働き方改革を推進するマネジメント改革を実現する4つのポイント (2018/2/6 瓦版)
働き方改革を停滞させる旧型の組織構造
働き方改革を推進する企業が増えている。一方で、現場からは苦悶の声が漏れてくる。耳を澄ませば、その発信源がマネージャークラスの場合も珍しくない。実は昨今、働き方改革のしわ寄せが、マネジメント周辺に集中にしていることが浮き彫りになりつつある。
「業務が多過ぎて、マネジメントどころじゃない」。あるマネージャークラスがため息交じりに吐き出した。単なる一マネージャーのぼやきといいたいが、決してこのマネージャーの個人的ボヤキとは捉えられない。実際、産能大が行った上場企業課長に関する調査(2016)によると、課長の業務量は3年前との比較で半数以上(56.4%)が増加したと回答している。
なぜいまマネージャー受難の時代なのか…
その理由は、多くの企業が取り組む働き方改革と密接な関係がある。長時間労働の削減、多様化など、従来の働き方をガラリと変える“改革”。そのしわ寄せが、現場を仕切るマネージャー陣に押し寄せているからだ。
例えば長時間労働の是正では、立場上、部下に早めの帰宅を指示する。とはいえ、業務量が減っているケースは少なく、そのフォローをマネージャーがすることになる。職場の多様化は、画一的マネジメントの無用化を誘発し、部下個々の評価の必要性をもたらした。改革による変化の推進役と歪みの吸収役をマネージャーが一手に引き受ける形となり、本来の役割まで手が回りづらい状況となっているのだ。
「働き方改革においては、多様な人材を活用し、その個性を発揮させ、無理・無駄をなくすなどが相乗的に絡み合うことで、質と量の両面での労働生産性向上へとつながっていく。その肝となるのがマネジメント陣の改革ですが、いまはそこがボトルネックとなっている」。こう解説するのは、リクルートワークス研究所所長の大久保幸夫氏だ。
売り上げを上げろ、スキルをアップしろ。全員を集めて大声で叫ぶだけでもよかった“マネジメント”が、一転して、個性重視に変わり、それぞれの特性を活かすように変わったのだから、マネージャーが戸惑うのも無理はない。加えて、部下が業務を抱えていても、安易に残業させるわけにもいかず、マネージャーが困惑するのも無理はない…。
一体、この苦境をどうクリアすればいいのか。大久保氏が提言する。「これまでのマネージャーはリーダーシップが求められてきました。一方で、マネジメントはそれほど求められていなかった。戸惑うのは当然です。加えてマネージャークラスの業務負荷がかつてより増大している。だからといって急に個人が変わるのは簡単ではありませんから、ひとりでなく、組織で解決する。それが突破口となるでしょう」。
組織として困難を乗り越える。具体的には専門的なサポート部門を設置するのもひとつの手だ。産業医・保健師との連携を密にする必要も出てくるだろう。外部人材の活用も有効になるハズだ。これまではなかったような部門を設置し、ルール自体もつくり変える。マネージャー個人に留まらない枠組みとしての組織つくり変えを実行することで、負荷を分散・最適化し、多様性を受け入れる土壌を整える。働き方改革に取り組む企業が増える一方で、表面的な対応では限界があることも露呈しており、もはやそのフェーズは第二段階へと進んでいる。
北風と太陽式に注力ポイントを見直す
実際、働き方改革をうまく消化している企業の多くは、試行錯誤しながらも組織変革にまで着手し、大きな成果を上げている。そうした企業に共通するのは、働き方改革を生き残りのための取り組みとして、全社的に強い危機感を持っていることだ。尻を叩いても売り上げは上がらないが、社員がイキイキとしている職場の業績は軒並みアップする。
魅力的な制度の導入も有効だが、マネージャー周辺が変革できれば、その影響は現場にも波及しやすい。号令をかけているが、どうにも働き方改革が進まない…。上滑り感を実感し、行き詰っているなら、まずはマネジメント改革の優先順位を上げ、取り組んでみる。そうすることでモヤモヤが晴れ、一気に壁を突き破れるかもしれない。
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