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介護経験者、「長生きは必ずしも良いことではない」と考える人が多くなる―社人研 (2018/8/16 メディ・ウォッチ

関連ワード : 介護 調査 高齢者 

 介護経験者と未経験者で、「長生き」に関する意識を比較すると、介護経験者では「長生きは必ずしも良いことではない」と考える人の割合が多くなる。また、健康上の問題を抱える人では、そうでない人に比べて「長生きは必ずしも良いことではない」と考える割合が多くなる―。

 国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が8月10日に公表した、2017年の「生活と支え合いに関する調査」結果から、このような状況が明らかになりました。

社会保険・社会保障の在り方を考える上で、国民の意識を把握することが重要

 我が国には、年金・医療・介護といった公的社会保険制度、生活保護などの社会保障制度が整備されています。これらは「国民の連帯意識」(互いに助け合う、支え合うという意識)を基礎としており、国民の大半の意識が大きく変容した場合には、制度の根幹が揺らいでしまいます。

そうした中で社人研では、が「社会保障制度の喫緊の課題はもちろん、長期的なあり方、社会保障制度の利用と密接に関わる個人の社会参加のあり方などを検討するための基礎資料を収集する必要がある」とし、昨年(2017年)7月に、18歳以上の個人および世帯を対象に▼暮らし向き▼人と人とのつながり▼就労の状況▼「長生き」の評価▼医療機関等の受診状況―などを調べました。有効回答数は1万369人・1万9800世帯となっています。

調査結果は膨大であり、メディ・ウォッチでは「医療」に関連の深い部分を中心に結果を眺めてみます。

「仕事が多忙」などの理由で医療機関にかかれない人が7.1%

 まず過去1年間における医療機関の受診状況を見てみましょう。過去1年間に病気やケガをした人のうち、「必要だと思うのに医療機関に行けなかった」経験のある人が7.1%いました。

 これを▼就業の状況▼年齢―で区分して見てみると、「65歳未満で仕事をしている」人では11.1%が、必要であるのに医療機関に行けなかった経験を持っていますが、「65歳未満でも仕事をしていない(かつ探していない)」人では7.5%に、「65歳以上でも仕事をしている」人では4.9%に、「65歳以上で仕事をしていない」人では2.0%にとどまりました。また、65歳未満で、仕事をしていないが、仕事を探している人では11.3%と最も高くなっています。

65歳未満で、仕事をしている、あるいは求職中の人の1割強は、必要があっても医療機関を受診できなかった経験を持っている

65歳未満で、仕事をしている、あるいは求職中の人の1割強は、必要があっても医療機関を受診できなかった経験を持っている

 さらに「必要であるのに医療機関を受診しなかった」理由については、「仕事などが多忙で時間がなかった」が最も多く64.8%、次いで「お金が払えなかった」19.9%、「近くに医療機関がなかった」9.2%となっています。
 「多忙さ」ゆえに、現役世代の一定割合が医療機関を受診できていない状況が伺えます。高血圧症や糖尿病などの罹患者であれば、適切な受診機会の喪失は重症化につながることを意味します。この点、2018年度の診療報酬改定では【オンライン診療料】などが創設され、「多忙さゆえの未受診」の回避に一役買うことが期待されています。

就業者では健診受診率が高いが、高齢者や非就業者では低い

 一方、過去1年間に健康診断を受診しなかった人は、全体では29.7%となっています。年齢階級別に見ると、40-64歳では比較的未受診者が少なく、30代以下および65歳以上の高齢者で未受診者が多くなっています。とくに、85歳以上の高齢者では49.2%が過去1年間に健康診断を受診していません。

 また▼就業の状況▼年齢―で区分してみると、「65歳未満で仕事をしていない、かつ仕事を探している」人で未受診率が最も高く58.1%、次いで、「65歳以上で仕事をしていない人」37.9%となっています。

65歳未満で求職中の人の6割近くが、過去1年間に健診を受けていない

65歳未満で求職中の人の6割近くが、過去1年間に健診を受けていない

 会社勤めなどをしている場合、健診受診の機会が多くなっており(受動的に受診)、これが疾病の早期発見に大きく貢献していると考えられます。逆に仕事をしていない場合などには、能動的に受診しなければなりません。もっとも、高齢者においては「医療機関を定期的に受診しており、それがために健診を受けない」という人もいるかもしれません。健診の精度等確保という問題も含めて、総合的に考える必要があるでしょう。

