学在学中の1994年に芸能界入り。現在、TOKYO MX『5時に夢中!』MCのほかTBS『ひるおび!』コメンテーターなどお笑いタレントの枠にとどまらない活躍で注目を集め続ける。ROCKETMAN名義でDJとしても活動。

ふかわりょう(以下、ふかわ):高校生の時に、20歳になったら芸能界に入ろうと決めていました。昔からあまり周りの影響を受けるタイプではなかったので、特に迷いはありませんでした。

――ふかわさんと言えば、その芸風を“シュール”と評されることも多いですが、シュールな芸風はデビュー当時から狙っていたものなのですか?

ふかわ:僕は自分の芸を、シュールではなく、リアルなものだと思っています。ただ、エアロビクスのネタをやった時にシュールというタグが付いてしまい、それ以降、勝手にシュールと言われていただけなんですよね。でも徐々にシュールが僕の名刺代わりになったので、自分としては「ま、いっか」くらいに思っていました。

僕がデビューした頃は、「なんでやねん」というツッコミがないものは、とりあえずシュールと言われるような時代だったんです。だから僕もみんながシュールだと言っているものを、いちいち訂正しなくてもいいや、と思ったんです。

――芸風が「誤解」されることに葛藤はなかったのですか?

ふかわりょう2

ふかわ:正直、現実とセルフイメージの乖離のようなものは生まれました。芸人には、名刺代わりのネタだけでずっとやっていくタイプもいれば、ネタはネタとしてやり、バラエティ番組ではキャラが変わるようなタイプもいます。僕は後者のタイプで、バラエティ番組での立ち位置がコントロールできずに、自分のイメージするスタイルと求められるスタイルが乖離してしまいました。最初はやはり、「ま、いっか」と思っていたんですが(笑)、だんだん「ま、いっかじゃないなあ」と思うようになってきて。

――それは何年目くらいのことですか?

ふかわ:芸歴10年目の30歳くらいですかね。当時はいろんな人に「普通だよ、普通」ってさんざん言われていたんです。最初はチクチク胸が痛かったし、コンプレックスでした。芸能界は普通ではない人が多い世界なのに、「普通」ってそれとは対極のことじゃないですか? でも、あまりにも普通と言われ過ぎて、ある時、「普通でいいや」ってタガが外れたようになったんです。むしろ「こんな普通なのに芸能界に居続けるのってすごくない?」みたいに(笑)。

なりたいのは「何者でもない人」

――一方で、ふかわさんには「芸人」という肩書きでは括れない魅力も感じます。

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ふかわ:自分の本能的なところかもしれないですけど、「こうあるべきもの」と“べき論”で語られるものになびかないところがあるんです。だから、何をやっても不可解でしっくりこないというか、どこに行っても違和感があるというか。でも、天性と言ったら大げさですけど、「何をやっても自分はしっくりこない人間なんだな」といい意味であきらめました。それにこの感じは、芸能の世界においては利点や特徴として捉えていいんじゃないか。そういう心境になっていったんですよね。

――DJとしても長年活動されているので、DJとしての印象を強く持たれている方もいるかと思います。その点についてはどう思われますか?

ふかわ:特に何にも思わないです。ピアニストになりたい時期もあったので、音楽への想いはずっとあったんです。高校生の時、お笑いと音楽どっちなんだと考えたことがありましたが、その時に「音楽は趣味。お笑いは80歳まで向き合うもの」と決めました。DJは好きでやっていることだから、そのことをどう思われてもいいんです。「何者でもない人」という表現がありますが、僕自身、どちらかといえばそういう類いに入りたいし、「別に不可解でいいや」と思ってます(笑)。

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嘘のない自分でいたい

――最近ではMCのお仕事ぶりも評価されています。

ふかわ:「何かわからないけど、いるよね」っていう感じなんだと思います。芸能人って、一般の人から見たら芸とは言わないようなものを、切磋琢磨して日々向き合っていると思うんですよ。どこにも教科書がない世界ですから。

