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ワンセグ受信料訴訟、NHKが逆転勝訴。携帯電話は受信機の「設置」に該当 放送法の改正を求めたい (2018/4/8 JIJICO

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ワンセグ機能付き携帯電話を持っているとNHKとの受信契約義務があると判断

ワンセグ機能付き携帯電話を持っている場合にNHKと受信契約を締結する義務があるか否かが争われた裁判で、東京高裁が、平成30年3月22日、これを肯定する2件の判決を言い渡すとともに、同月26日にもこれを肯定する判決を言い渡しました。

いずれも裁判体は異なっているのですが、前2者が義務を肯定した一審判決を維持したものであるのに対し、後者は義務を否定した一審判決を取り消したもので、最高裁の判断はまだ出ていないものの、司法の判断としては一気に肯定する方向に傾いたと思われます。

モバイル

まず、テレビを持たずにインターネットだけで番組を視聴する世帯からも受信料を徴収することについては、テレビで視聴する世帯とインターネットで視聴する世帯との受信料負担の公平性を保つという観点から合理性があることは否定できません。

特に、デスクトップ型のパソコンを所有してインターネットによる視聴をする場合は、屋内に機器を設置して視聴するという意味では、テレビで視聴する場合とほとんど同じですので、テレビによる視聴だけ受信料を徴収するというのはアンバランスに感じます。

モバイル端末の「所有」も受信機の「設置」に該当すると解釈された

しかしながら、モバイルパソコンや携帯電話、スマホの場合は、別の問題が生じます。

現在の放送法64条1項は、「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備…のみを設置した者については、この限りでない。」と定めているため、モバイルパソコンや携帯電話、スマホを所有するだけでは、受信設備の「設置」には該当せず、NHKと受信契約を締結する義務はないと解釈する余地があります。

義務を肯定した前記東京高裁の各判決は、「設置」とは物理的に置くことに限らずNHK放送を聴取可能な状態におくことも含まれるとか、携帯型受信機を携行する場合も含まれるなどと解釈して、受信契約締結義務を肯定しました。

今後、NHKはワンセグ所有者に受信料支払いを求めていく可能性がある

平成29年12月6日に言い渡された最高裁判所大法廷判決によれば、「放送法64条1項は、受信設備設置者に対し受信契約の締結を強制する旨を定めた規定であり、NHKからの受信契約の申込みに対して受信設備設置者が承諾をしない場合には、その者に対し承諾の意思表示を命ずる判決の確定によって受信契約が成立する。」、「受信契約の申込みに対する承諾の意思表示を命ずる判決の確定により受信契約が成立した場合、同契約に基づき、受信設備の設置の月以降の分の受信料債権が発生する。」とされています。

そうすると、今後、最高裁が上記の各東京高裁の判決を維持する判断をした場合、ワンセグ機能付き携帯電話を所持した月分以降の受信料支払義務が生じることとなり、NHKとしては、受信料の支払いに応じてくれない所持者に対し、判決を得て強制執行するということも十分あり得る話です。受信料の支払いをひたすら拒否してしまうと、いざ回収を受けるときには多額になっている可能性があり、注意を要します。

文言の曖昧さが混乱を招くので義務を課す以上は放送法の見直しを求めたい

法律の趣旨に則り、その文言解釈によって結論を導くこと自体は、おかしなことではないのですが、国民に義務を課すものである以上、法律で明確に定めておかないと、国民が予期せぬ不利益を被ることとなりますので、放送法を早期に見直し、国民の予測可能性を確保してもらいたいところです。

提供:JIJICO

著者プロフィール
田沢剛

田沢 剛/弁護士
裁判官として数々の紛争処理を経験してきたこと
裁判官時代に民事、刑事を含めて様々な事件を担当しました。紛争処理にあたり、裁判所がどのような点を問題にしているのか、どの部分の証拠が足りないのかなど、事件の見通しを踏まえたアドバイスを心掛けています。

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