20歳代では、生活困難に「自助努力」で対応せよと考える人がやや多い

 次に、社会保険制度・社会保障制度の基礎となる「支え合い」に関する意識を見てみましょう。社人研では、さまざまな角度から調査を行っています(例えば、日ごとの会話や手助けを求められる人の有無など)が、メディ・ウォッチでは「生活上の困難の解決方法」に焦点を合わせてみます。

「生活上の困難の解決方法」については、男女で若干の違いがありますが、6割強の人が「地域の人々が互いに協力する」ことと「自助努力」の双方が必要と考えていますが、2割強の人は「自助努力」をより重視していることが分かりました。

 年齢階級別に見ると、20歳代で「自助努力」を重視する人が3割近くなっています。時間とともに意識が変化していくのか(若いうちは自助努力を重視するが、高齢になると互助・共助を重視するようになるのか)、意識の変化はないのか、今後も経年的に調査していく必要がありそうです。

20歳代では、他の世代に比べて「自助努力」を重視する人の割合が若干多い

20歳代では、他の世代に比べて「自助努力」を重視する人の割合が若干多い

 なお、社会保障制度の利用について、年齢が高くなるほど「所得や保険料負担に関わらず、誰もが必要に応じて利用できるべき」と考える人の割合が増加してくることも分かりました。医療保険や介護保険では、所得などの負担能力に応じた負担(応能負担)と、受益に応じ者負担(応益負担、一部負担など)を組み合わせていますが、こうした意識の変化によって組み合わせの手法を変えていくことも必要になってくる可能性があります(例えば、応益負担をより高めるべきと考える人が多くなれば、患者一部負担などを引き上げる方向での検討が必要なと)。

高齢者ほど、「所得などに関わらず、必要に応じて、誰でもが社会保障サービスを受けられるようにすべき」と考える人が多くなる

高齢者ほど、「所得などに関わらず、必要に応じて、誰でもが社会保障サービスを受けられるようにすべき」と考える人が多くなる

介護経験者では、「長生きは必ずしも良いことではない」と考える人が多くなる

 最後に「長生きの評価」について見てみましょう。

 男女ともに、「長生きは良いことだ」と考える人が7割近くを占めていますが、「あまりそうは思わない」人も3割近く、「まったくそうは思わない」人も4%程度います。

 年齢階級別に見ると、「長生きが良いことだとは思わない」人の割合が多くなる傾向にあります。

高齢になると、「長生きを良しとしない」人の割合が多くなる

高齢になると、「長生きを良しとしない」人の割合が多くなる

 また健康状態と、「長生きの評価」との関係を見ると、健康上の問題が大きくなるほど、「長生きを必ずしも良しとしない」人の割合が多くなります。

健康上の問題が大きな人では、そうでない人に比べて「長生きを良しとしない」人の割合が多くなる

健康上の問題が大きな人では、そうでない人に比べて「長生きを良しとしない」人の割合が多くなる

 さらに介護をしている人では、「長生きを必ずしも良しとしない」人の割合が多くなります。過去に介護経験を持つ人でも同様です。

介護をしている人では、そうでない人に比べて「長生きを良しとしない」人の割合が多くなる

介護をしている人では、そうでない人に比べて「長生きを良しとしない」人の割合が多くなる

過去に介護経験を持つ人でも、そうでない人に比べて「長生きを良しとしない」人の割合が多くなる

過去に介護経験を持つ人でも、そうでない人に比べて「長生きを良しとしない」人の割合が多くなる

 個人の価値観も大きく反映されるテーマですが、例えば「介護」などは制度の整備によって一定程度、意識変革を促すことが可能でしょう。「長生きを良しとしない」人が増えれば、例えば高齢者への医療・介護給付に厳しい状況が生まれかねません。この点、「健康寿命の延伸」「介護サービスの拡充」によって意識の変革を促すことで、「長生きは良いことだ」と考える人がより多くなれば、社会連帯の意識が強化され、社会保険・社会保障制度の基礎も強くなっていくことでしょう。

提供:メディ・ウォッチ

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