――失礼ながら、ふかわさんに切磋琢磨しているイメージはなかったです(笑)。

ふかわ:それはそう思っていただいて光栄です(笑)。何をもって切磋琢磨しているかは、人それぞれですから。まあ「努力」というのも違和感がありますけど、何も考えていないわけではないです(笑)。それに観ている人には切磋琢磨していることを感じ取られないほうが、テレビ的にはいいと思っています。唯一言えるのは、嘘のない自分でいたいということに、僕は一番のプライオリティを置いていることですね。

本当に怖いのは、理解されること

――最近ではMCのお仕事ぶりも評価されています。

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ふかわ:力が入っているものは、テレビ的にはあまり長持ちしないと思っています。そう思うようになったのはタモリさんの影響が大きいかもしれません。『笑っていいとも!』が終わる時、ビートたけしさんがタモリさんを評して「白米的な存在だ」と言われていたことにすごく共感しました。だから、「似合う似合わない、達成できるできない」は置いておいて、自分もそういうタイプでいたいと思っています。「無味無臭なんだけど、なんで出てるの?」って思われていたい。昔の僕ならコンプレックスに感じたかもしれないですけど、ある時からそれでいいと思えるようになりました。それに、この世界で一番怖いのは、飽きられることです。つまり、理解されてしまうこと。だから、ずっと理解されないでいたいという気持ちがあります。

――「普通」のまま売れ続けていること自体がすごいことですよね。

ふかわ:子どもの頃テレビで観ていたゴルフ対決に、たけしさん、タモリさん、さんまさんのいわゆる「お笑いビッグ3」が出ていたんです。さんまさんやたけしさんがワチャワチャやっているなか、タモリさんだけが全然ボケずに真面目にプレーしていました。それを見て、「なんでボケないんだ!」って子どもの僕は苛立ちすら覚えたんですよ(笑)。でもこの世界に入って「あれでいいんだ」って気づいたんです。むしろあれじゃなきゃダメなんですよね。タモリさんからは生き方や思想のようなものを学んだのだと思います。

「欲しがりません、65歳までは」今はずっとパス回しをしている

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ふかわ:僕は今、ロシアW杯での対ポーランド戦のパス回しをずっとやっているような状態なんです。人によってはサッカーをしていないとか、ズルいと思われるかもしれない。でも、自分のなかでパス回しの先にあるビジョンがあるので。

――パス回しの先、次のビジョンはいつくらいに展開されそうですか?

ふかわ:パス回しを止める時は、じわじわ感じるんじゃないですかね。65歳になった時にはもうパス回しはしてないと思います。もっと自由にサッカーをしているはず。その局面で流れに乗っかっているために、今はパス回しをしている最中なんですよ。

――自らシュートを打ちたくはならないんですか?

ふかわ:僕のひとつのこだわりに「目立たない」っていうのがあるんです。これがなかなか難しい。目立ってナンボの芸能界で、あえて目立たない。だからシュートも打たない。全体的なビジョンとして「目立たずに活動する」ということです。経験上、僕の勘は割と間違うことがないので、このまま感覚を信じていようかなと(笑)。

――怖くなる時はないですか?

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ふかわ:ないですね。「欲しがりません、65歳までは」みたいな。65歳までパス回し。そこからガンガン、シュートを打ちますよ(笑)。でもその時にはヨボヨボだから、きっとみんな微笑ましい感じで見てくれるんじゃないですか。だから今はひたすら自我を消す作業をしています。でもたまにラジオに出ちゃうとタガが外れちゃってパーソナリティを困らせたりもするんですよ(笑)。

後編では…
MCとしての番組での立ち振る舞い方やスタッフとの接し方、芸能界におけるご自身のポジションなど、ふかわさんならではの仕事へのマインドなどをさらに詳しくお聞きしました。
<後編へ>

提供:マネたま

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