優秀な外国人材が指摘する“開国”日本の見過ごせない課題とは (2018/8/23 瓦版)
【集中連載】歪な外国人労働者受け入れが招く、日本の末路Vol.2
日本の外国人労働者受け入れ政策の問題点
「日本はもともと食糧自給率が非常に低い。加えて“労働自給率”も低い国でいいのかと心配する。このままだと外国人が減っていく国だと思う」。こう話すのは、日本での就職を目指す東大大学院在籍のベトナム人男性だ。
彼が危惧するのは、政府が打ち出した方針が単純労働の外国人受け入れに偏っている点だ。人手不足が深刻な職種は単純労働が中心だが、この流れでは外国人を戦力というよりも単なる「労力」としてしかみない傾向が強まる。それよりもより優秀人材を受け入れ、日本の国力アップに貢献してもらうことが重要というのが、その趣旨だ。
続けて言う。「単純労働だけで外国人の就労を拡げるのではなく、優秀な人材をもっと日本に招くために高レベル人材就労ビザ拡大などが必要だと思う。そして日本語は外国人にとってかなり高い壁なので、英語での就職活動の支援にも力を入れるべき」。就労の仕組みと教育。この2つを整備しなければ、日本の“開国”に未来はない、ということだろう。
日本に魅力を感じているからこその提言
桐蔭横浜大学を卒業し、日本での就職を目指すタイ人男性は、より具体的に日本に提言する。「新しいビザの設定より、日本人と外国人の働きやすい環境を作ることや外国人労働者に対する信頼性を高めることなどで革新を起こせば、経済や競争力をさらに発展することができると思います」。日本での就職を目指し、ビザの関係で帰国を余儀なくされている彼の提言は、決して無視すべきではないだろう。
ASEAN出身人材とその採用を検討する企業をつなぐ求人メディアを運営するNODE株式会社代表の渡邊健太氏が補足する。
「私どもでは、『相互理解』の追求を目指し、しっかりとした受け入れビジョンを持った企業とおつなぎすることを重視しています。そのために外国人材側、受け入れ企業側双方の声をしっかりとヒアリングしてマッチングします。国の方針で今後、受け入れ数は拡大するかもしれませんが、私どもとしては単に人手不足を外国人材で補うという視点ではいずれ外国人材にそっぽを向かれても仕方がないと懸念します。企業への受け入れへ向けた様々なサポートも提供しながら、ASEAN人材にとって魅力ある国として認知されるよう多角的なバックアップも考えています」。
単に人手の不足を補いたいのか、戦力が欲しいのか。企業がどういった狙いで人材を獲得するかにもはや国境は関係ない。どんなスキルが必要で、会社としてどういった方向を目指すのか。外国人の雇用を単なる人手不足対策としてしか見ることができない企業にもはや未来はない。求められているのは、企業に変化や革新をもたらす人財だ。(続く)
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