瀬戸内の島だからこそ提供できる価値と、関わる人が受け取る価値~自分の生き方を創るための選択 第4回 (2018/10/2 nomad journal)
本連載の4回目では、瀬戸内の小豆島で活動しているDaRETOが提供したいと思う価値と、実際に「しまの塾」に参加してくれた人たちが受け取った価値についてお話をさせていただければと思います。
個人が自分の強みを最大限活かし企業や地域が活性化に繋げられることが瀬戸内の島だからこそ提供できる価値
初回の記事でも書かせていただいたのですが、私は「あったらいいな」を実現したくて、起業をしています。DaRETOの由来は「誰と」するのかを大切にしたいから。「しまの塾」に関しても、企業から社員研修という形でお金をいただいてはいるけれど、やはり一番大事なのは「人」だと思う。だから、個人が自分の強みを最大限活かしていく事が、企業や地域が活性化していくことなのではないか、それこそがDaRETOが提供したい価値です。
しまの塾は、いわゆるビジネススクールや、会議室の中の研修とは違って、小豆島を地域も人もまるごと題材にして、1年間のフィールドワークで構成されています。特徴的なのは、講師も参加者も地域で完結する「知の地産地消」を目指しているので、講義後にも新たな関係性ができる可能性があること。今回は、しまの塾に参加している参加者の方の声をお届けします。
- 1.小豆島のことをよく知る、好きになる。
- 島の知らなかった魅力を知り自分でも探すようになりました。
- これまで関わってきた小豆島の企業の方々の商品やイベントなども、以前とは違った視点で見るようになりました。直に触れ合わせていただいている事で、小豆島・小豆島の観光・働く人・特産などを身近に感じるようになりました。
- 島で暮らし続ける事に抵抗を感じ、島外への移住も考えていたが、島にとどまる気持ちの比率が増えました。自分の仕事が小豆島の将来につながっていることに気付きました。
- 自分は島に生まれ育ったので、島の産業のこと等はもう知っていると思っていたけれど、こんなに深く、たくさん頑張っている人たちがいると知り、島ってすごいんだなと思いました。
- 2.人とのつながり、そして人の大切さ
- 地域の方の積み重ねで今があると思うと本当にすごいことだと思う。何か一つのことを続けられるのは自分だけでなく、周りの人の助けがあってこそだと思いました。
- 人のつながりの作り方・大切さ。自分の内に秘めている考えや想いをさらけ出し、共感しあえることで、人のつながりが広く、思わぬ所へつながっていくとわかりました。
- 伝統・文化・産業、必ずそこに人の努力があることを知りました。考え方、人柄を鍛えていきたいと思います。
- 成長や成果は突然目の前に現れないということ。信念や夢に向かって毎日をどう積み重ねていくか、できることから始めようと思います。
- 3.行動すること
- すぐに始めること、最初に始めることが大切だということに気付きました。
- 将来のビジョンをしっかり持ち、どのような人間、どのような職場にしたいか考える事。そこに共有してくれる人を見つけつながる事。思った事は行動することが大事。
- 想像していたことを行動に移す。自社だけの利益を追うのではなく、業界全体の利益に貢献していく。
- 様々な気付きを与えてくれ、いろんな場面で背中を押してくれました。私はひきこもりがちな性質ですが、おかげで以前よりアクティブに島内をめぐるようになりました。
- 4.そして、自分の軸を持つこと
- 自分の芯を見つめる。自分の意見をしっかり持ち、聞く。
- 現在の自分と向き合っていくことの大切さに気付けました。もっともっと能力を磨いて、周りの人々を面白がらせることのできる人になりたいです。
- 自分らしく行動することというのが一番印象に残っていてできるようになりたいと思いました。
- 自分の軸を大切にしたいと思いました。今の会社にしてもこれからの人生にしても、自分が正しいと思うことを否定しないようにします。
今、そしてこれから
至らない部分があることは自分でもよくわかっています。なので、反省を次に活かして、プログラムもどんどんアップデートしていっています。例えば、1期目の2017年度、自分の考えたプロジェクトを実際に行動にうつした人は全体の1~2割でした(バルーンアートを用いたクリスマスイベントを企画して会社にプレゼンし、実際に実行した人。地域のパン屋さんに掛け合って、ご当地パンを作ってもらいパン祭りを企画・開催した人。それはそれは素敵な行動でした)。
小さな変化を感じている人はたくさんいたものの、それはお金を出す側の会社からするとわかりにくい。では実際に行動した人の何が違ったのかを考えたとき、もちろん行動力とか企画力とか色々あるんでしょうけれど、根底の部分で「やってみたら?」という風土が会社にないと、まず実現が難しいことに気付きました。
そこで講師の方からのアイディアで、2期目の2018年度は、社内で行ってみたいプロジェクトを実際に考え、しまの塾内で発表し、そのアイディアを運営側から会社にフィードバックすることにしました。「みなさんが考えたことを、実現に向けてご協力をお願いします。難しければ、どの部分が実現が難しいのか、どうすれば実現ができるのか?をフィードバックしてください」と。さらに、しまの塾内でも、時間を使って、それぞれのプロジェクトの進捗具合をシェアし、お互いがお互いを応援できるようになれたらと思っています。
こんなことを言うのは恥ずかしすぎるのですが、私はDaRETOに関わってくださる皆さんが、自分が望む素敵な人生を送ってくださったら(大変勝手ながら)嬉しいなと思っていて、現在バーチャルシングルモデルと呼ばれる形をとっています。株式会社DaRETOの社員は私ひとりですが、たくさんの人とそれぞれチームを作って、色々なお仕事をしています。制作、ライティング、営業、旅行、ワークショップ開催など、『しまの塾』で関わっていただいている講師の方以外にも、たくさんの方々と一緒にお仕事しています。
性格的に誰かの人生を背負うというのがピンとこないのと、そんな実力がないのももちろんなのですが、このモデルを取っていることで、いつでも対等でいられて相手のペースも尊重できるので、今のところ気に入っています。1年後にはどう変わっているかわかりませんが、またその時々で最良と思う形を選択していけたらと思います。選択をしたら、後は後悔なきよう、精一杯楽しみながらやるだけ。それこそが、自分の人生を創っていくということだと思うのです。
- 専門家:城石 果純
- 1984年生まれ、愛知県出身。小豆島在住、リクルート出身の3児の母。24歳で母親になり「自然がある場所で子育てしたい」と思うようになり2011年に小豆島に家族で移住。3年間高松への船通勤を経て、2016年個人事業主として独立。2017年株式会社DaRETOを起業。現在は、しまの塾・企業研修・各種ワークショップ開催を通し、地域の課題を地域で解決するスキーム作り「知の地産地消」に取り組むとともに、ひとりひとりが主役の世界を創るための活動を実施している。
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