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有人宇宙飛行を実現するのに足りないものとは (2018/8/2 瓦版

ザ・ダイバーシティで宇宙に挑む壮大プロジェクト

日本初の有人飛行実現へ向け、大きなプロジェクトが動き始めた。Xデーは2027年。壮大なロマンを追い求めるメンバーは、年代や職業を超えたまさに多様な面々。これまで何度も頓挫してきた挑戦だけに、かつてないチーム編成が生み出す予測を超える化学反応に大きな期待がかかる――。

宇宙

いまや宇宙も随分と身近な存在となっている。「宇宙事業求人」で検索すれば、関連の仕事を正社員からアルバイトまで大量に見つけることができる。それだけ、宇宙へ向けたビジネスが水面下でうごめいているということだ。

海外ではすでに宇宙旅行の募集が行われ、数年内には初の宇宙ツアーが実現する。こうした分かりやすいものだけでなく、宇宙関連ビジネスはさまざまな種類のものがあり、多くの人が関わっている。そうした中、日本の宇宙産業でも、ロマンあふれる会社が立ち上がった。「株式会社SPACE WALKER」。目指すのは、有翼のスペースプレーンによる日本初の有人宇宙飛行だ。

同社代表取締役CEOの大山よしたか氏は「難しいことですが僕らは本気です」と力強く意気込みを語った。視線の先には、スペースプレーンに乗り込んだ8人の乗員乗客が地球を眺めるイメージが鮮明に浮かんでいる。とはいえ、大山氏、本職はアートディレクター。雑誌カメラマンなどを経て、雑誌のデザインなどを手掛けてきた。日本初の有人宇宙飛行を目指す企業のトップに立つ人間としては、どうにも不釣り合いにもみえる…。

もっとも心配は無用。むしろ、こうした人材だからこそ、可能性があるともいえるかもしれない。実は、この有人宇宙飛行を目指すプロジェクトチーム、まさに日本ロケット技術の粋を集めたような“強力チーム”なのだ。

左から浅井氏、保田氏、留目氏、大山氏、米本氏、眞鍋氏、浅田氏、辻氏

左から浅井氏、保田氏、留目氏、大山氏、米本氏、眞鍋氏、浅田氏、辻氏

ファウンダーは、九州工業大学教授の米本浩一氏。航空宇宙工学が専門で、30年以上も有翼ロケットの開発に携わってきた第一人者。2つの小さな接点が、線になり面となり、日本宇宙業界の重鎮、そしてファンドマネージャーや弁護士など多様な人材を引き寄せ、この混成チームは出来上がった。

メンバーの一人で元JAMSS社長の同社取締役会長・留目一英氏は「新しい化学反応に期待したい」とバラエティに富むメンバーを横目にプロジェクトの成功に大きな期待を寄せた。言葉通り、チームメンバーは30代後半の大山氏の他、ベンチャー出身の“若手”が事業の推進を担い、米本氏を筆頭にしたシニア勢が有人宇宙飛行機の技術面を担う。歯車がかみ合えば、大きなものが動く予感がプンプン漂う。

シニアの技術と若手の推進力で目指す宇宙

「今回のプロジェクトはゼロベースではなく、実用化がみえている米本氏のノウハウをベースにしたもの。我々の役割は、そうした段階にある宇宙関連技術をインテグレーターとして取りまとめ、民間として有人宇宙飛行を実現すること」と同社COOの眞鍋顕一氏は力強く語る。

宇宙事業の多くは、技術面以上に資金面で行きづまる。ベンチャーでもまれてきたとはいえ、1000億以上は下らないといわれるコストの調達は、ロマン実現には高すぎるハードルだ。だからこそ、行動力やバイタリティにあふれる若手が事業推進を担い、実用化への道がみえているシニアが技術面を担うこの世代や業種を超えたチーム編成には、予想を超える化学反応に期待せずにはいられない。

試験飛行に使われた機体。今後さらに3段階を経て実用化へつなげる予定だ

試験飛行に使われた機体。今後さらに3段階を経て実用化へつなげる予定だ

「誰かが有人宇宙飛行をやらないといけない」と大山氏は、日本の宇宙産業の停滞に危機感を募らせながらその覚悟を明かした。目の前には資金調達の他、法整備、機体の安全性の確立など、とてつもなく大きな難題が立ちふさがる。それでも、強力なプロジェクトチームに加え、IHIや川崎重工業などとの支援やJAXAと連携が決まるなど、日本のロケット産業をけん引する企業からのバックアップも取りつけている。

Xデーを2027年に設定する同社。もう10年を切っている。だが、土台は整っている。あとは、シニア勢が蓄積してきたノウハウを最大限に生かし、その“財産”を若手メンバーが形にするだけだ。レベルは違えど、これからの日本の職場の縮図ともいえそうな環境でどんな化学反応が起こるのか…。次世代の職場の在り方、働き方のシミュレーションとしてもその成り行きは大いに注目される。

提供:瓦版

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